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存在しない〜野地の旅4th〜

2024年3月15日、俺たちは伊豆沖合の島、大島にいた。3月に大島といえば椿の時期だが、果たして俺たちも椿を目指していた。だが、単に椿を見に行く話ではない。俺たちが目指していたのは、「野地の椿」だ。


タイトルコール

よく来たな、俺は野地海月だ。俺は野地にして、野地ハンターだ。今まで野地温泉、野地神社、野地城、野地街道を制覇してきた。俺がなぜそこまで野地であることにこだわるかは、過去のエピソードを読んでほしい。

今回狙う「野地の椿」に関しては、あまり情報は多くない。個人のブログを除くと、以下のサイト程度だろうか。

だが情報は僅かでもハンターは赴くものだし、旅に行く理由になるものだ。実際のところジェット船に乗ってみたかったのが目的地の決め手と言われて否定するのも難しい。

ターゲットに話を戻すと、野地の椿は上記サイトの通り空港西側に原木的に椿が生えているところにある。空港のそばと言うと聞こえがいいが、実際東側のバス通りではなく西側に行くと鬱蒼とした椿の茂みばかりとなる。大島の椿は火山灰が混じった土地に多い降水量という椿に適した(というよりほかの植物が育ちにくい)土地であったことに由来しており、要は公園として整備していない椿はほぼジャングルだと聞く。果たして野地の椿はどうなっているのか。ついに人工物から自然に対象が変わった野地の旅が始まる。

完全な失敗

結論から言うと、「野地の椿」という看板なりを写真に収めることは出来なかった。大島では地層大切断面を見るためにと自転車を借りていたので、自転車で空港の西へ向かう。海岸沿いは素晴らしいサイクリングロードだが、島の中に入っていくと一変して茂みとなり、原生椿は想像以上のジャングルであった。車道が整備されていると言ってこれだ。

写真写りがよく明るい方でこれ

この中にある神社なんて完全にファンタジーの世界である。

ダークソウルで見た

なお、「野地の椿」周辺は携帯の電波も入らない。つまり、現地で調べものをして軌道修正をすることは出来ないということだ。仕方がないのでこの一帯をすべて走破し、二周回ってみたが、「野地の椿」と書かれた看板を発見するには至らなかった。かつては看板があったかもしれないが、少なくとも今回はなかった。キョンが発生し、誘導柵が至る所にあったが、その影響かもしれない。

どうしようもないので、元町へ戻る。

元町に戻って分かったことは、あの辺りは表札もないが「字野地」であることであった。なるほど、野地は特徴ではなく(むしろ特徴がなく)単なる地名であったと。そうなっては観光のための看板もそうそう整備されていないだろう。今回撮ってきた道の写真が「野地の椿」の全てである。

野地の椿は、事実上存在しない。存在しない野地を追う旅となったわけだ。完全な失敗である。

収穫とライフワーク

もちろん、収穫もあった。

大島自体は良い街だった。久々にコンビニのない世界にいたが、それでも若い人がやる飲食店のレベルはどれも高かった(そういえば物流は良いのであった)。限界集落的な世界と、自然を観光とした街で生きていくと決めた若者が質の高い店を維持していることのギャップのある不思議な島で、結果的にゆったりした時間が流れていた。自転車に乗るか湯に浸かるしかない時間に救われた。電波が入らない事で仕事を強制的に忘れることも出来た。旅としては満足のいくものであった。

但し、野地としての収穫は無かったと言ってよい。そしてこれ以上野地に手を出すと、より無為な瞬間がやってくることは間違いないことも痛感した。全国に数本ある野地川はどれも二級河川より小さく、赴いたところで看板も無いだろう。大島は東京から日帰りで行ける距離であるが、今後出てくる野地はそうも行くまい。

ただ、この4回の旅は、いずれも素晴らしいものだったし、旅を通じてちゃんと俺は野地になったと思う。無理はしないレベルでの目的地としての野地探しは引き続き続けていき、ライフワークとしていきたい。

無理をしない以上、もうNoteでの更新は無いかもしれない。それでも俺は野地の旅を続けていくのだ。

ちなみに、大島の地層大切断面は本当になかなか良いものだった。自然のスケールの前に人間は小さいことを分からせてくれる。野地の旅もそういうことなのだと思うことにする。

↑クリエイターと言われるのこっぱずかしいですが、サポートを頂けるのは一つの夢でもあります。