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【ボードゲーム配布】好き好きセブン、それはこの世という地獄

閉鎖空間について。
好意について。
友達について。
同性と異性について。
浮気について。
裏切りについて。
傷つく事について。
振り出しに戻る事について。
限界が来てしまう事について。

それでも、あるいは、純愛について。

始めましょう、「好き好きセブン」を。

「好き好きセブン」はボードゲームです

「好き好きセブン ~閉鎖空間恋愛シミュレーション~」は14年前(2006年)に僕が作ったボードゲームです。

「なるたけシンプルなボードで、ルールは覚えやすく、それでいて駆け引きが楽しめるようにしたい」という発想のもと、大学生活の中で2年くらいボードゲーム(多分20作くらい)を作り続けていたのですが、その最終作であり、今でも遊べるゲームであると自負しております。

「3×3の9マスのボード」で、「コマは直進しかせず」、「止まったマスの効果で石をやり取りする」というシンプルなルールです。また、ゲームのゴール(勝利条件)も「プレイヤーは最大7個しか石を持てないなかで、持てる7個の石すべてを同じ色に揃える」というシンプルなつくりになっています。(トップ画像がゲームで必要なものの全てです)

「好き好きセブン」はシミュレーターです

シンプルなルールなのに駆け引きで熱くなるにはどうしたらいいか。色々方法はありますが、僕がこの時採用したのは「ルールの効果からプレイヤーが勝手にフレーバーテキストを想像してしまう」システムでした。

プレイヤーは全員男性になり、女性に恋愛的なアプローチをかけます。このゲームは女性の「気持ち」をゲットするゲームであり、同時に女性に「気持ち」を捧げるゲームですが、その行為が他人に見られるという状況を作り出しています。そうした状況下において、ゲームのプレイングに関する結果は揶揄されやすいものです。そこに「勝手にフレーバーテキストを想像してしまう」余地が生まれます。

世に言う通り「異性は星の数ほどいる」はずですが、シンプルにしたいという設計ではそうはいきません。しかも私は上記の通り「見られ、揶揄される」事をフレーバーとする事でゲームの(体験上の)奥深さを求めていました(「体験上の」というのは非常に大事で、後述しますがゲームバランスはまずは度外視しました。結果としてはバランスは回復されるのですが)。

「~閉鎖空間恋愛シミュレーション~」というサブタイトルは、この結果作られました。このゲームは、プレイヤーは同じ組織内の男性3人になり、同じ組織内の女性3人のうち誰かをゲットしようとするゲームです。有り体に言えば、狭い集団内(例えばサークルとか、同期とか、オフ会とか、あるいは同じお店のキャストとか)でくっつこうとする男女をシミュレートしています。恐らく読んだ時点でまだゲームをプレイしていないのに「フレーバー」が香ってきた読者の方もいらっしゃるかもしれません。

「狭く、行き場のない空間で」「動けば加点されるので何となく手を出してしまうが」「上手くいかない」…狭いボード上でコマが右往左往するのに良い環境になってきました。偉大なる宮本茂は対戦ゲームからデザインを始めてはいけないと言っていましたが、このゲームは一人遊びでシミュレートするだけでも十分な手応えがあります。言うならばアメリカの恋愛ドラマのような状況だけがボードのルール上作られていて、後はプレイヤーの手にゆだねられた箱庭です。その箱庭におけるシナリオ作成を「対戦」で出来るようにする…のは後にして、まずはバランスは度外視して「箱庭」(シミュレーター)としての完成度を高める事にしました。

・複数人の男性が一人の女性にアタックをかけると、(男性の魅力に差が無いのであれば)女性はどちらとも友達である事を選びどちらもうまくいかなくなる(よくある「男2女1」の状況になる)
・たまたま3人の男性がそれぞれ別の3人の女性にアタックをかけた場合、(ゲームとしては面白くないが)実に平和にそしてすぐに3組のカップルが成立する
・上手くいきそうな二人について、別の人が協力的になるとむしろ失敗する
・どうでもいいやつが人の恋路の邪魔をする
・男としてみっともないので他の男性を物理的に出し抜く(例えば「飲み会で狙っている女の子の隣の席を物理的に奪う」)ようなことは出来ない

という要素を狭いボードに入れていこう、という事でまず設計を詰めていきました。実はこの段階でほぼ「好き好きセブン」は完成しました。シミュレーターとして機能した時点で対戦の要素も十分だったのです。

「好き好きセブン」は地獄です

なぜこれで十分だったかと言えば、シミュレーターとして機能したうえで「対戦ゲームです」と言ってプレイヤーに渡せば、勝手に「自滅し合う男性同士シミュレーター」として機能したからです。事実、僕は上記でも書いた通り「みんなが協力し合えば、どの女の子と付き合う事になるかはともかく、みんながほぼ同一ターンで別々の女の子とゴール出来る」と設計していたしそれを伝えたうえでゲームをやらせるのですが、全てのテストプレイで誰かが妨害を始めました。何も言っていないのに「俺もBちゃんがいい」などと(Bちゃんが何者かも設定していないうちから)言い出して邪魔をするプレイヤーが出るのです。

箱庭としての精度を上げていた「好き好きセブン」は、その精度故に他人の邪魔をしようという悪意のあるプレイヤーが一人いるだけで閉鎖空間内の空気が最悪になり、誰かがゲームクリアする事の難易度が跳ね上がります。そして幾度の破綻、幾度の女の子側からの破綻、男女問わぬ裏切りが発生し、それが揶揄されていきます。ある程度の年齢を経て多少の男女関係の経験がある人は、他人の揶揄から己の過去が掘り起こされ錯乱します。シンプルなボードから複雑なゲーム体験が生まれ始めていますね。

だが、クリアは出来る。出来るのです。このゲームは(プレイヤーの精度によりプレイ時間のぶれ、破綻回数のぶれはありますが)ある時急に破綻せずにゴールする道筋が訪れます。ゲーム時間が1時間を超える事はこれまでの経験上ありません(「魔法」コマンドをうまく使えばだれか一人がゴールする事は確実にできます)。だからこそプレイできるし、だからこそ逃げられないのです。「いつか確実に誰かは幸せになれる」という世界で、それでも他人に負けたくないという(本質的ではない)思いが互いを邪魔し合う…「好き好きセブン」はプレイした人にしか分からない地獄があります。そして、これは「好き好きセブン」恋愛のシミュレーターとしての強度を示すものですが、ゴールできる時は「最初から狙っていたわけでも」「上手くいくと思っていたわけでも」ないのです。ゴールした時も感動よりも安堵と不思議がやってくるものとなっています。あまたの地獄を見てきたうえで安定したカップルの言う、「なんで今は上手くいってるのか、よく分かんないんだよね」までもがシミュレートされているのです。

ダウンロードコーナー

さて、いよいよルールブックです。

下のPDFは、1枚2ページで印刷する事を前提としたパワポ形式の説明書です。先の通り一人遊びも出来るのでプレイ人数は書いていませんが、1人か3人でのプレイとなっています。(2人も出来なくはないかもしれません)

なお、下のバージョンをA4に印刷して切ると、カードサイズで持ち運びができるようになります。(トップ画像のセットになります。「LL7」と書かれた紙は裏面です。3色×7個の石と4種のポーンはご自身でご用意ください。別に消しゴムとスコア記録用紙でも代用は出来ます。)

さらに、対戦時にフレーバーを加えるため、Aちゃん・Bちゃん・Cちゃんのキャラ付けをするツールもあります。

さぁ、始めましょう。「好き好きセブン」を。

それは、それでも、あるいは、純愛のために。

↑クリエイターと言われるのこっぱずかしいですが、サポートを頂けるのは一つの夢でもあります。