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緑陽社さん見学会

ご縁ありまして、先日緑陽社さんの工場見学会に行ってきました。
我々には同人誌印刷でおなじみの印刷所さんなんですが、一般の商業印刷も取り扱ってます。

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社長さんが晴海時代からイベントにサークル参加(企業のとこじゃなくって個人で)しているそうで、同人者の気持ちをよくわかってくれる印刷所です。

子供の頃に行った社会科見学みたいなのを予想していたら、印刷好きを相手にしたガチの勉強会でした。
印刷の基礎から説明してくださるんですが、少しでもかじってないと何いってるのかわかんないと思う…

しかし凹版以外はぜんぶ手を出してるなわたし。

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これは版の現物。金属(たぶんアルミ)でできていて、もし1文字でもミスがでてやりなおしにでもなれば、これ1枚(他の版に関係してたらそっちも)廃棄になります(昔はフィルムを削るとかそういう手があったけど)。現物を見ると、版の出し直しだけはできるだけ避けよう…という気持ちになります。お金とかよりも資源がもったいない、という感覚。

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オフセット印刷機に版がセットしてあるところです。自分もしくは知り合いの原稿がささっている機材は撮ってもいいルールです。ふつう、機密保持のため工場や機材は撮影不可なはずなので、貴重な機会でした(他の工場では当たり前だけどNGでした)。見学会では、事前に入稿すれば「お試し本」というのを10部つくっていただけるんですが、そうすることで撮影可能にできる、という側面もあると思います。よく考えられてるなあと。あと、おそらく工程途中のお客さんの印刷物とおぼしきものは、見えないようにカバーしてありました。「ここに頼むと、見学者に自分の原稿見られるのでは」という心配は無用です。

10部なので、てっきりオンデマンドでやるのかなあと思ってたんですが、がっつりオフセット機を動かしてくださいました。「ほーらこんなにスピード出るんですよー」という説明の間に実質100部くらいは刷れてる。

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検品台?の上にある、色が正確に見れる蛍光灯が欲しい、ということで我々の意見が一致した。

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このノドにある黒い棒みたいなのは、「背標」っていって、これの位置をレーザーで読んで、乱丁や落丁が発生していないかどうかみるための印です。あと、紙の束をがしっとつかんで厚みがおかしなことになってないか(おかしなことになっていたら、何らかの問題が発生している)というチェックシステムもあります。たぶんやってるだろうなーとは思ってたんですが、実際にあるのがわかると安心感あります(いまだに乱丁落丁を恐れているので…)。

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折り機(自動でどんどん四つ折りにされていく…他の方の原稿がささっていたので撮影はしてないですが、見てると楽しいです。たぶんどこかに動画上がってると思うので探してみてください)で折った紙を板で挟んでバンドで締めて空気を抜いているところです。折ることで紙の間に空気が入るので、こうやって平坦にしないと、あとの工程がうまくいかないそうです。ここ手作業です。ずっとやってると虚無になりそう。

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これが見学会でつくっていただいたお試し本です。オフセット機動かしているので、クオリティはふつうに高い。紙は、これまで自分の本で紙目の関係で使えなかった、念願のコミックルンバです。
表紙の黒は[C:20%/M:20%/Y:20%/K:100%]のリッチブラックで、思いがけず、これが版ずれやスポットごみを判別するのにとてもわかりやすい(そういうのが目立つ)サンプルになりました。

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表紙はフルカラーPP。PPかける機械は工場の隣のちいさな建物にあり(同行者のあいだではPP小屋と勝手に呼んでた)、埃が入らないように他とは分けて置いてあるのだそうです。上の、スーパーにあるビニール袋巻きみたいなのがPPのフィルムで、下の方で熱で表紙に圧着させます。このフィルムを変えるとマットPPになったり、ホロ入りになったりするそう。

(ここに動画があったんですけどわたしがYouTubeのアカウントをいっぺん削除してしまった関係でなくなりました。ツイートのほう貼っときます、というかこれでいいのか。)


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モスクヴィナコーチの本も以前緑陽社さんに印刷していただいた本なのですが、カバーが蛍光ピンク使ってないのに使ったくらいに明るいな、と不思議に思っていたら、見学会で謎が解けました。緑陽社さんのマゼンタとイエロー自体が、少し明るめに発色するインキらしいです。1%のシアンくらいは跳ね返しそうなので、肌がくすむ心配とかはあんまりしなくてよさそうな気もしました。逆に「思ってたより明るすぎる」という苦情があるそうで、廃墟に佇む顔色の悪い堕天使、みたいなイラストのときは、要望添えておいたほうがいいかもしれないです。

わかんないまま無理して補正するより「使ってたカラープロファイルを教えてください。それさえわかればなんとか(たぶん)できます!」というのを強く訴えたいようで、あとの懇親会でも何回もその話がでてきました。ただまあ、「カラープロファイル」っていうなにやら難しそうな字面だけで拒絶反応でちゃうんだろうな…と思います。

チノ語録

『チノ語録』も緑陽社さんにお願いした本です。なにせ機材が商業誌と同じなので、あとはデザインを商業誌っぽくすれば、見分けつかなくなります(アリスブックスさんとメロンブックスさんで取り扱い中)。

『チノ語録』で、モアレ出したくないなら絶対やらないでください、というモアレ三重苦(網点にアンチエイリアスがある、網点自体がグレー、トーンにグレーを重ねる)のほぼすべてを網羅しているのがこのページなんですが、FMスクリーン進行によってきれいに出ています。

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AMスクリーンというのは網点が均等に並んでいる従来型の製版方式、FMスクリーンというのは網点がランダムな方式です。印刷した「点」というのは中央が盛り上がっているので、真ん中あたりの色が若干暗くなるという性質があって、そういう問題を解消するためにドーナツ型の網点(廣済堂さんの得意なやつ)なども開発されているんですが、FMスクリーンの網点も(点が細かいせいか)おそらくそれに近い効果があって、同じ色を印刷しても、AMより明るく出るというメリットがあるそうです。ただし、網点がランダムなので、フラットな感じはAMより弱い、っていうデメリットもあるそうですが、

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正直、気のせいレベルかも(どっちもきれい)…

と今、いただいた印刷見本を見返しても思う。
カラープロファイルさえ正確なものを埋め込めれば(あるいは伝えれば)、あとは現場のかたにまかせたほうがいいんではと(わたしはいつもおまかせしてます)。

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お試し本で試してみたのは
・表紙の入稿データをInDesign&トンボつきPDF書き出しでつくってみる
・見開き画像のノドに重なりをつくってみる
・配置Illustratorファイルのアピアランスを拡張しないチャレンジ
・配置Illustratorファイルのテキストをアウトライン化しないチャレンジ
・0.25ptの線が(コミックルンバで)出るかなチャレンジ

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これがInDesignのデータ。表1、背、表4を別ページでつくって、スプレッドにしてくっつけるつくりかたです。これだと、背幅が変わっても背のページ幅を変えるだけで対応できます。いままで表紙とかカバー作業は、どのみちIllustratorで図とかイラストをやってしまうので(あとInDesignのバグがあったような…)、なし崩し的にIllustratorデータで入稿していたんですが、配置したIllustratorファイルとの位置合わせがめんどうでなければ、InDesignのほうが楽だと思います。

これをトンボつきでPDFに書き出すとこうなります。Acrobatで開いた状態。

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背の折トンボも入ってます。

見開き画像のノドは3mmずつずらして重ねてみました。ノドを挟んで合計幅6mmが消えてもいい領域です。

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実際に製本されたものを軽く開いてみるとこんな感じ。梅のつながりが割と自然です。手間がちょっとかかるんですが(ゆうても、配置画像なら2枚にわけてずらすだけだしな…)、やっとくとそれなりに報われると思います。ただし、さじ加減が難しい。そもそもノドに大事なところを持ってこない、というのが一番なんですが、花のどアップ写真とか避けられないものもあると思うので(顔はぜったいやめたほうがいいです)。

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こちらはさほど影響ないだろうとふんで、重なりなしで原稿つくっています。

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チャレンジはぜんぶ問題なかったです。PDFは配置画像のめんどうまでみてくれるんですね。ただし、そもそもアピアランス自体がおかしいもの(拡大してよーくみると角が歪んでいるとか)は、PDFに変換するときの自動拡張で予想外の形状になるので、PDFはよくチェックする必要があります。

緑陽社さんは一般的なカラー印刷の線数(175線)より高い線数で印刷しているそうです。緑陽社さんに限らず、最近そこを売りにしている印刷所が増えてきているんですが、ずっと疑問に思っていたのが「解像度は350ppi据え置きでいいの?」ということ。ウチは線数高いです!って言ってる印刷所のマニュアルが「カラーは350ppiで作ってください」ってなっていることが多いので。最後に懇親会(という名の学級会w)があって、なんでも聞いていいですよ、ってことだったので、聞いてみました。

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一般的には350ppiあれば十分だけど、極細の線とかはやはり解像度が上がるとそれなりに変わる、ということでした。もちろんファイル作成時からその解像度もしくはそれ以上でつくらないと意味ないですが、Illustratorでつくったものを最終的に画像化して入稿する場合は、いちおう考えておくといいかもしれない。あとは制作環境との関係もあって、線数に合わせて解像度も上げると(たとえば240線だから480ppiとか)、カラーものはマシンが悲鳴を上げるので実際のところ無理、という結果に落ち着くのかもしれないです。

緑陽社さんはたまーに見学会を開催されているようなので、興味のあるかたは応募してみるといいと思います。こちらのページで詳細わかります。

あと、質疑応答で出た質問とその答えはほぼ『入稿データのつくりかた』で網羅していたので、予習と復習に最適です(気になるところはまあだいたい同じなんですよね)。RGB入稿とカラープロファイルの重要性や、解像度縮小のやりかたなどは、緑陽社さんに取材して書いているので、まんまです。「進研ゼミで見たやつだ」状態になります。

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『入稿データのつくりかた CMYK4色印刷・特色2色印刷・名刺・ハガキ・同人誌・グッズ類』 井上 のきあ

https://www.amazon.co.jp/dp/4844367803/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_Bt-qEbGPVGBEP







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