呟きもしなかった事たちへ_No.21(2021年3月号)

※コンセプトは創刊号をご確認ください。ぼーっとする文章が続きます。バックナンバーはこちら

「好きな食べ物は?」と聞かれた際に答える食べ物として、一番馬鹿っぽいのは枝豆ではないだろうか。(実際美味しいかどうかは別として)何となくつまんで食べてしまうものを答えると食へのコダワリがなさそうになる。

今月も、呟きもしなかった事たちへ。

キャベツ

買い出しをしに行ったスーパーで、レジ打ちの女性が

「あらかわいいキャベツ」

とぼそっと言ったのを聞き逃さなかった。確かに小ぶりなのを買ったのだが、何が急に琴線に触れたのだろう。結果的にその週はキャベツを使うたびにその人の事を一瞬思いだしたがこれは恋…?

違う。これについては以前自分で分析した。これは「引く」だ。

隠し子

今住んでいるビルの1Fは認可保育園である。

換気の重要性が求められるようになって、この保育園からの園児の声が僕の部屋にまで入り、そしてテレビ会議の音声にも入るようになった。当然ささやかれるのは隠し子説である。それなりに弄られてしまうし、そこでいちいち固い反応をしても仕方ない、こちらも気にせず笑い話にしてしまっている。

が、しかし、本来的には園児にも妻にも知られていないから問題になっていないだけという気もする。知ったら不愉快かもしれない(妻は笑ってくれるかもしれないが、園児や園児の親はそうはいかないだろう)このまま知られないでほしい。

「隠し子がバレている事を隠している」みたいになっている。何なんだ一体。

蓬莱豆

節分の豆は大豆だけを買っている事は先月号で書いた通りなのだが、それを見越してか、京都に隠居した両親から蓬莱豆だけが送られてきた。

蓬莱豆は砂糖をまぶした大豆なのだが、はたしてその砂糖の部分がやたらめったら固い。噛んだら歯が負けそうなのでじっくりなめていると、そのうちボロッと水分を含んだ大豆が出てくる。「外はサックリ、中はジュワー」の亜種「外はカチカチ、中はジュワー」だが、ジュワーまでに時間差があるとちょっと気持ち悪いんだなという発見があった。

風邪の夢

風邪をひいた訳ではないが、「なんか風邪ひいたみたいになっちゃったな」という体験をした。

何の事はなく、眼鏡をはずした状態で知らないトイレに入ったのだ。

美容院で髪を切ってもらっている最中に何故か腹痛が来て、トイレにいかせてもらったのだが、その際に眼鏡をかけ忘れた。ド近眼なので眼鏡がないと本当にものが見えていない。ぼやけた視界で腹痛を抱えてトイレに入るのは、腹を下すタイプの風邪を引いたときにやる(または重度の二日酔いのときにやる)。だが、そのうえそのトイレが知らないトイレとなると、なんだか風邪をひいたときの夢のようだった。日常は不意に非日常になる。

Windowsタブレット

Windowsタブレットを購入した。出先でカメラで撮った画像をその場で大きい画面で確認できるとか、Kindleで大きいサイズの漫画が読めるとか、いくつか目的はある。サンストーンはやはり大画面で見ると最高だったので改めて推したい。

さて、上記目的ならAndroidタブレットでよかったろうという意見がありそうだし、実際Windowsタブレットよりよほど選択肢が多かった。それでもあえてWindowsタブレットにしたのは、「過去やっていたWindowsのクリックゲーをタッチパッドでやると環境が劇的改善するのではないか」という実験がしたかったからだ。具体的にはアンディーメンテのゲームとステッパーズストップのゲームだ。どちらも中学・高校時代の思い出。マウスをとにかく動かしてクリックしていた。

結論としては大当たりで、アンディーメンテのアールエス、ステッパーズストップのくもりクエストなど、タブレット操作だと非常に楽で、快適性が向上し満足している。マウスクリックを多用するゲームであれば大体はタッチパッドで快適にやれるのではないか。こういう形で過去作の掘り返しをする事も出来るのだな。リメイクされなければ自分で環境を改善するという手もあるということ。

ワニ

「100日後に死ぬワニ」が「100日間生きたワニ」になり、ワニが死んだ100日後という”その後”を描く映画になるらしい。今更かという声も含めて話題になっていたが、このnoteが出る頃には話題も沈静化していそうだ。

ザ・別に…なのだが、しかし、ワニ本人にしてもワニ周辺のキャラクターにしても100日しか生きていなかったわけではないのに「100日間生きたワニ」はおかしいのではというのは、「100ワニ」に興味が無くても思う事ではある。何らかで「死ぬ」が使えなかったものの、何とか100日というワードを残したかったのではないか…と邪推するが、結果的に「注目されている時だけが”生きた”という事」みたいな地獄を出してしまっていないか。

あるいはその地獄と戦う話なのか。メタ的に「TLでは”100日だけ”生きていたワニだが、本当の生は100日ではないし死後もワニは仲間の中で生きている」というテーマを扱う映画…いやこれチープ過ぎないか?この予測が当たっていても嫌だが、さてどうなるワニ。

だが答え合わせはしないだろう。するほど興味もない。

乱と灰色の世界

が、好きだ。特に考えなしに好きな漫画はと聞かれたら「乱と灰色の世界」と答えたい(が、マイナー作なので言わない)。一応2015年に「完結マンガ大賞2015」で銀賞を取っているが、まぁ知らない人の方が多いだろう。

とにかく良い。キラキラしていて、夢のある作品だ。

ではいい加減noteで推し記事でも書けばいいではないかという事になるのだが、これが難しい。作品自体が途中で色が変わって行く。平和な話から、段々とその平和が脅かされる話になり、最後にはその脅威との闘いとその後日談になっていく。だが、それでも主線は一本通っている。下に示すのは1巻発売時の作者のコメントだが、これは最終巻まで通用する作品紹介になっている。

魔法少女が描きたかったというか、小さい女の子が大人に変身できる話が描きたかったんです。形だけ大人になっても、ホントに大人になるってそういうことじゃないんだ、大人って見かけじゃないんだっていうことに気付いてゆく、そんなお話です。

その変化と主線と、それぞれの要素のバランスが全てちょうどいいのだが、それをレビューするのは難しい。美味しいものの表現として言われる「過ぎない」料理に近い。「辛すぎない、しょっぱすぎない、甘すぎない、濃すぎない、香りすぎない」、それでも確かに味も香りもしっかりある…美味しい…こうしたものを適切に表現するのは難しい。「何だかわからんが凄い事が分かる。うまい」、そういう高級なカレーとかにこの漫画は近い。混然一体としているがどこも手が抜かれていないもの。そしてその結果、何が具体的に素晴らしいと選んで言い切れないもの。

ファンシー過ぎないが魔法はキラキラしていて、平和の脅威はエグ過ぎないもののしっかりと怖く、言葉は尽くされないが人の想いは通じ、そうしたなかで少女達は(「達」、そう、主人公以外の周辺も)変化・成長していく。全てが良い…と言うと語弊があるが、それらが混然として一つの作品としてまとまっている。

上手く言い表せないが、とにかく読んでほしい。



↑クリエイターと言われるのこっぱずかしいですが、サポートを頂けるのは一つの夢でもあります。