苦しみも味わい尽くせば希望が見える。ジブラーンの詩「苦しみについて」を読んで。
少々遡りますが、年末年始は実家で過ごし、少し本を読む時間がありました。そこでジブラーンの「預言者」という詩集にある「子どもについて」という詩を読み返しておりました。そのついでにこれまで読んだことが無かった「苦しみについて」という詩を読んでみました。なかなか重たいタイトルですが(笑。
2018年夏の海外赴任からの帰国に始まり2021年1月現在まで、色々と変わりましたが、分かっていた変化、自ら変化させたもの、思わぬ変化など変化の形にも色々ありますが、一気に変化すると大変だな、と。
ですので、時々「きついぞ、こりゃ」と思うことがありました。そんな時に救われた言葉は、とある方に言われた「(困難を)味わい尽くしなさい。」でした。無理に前向きな言葉でもなく、妙な同情の言葉でもなく、立ち向かえとも又一味違う、味わい尽くせ、と。
さて、年末に読んだジブラーンの「苦しみについて」の一節に「あなたの苦しみの多くは自ら選んだもの。あなたの内なる医師が病める自己を癒そうとしてのませる苦い薬。だから医師を信頼して黙ってしずかに薬をのみなさい。医師の手がたとえ重く容赦なくともそれは目に見えぬもののやさしい手に導かれている。」とありました。
まさに「味わい尽くしなさい」と同じようだ、と思ったのでした。
新年から「苦しみについて」なんて詩はどうかと思いましたが、実に希望に満ちた詩と感じました。味わい尽くすと希望が見えてくるのです。以下に掲載します。
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「苦しみについて」ハリール・ジブラーン 訳:神谷美恵子
苦しみについてお話下さい、とある女が言った。
彼は答えた。
あなたの苦しみはあなたの心の中の
英知をとじこめている外皮(から)を破るもの。
果物の核(たね)が割れると中身が陽を浴びるように
あなたも苦しみを知らなくてはならない。
あなたの生命(いのち)に日々起る奇跡
その奇跡に驚きの心を抱きつづけられるならば
あなたの苦しみはよろこびと同じく
おどろくべきものに見えてくるだろう。
そしてあなたの心のいろいろな季節をそのまま
受け入れられるだろう。ちょうど野の上に
過ぎゆく各季節を受け入れてきたように。
あなたの悲しみの冬の日々をも
静かな心で眺められることだろう。
あなたの苦しみの多くは自ら選んだもの。
あなたの内なる医師が
病める自己を癒そうとしてのませる苦い薬。
だから医師を信頼して
黙ってしずかに薬をのみなさい。
医師の手がたとえ重く容赦なくとも
それは目に見えぬもののやさしい手に導かれている。
彼が与える杯がたとえあなたの唇を焼こうとも
それは大いなる焼物師が
自らの聖なる涙でしめらせた
その粘土でつくられたものなのだ。