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ノカテが「SUISEN Bouquet」を届ける理由

福井県嶺北地方西部の越前海岸を拠点に活動するノカテ

縁あって、2021年の冬から日本水仙のEC販売を始めました。
花と軸だけの水仙を「SUISEN Bouquet」として全国へ届けています。


越前海岸に咲く、日本水仙

「水仙」と聞くと、春先に庭先や土手に咲く西洋水仙の印象から「春の花」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、わたしたちが届けているのは、西洋水仙ではなく日本水仙

日本水仙は、11月下旬から2月下旬までの約3ヶ月にわたって花を咲かせる「冬の花」です。

越前海岸は、千葉の房総半島、兵庫の淡路島と並ぶ日本三大水仙群生地のひとつ。栽培面積は約70haと言われていて、なんと日本で一番だそう。

この産地から出荷される日本水仙は「越前水仙」というブランド花としても知られていて、華道や生け花の世界では高級品とされています。

厳格な規格に沿った選別をクリアしたものだけが「越前水仙」という名を冠することができ、その名で市場に出ること自体が選りすぐりのものであることの証。

選別後の水仙。「え」は8段階あるランクのひとつ。

自分で育てて収穫した水仙が「越前水仙」として世に出ていくことに農家さんも誇りを持っていらっしゃって、細かな選別作業にも手を抜きません。

水仙農家さんたちが地道に努力を続けてきてくれたからこそ、現在のような高い評価が得られています。

また、日本海からの冷たい海風に吹かれて育つ越前海岸の日本水仙は特にその香りの高さが素晴らしいとされていて、実際にSUISEN Bouquetを受け取ったお客様からも「箱を開ける前から水仙の香りがした!」と言っていただけるほど。

Photo by Yujiro Ichioka

花びらもその一枚一枚がぱりっとしていて、美しさの中に露地栽培ならではの力強さを感じられるのも大きな魅力のひとつです。

”文化的景観”としての水仙産地

そんな日本有数の産地である越前海岸の水仙畑は、2021年3月、福井県で初となる国の重要文化的景観にも選定されました。

文化的景観とは、文化庁によって定められた文化財のひとつで、以下のようなものと定義づけられています。

「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの」

(出典:文化庁

人々の生活や生業とその土地の風土がつくり上げてきた暮らしの景色。

実は水仙栽培に関わる人々の多くは、数々の生業を掛け合わせながら暮らしを立ててきたパラレルワーカーでした。

春のワカメ漁

大工や漁師、杜氏として出稼ぎへいく傍ら、春にはワカメや山菜、夏にはウニ、サザエ、アワビ、秋はギンナンやミツマタなど、豊かな土地の恵みを生業に変えてきました。そして、冬は水仙畑へ。

海と山の四季の恵みを享受してきた人々の生業のひとつとして水仙栽培があり、結果として、花咲き誇る水仙畑のある景観が現在まで残ってきました。

そんな背景をもつ越前海岸の水仙畑は、まさにこの土地の豊かさと、この土地に根付く人々の暮らし方の多様さを理解するためには欠かせない文化的景観であり、福井だけでなく日本という国にとって重要な景観として選定を受けたのです。

越前海岸の水仙産地
Photo by Kaname Takahashi

水仙栽培という生業のいま

この土地の景色が私たちにとって重要な価値を持つ文化的景観であるとされた一方で、水仙畑の広がる景観がこれから先の時代に続いていくためには、いくつかの課題もあります。

例えば、水仙農家さんの高齢化
急な斜面地に広がる水仙畑での仕事は、収穫はもちろん、草刈りや改植など管理のための作業も年齢を重ねるほど難しくなっていきます。

また、「越前水仙」というブランド花として市場に送り出すための厳格な規格は農家さんの誇りを支える一方で、その選別作業は決して小さくない負担として随伴していたりします。

実際の選別の様子

さらに、近年では鹿や猪による獣害も増加し、高齢化の進む産地の中でどうマンパワーを確保しながら対策に取り組んでいくかも課題です。

もうひとつ、水仙栽培という生業が次の世代へ受け継がれにくい理由だと考えられるのが、親世代から変化した子どもたち世代の働き方

いま、産地の中で現役として活躍している70代80代の農家さんは、いくつかの生業を掛け合わせて暮らしを立てる”百姓”的な生活が当たり前だった時代を生きてきた人たち。

一方、その子ども世代のみなさんが生きてきた時代の価値観の主流は、「いかにいい会社に入り、長く勤めるか」

安定を求める時代の流れの中で、複数の生業を掛け合わせるという働き方自体が自然となくなっていきました。

日本水仙に「新しい楽しみ方」を

そんな中、ぼくたちノカテはECを中心に、越前海岸の日本水仙を「SUISEN Bouquet」として販売し始めました。

日本水仙といえば、正月の床の間に飾られているような、「和」のイメージを持たれる方も多いかもしれません。

実際、日本水仙が一番売れるのは12月で、正月の飾り花としての需要が大部分を占めています。

一方、わたしたちが届ける「SUISEN Bouquet」は、花と軸だけの日本水仙をブーケにしたもの。

それは、あえて「規格にこだわらない」ことで実現する、日本水仙の新しい楽しみ方の提案です。

花器に合わせると、こんな楽しみ方ができます。

床の間の飾り花としての姿とは異なる、日本水仙の華やかでカジュアルな一面。

海外ではこのように自由で軽やかに楽しまれることも多いのですが、こんな形で水仙を楽しむ人は日本にはきっとまだまだ少ないはずです。

規格にこだわらずとも、越前海岸に咲く日本水仙の豊かな香りや凜とした美しい花姿は「越前水仙」として市場に出るものとなんら変わりありません。

花束としてどっさり届く日本水仙を、ぜひみなさんも思い思いに楽しんでみてください。

新しい生業、新しい関わり方をつくる

日本水仙の自由な楽しみ方として「SUISEN Bouquet」を多くの方にお届けできるようになること。

それは、水仙栽培が新しい形の生業として生まれ変わり、産地の景観がつながれていく可能性が広がっていくことでもあるはずです。

これまでのやり方にとらわれない届け方で、収穫や選別にかかる手間と労力を大幅に軽減することで、新しく水仙栽培に関わろうとしてくれる人たちのハードルを下げる。

「SUISEN Bouquet」を届ける過程に携わってくれた方々に還元できるように価格やオペレーションも検証し、この活動に継続的に関わってもらえるような仕組みをつくる。

Photo by Kaname Takahashi

暮らしを立てていくことに対する人々の価値観や実際の在り方は実に多様化し、時間や場所を選ばずに仕事ができるという人も多くなったと思います。

ノカテが目指すのは、そんな人たちが「SUISEN Bouquet」を自らの数ある生業のひとつとして選んでくれて、産地との関わりを継続させていく状況が幾重にも生まれていくことで、美しい水仙畑のある景観がつながれていく未来。

数々の生業と掛け合わせることが前提となって続いてきた水仙栽培という生業だからこそ、現代の人々の多様な生き方や価値観に目を向けることで新しい関わり方が生まれ、次の時代へとつないでいける可能性が見えてきます。

Photo by Kaname Takahashi

残したいものを残していけるように

国の重要文化的景観にも選定され、価値のあるものだと改めて認められた越前海岸の水仙畑。一方で、その景観を残していくためには数々の課題もありました。

越前海岸でわたしたちが直面した状況が日本の他の地域でも同様に起こりうる(起こっている)ということは、想像に難くありません。

その全てに向き合うことは無理だとしても、せめて自分たちが心動かされたものくらいは、それをつなぐために何ができるかを考えてみてもいいかもしれない。

わたしたちの場合にはその中心が「SUISEN Bouquet」であり、ノカテが越前海岸で行う他の取り組みも含めて、残したいものを残していくための試行錯誤。

そんなことを続けていった先に、同じような思いを共有できる誰かと出会えて、本当にこの産地の景色をつなぐことができたなら、それほど嬉しいことはありません。

まずは「SUISEN Bouquet」をより多くの人に届けるところから。
今年も水仙を通してたくさんの方々と出会えることを楽しみにしています。

(文章:ノカテ代表 髙橋要)

※個別にクレジットが入っている写真以外は全て Photo by Kyoko Kataoka

24−25シーズンの「SUISEN Bouquet」

ノカテの初物水仙(予約商品)

今シーズンから始める初物商品企画。
今年は暑い日が多く雨も少なかったため、遅めの開花(12月初旬ごろ)となりそうです。収穫が出来次第、順次発送を行なっていきます!

SUISEN Bouquet

ノカテの定番商品。初物水仙出荷後のお届けとなります。
通常は毎週金曜日に発送を行なっています。
水仙の開花目処がたち次第、順次在庫を追加していきます。

『ノカテ03』

ノカテがお世話になっている水仙農家さんの一年を、写真とイラストで伝えるオリジナルZINE。百姓としてたくましく暮らす農家さんの姿と、越前海岸の暮らしの豊かさを感じていただける一冊です。












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