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セックスレスだけど離婚したくない!そう決めた瞬間

セックスレスで離婚は異常じゃない


「セックスレスで離婚?ありえない」
というひとがいたら、考えてみてほしい。

傷口にデスソースを塗りたくられて、さらにその上からサロンパスを貼られるような心の痛みがあったらどうする?

しかも毎晩。

セックスレスは、白鳳が氷川きよしを土俵際に追いこむぐらい簡単に、に人のメンタルを壊してしまうのだ。

セックスレスが原因で離婚している夫婦は、かなり多いのでは、と推測している。

ことがことだけに、公言するひとが少ないので実数は不明だけど。

セックスレスで離婚することは、恥ずかしいことでも突飛なことでもない。

そもそもセックスは食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求に数えられるぐらい大きなものだ。

しかしこの中で性欲は、ないがしろにされやすい。

セックスはだれかにとってはアイデンティティといえるぐらい重要で、他のだれかにとっては路上に落ちている軍手のようにどうでもいいものとなる。

だからセックスレスで離婚なんて軽率だという意見がでてしまう。

このセックスに対する重要度のズレは夫婦間でもあり、それがレスられているほうの苦しみの原因となることがある。

たとえばある夫婦がいて、妻は食べるのが大好きでいろいろな食材にも興味があるのに、夫は食に無関心。

そして夫の提案によって、食事は一日一回カロリーメイトフルーツ味のみになったら、妻の激しい苦しみはかんたんに想像できるだろう。

セックスレス離婚ときくと、「夫婦にはセックス以外に大事なことがある」というひとがいる。

でも、それはなに?って返すと、“夫婦の絆”とかって答えてきたりする。

正直、セックス我慢して耐え抜いた見返りが、“絆”とか抽象的なものじゃあんまりだ。

それに夫婦のかたいっぽうが傷つきまくっていたら、絆もなにも生まれやしないだろう。

夫婦生活続けることが、たんなる呪縛でしかなくなる。

ではほかに形あるものだったら、セックス以上に大切なことになりうるというと、それも違う。

たとえば夫婦の共通の趣味をつくって、ふたりでセックス以外の楽しみを見つける、とか。

それをレス解消として活用するのならいいけど、趣味自体をセックスの代替にして良好な夫婦生活を!というのは無理がありすぎる。

セックスがないことに悩んでいるのに、セックス以外で解決しようとするのは、「性欲はスポーツで発散しろ!」という昔の学校教師にも似たズレ方をしている。


みんな幸せになるために結婚したはずだ。

だから、“セックスのない生活=不幸”という考えのひとが離婚を考えたり、じっさい離婚に至るのは無理もないことだ。

それに離婚を不幸なこと、と考えるのは決めつけだ。

結婚生活を続けるより、離婚することで自分が救われるのなら、それは人生の発展である。



離婚…それとも?


ボロボロの日々


ぼくも妻とセックスレスになってしまったとき、別れることがつねに頭にあった。


妻のことは愛していた。

飾り気のない性格も癒されるような笑顔も大好きだし、バカみたいな会話をかわしてるときが何よりも幸せなときだった。

セックスがないこと以外なんの不満もなかった。

ただレスになってしまったことで、ぼくの心は衰弱しきってしまった。


灼熱のアスファルトの上で腹を見せてクルクルのたうち回っているセミのように、ぼくの心は確実に死にかけていた。

自己肯定感は日ごとに安値更新し、鏡にうつる顔はもはや成仏できない生霊のようだった。


セックスさえあれば、すべてが嘘のように回復したと思うけど、レスになって数か月もすると、もはや誘う気力も勇気も失われていた。

もうセックスが期待できない。

自分を救う道は、もう離婚しかないのでは…と考えた。


離婚はやっぱりしたくない

心身共に疲れ切っていた12月のある日の夕方、幼いふたりのこどもを連れて近所の公園に来た。

すでに日の落ちかけていた公園はほかに誰もいなく、うちの子の楽しそうな声だけが冷たい風の中、響く。

はしゃぎながらいっぺんに話しかけてくるこどもたち。

ただ、気力が人生最高に落ちていたので、生返事することしかぼくにはできなかった。


「パパ、見てー!」

公園の落ち葉がひときわ溜まっている一角。

心ここにあらずの状態で、ぼーっとベンチで座っていたから目に入らなかったけど、ふたりはそこで落ち葉にすっかり埋まっていた。

そして薄茶色の葉っぱのプールで泳ぎはじめるこどもたち。

この光景を見た瞬間、ぼくの心はある言葉でいっぱいになった。


「この子たちとまだまだ一緒にいたい」


思わず泣き崩れそうになった。

人生ではじめて。


離婚することになったら、この子たちともお別れすることになるかもしれない。

そう考えたら、胸をえぐられるような悲しみが走った。


ぼくはこのとき二つのことを天秤にかけたと思う。

ひとつはセックスレスによる辛い気持ち。

もうひとつはこどもと一緒にいたい気持ち。


天秤が重く沈んだのはこどものほうだった。


自分の頭の中から、離婚が消えた。

やっぱりこどもたちと離れることなんて考えられない。

愛おしすぎる。


もしこどもたちと離れることになったら、レスによりもっと大きな悲しみを背負う生活になるだろう。


ただ、こどもたちが片親になったら可哀そうだから離婚はしたくない、という考えかたはなかった。


ぼくも自分の親がそうだったし、幼いこどものいるうちに離婚した親戚が多かったから分かったことがある。


こどもは大人以上に環境の変化に慣れていくものだ。

最初は辛い思いをするかもしれないけど、大人が驚くぐらいの回復力で心を平常運転にしていってしまう。


なのでドライだと感じられるかもしれないけど、そこは冷静であった。


ぼくは現状について、もう一度考えてみた。


レスだって毎日嘆いているけど、本当にやれることは全部やったのか。

まだ手立てはあるんじゃないか?

出せるパンチ全部出さないうちにダウンしちゃってないか?


セックスレスを解消するために、100個のことをやろうと思った。

客観的に自分たちを分析して、効果がありそうなことを発見し、とりあえず100個実践する。


それでもまだダメだったら、後のことはそのときまた考えればいい。


妻も好きだしこどもたちとの生活も続けたい。


けどそのためにセックスのない生活をガマンするという選択肢は自分の中になかった。


“セックスフルで家庭円満”

その目標に到達するために、がめつく粘りつよく何でもやってやろう。

薄紫になった昼と夜のはざまの空を見上げて、ぼくはそう決意した。

頭の中では、ロッキーのテーマ曲が流れていた。



今回の記事はここまで!読んでくれてありがとうございます。


ぼくが書いたセックスレス本第二弾

『セックスレスーバカで孤独な座談会』

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