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【考察】医師の偏在

久しぶりの投稿になります。curewith代表の野田です。
今回は、医師の偏在について考察したいと思います。


医師の偏在とは?

医師偏在の問題は長年議論されています。
医師の偏在は大きく2つの要素に分解することができます。

  • 地理的な偏在

  • 診療科の偏在

特に、地方では両方の要素のために、専門の病院を受診するために長距離の移動が必要になることも少なくありません。
このように、医師数が増加傾向にある日本においても、医師の偏在はいまだに社会課題として残っています。

医師偏在の実情は?

ここで、私の専門の形成外科について調べてみます。

日本形成外科学会専門医一覧(https://jsprs.or.jp/specialist/list/)[アクセス日:2024年9月3日]をもとに算出地方公共団体情報システム機構(https://www.j-lis.go.jp/spd/code-address/kenbetsu-inspection/cms_11914151.html)[アクセス日:2024年9月3日]

日本の形成外科専門医は3,138人。自治体数は1,741。単純計算で1つの市町村に1~2人の形成外科専門医がいる計算になります。
しかし、政令指定都市・東京23区を除いた市区町村で見てみると、以下のようになります。

日本形成外科学会専門医一覧(https://jsprs.or.jp/specialist/list/)[アクセス日:2024年9月3日]をもとに算出地方公共団体情報システム機構(https://www.j-lis.go.jp/spd/code-address/kenbetsu-inspection/cms_11914151.html)[アクセス日:2024年9月3日]

専門医の数は約半分になり、分母(都市部を除く自治体数)より小さくなりました。
では、私が大学時代を過ごした北海道ではどうか。青い部分が形成外科専門医がいる市町村です。

北海道で形成外科専門医がいる市町村。日本形成外科学会専門医一覧https://jsprs.or.jp/specialist/list/(最終アクセス2024/9/3)を参考に作成

札幌市が68人、旭川市9人、函館市と帯広市が7人ずつ、釧路市と苫小牧市が3人ずつ、小樽市・北見市が2人ずつとなっており、道内の主要都市がおおむね複数人の形成外科医を抱えています。

但し、以下の反映されていない要因・形成外科の特性についても考慮が必要です。

  • 反映されていない要因

    • 他病院に出向しているものの登録地を変えていない

    • 週何日か医師の派遣を受けている

    • 専門医取得前の形成外科医

  • 形成外科の特性

    • 比較的新しくできた診療科

    • 耳鼻科・皮膚科などと守備範囲の重複があること

このほか、北海道が他の都府県と比較してあまりに広いことも一因している可能性があります。
しかし、上記をすべて反映できたとしても、おおまかな傾向は変わらないと考えています。そして、これは北海道×形成外科に限ったことではなく、他の地域・他の診療科でも起こっています。
これが医師偏在の実情です。

専門医を確保すればそれで良い?

では、専門医を1人でも確保すればそれでいいのでしょうか?
実際のところ医師の配置も同じくらい重要で、「医師のスキル」とはまた別の独立した要素と考えた方がよさそうです。

「外保連試案」という公表資料があります。この中には様々な手術を行うために必要なマンパワー・手術の所用時間などが記載されています。例えば、

  • 頬骨骨折観血的整復固定術 必要外科医数:3人

  • 分層植皮 25cm2未満 必要外科医数:2人

となっています(引用:一般社団法人外科系学会社会保険委員会連合編:外保連試案 2024 手術・処置・生体検査・麻酔試案.医学通信社.東京.2023)。例示した術式はほとんどの形成外科医ができる手術です。しかしながら、「一人でやる」のは相当大変です。多少の濃淡はあれど、これは外科系だけでなく内科系にも言える傾向ではないかと思います。例えば、血液内科医1人で移植までやるのは相当厳しい(休めない)はずです。
かといって、全ての病院で全ての診療科の医師を複数人確保するのも非現実的です。

このような背景もあり、国が進めているのが医療機関の集約と総合診療医の養成です。
医師や医療機器などの医療資源を集約することで、医師一人では難しい治療を医療圏の中で完結できる可能性が出てきます。
また、総合診療医・家庭医のように幅広い診療領域に対応できる医師を増やすことで大部分の疾患を地域で完結しつつ、真に専門的な診療が必要な患者さんの病床・外来枠を確保することができます。

地域住民で専門医の受診が必要な割合は0.5%

課題解決の方法は?

医師の偏在に関する変数はいくつかありそうです。chatGPTで聞いてみたところ、以下の要因が出てきました。

  • 医療提供体制:病院の配置、医療機関の規模・機能差

  • 個人の選択:職業の自由、ライフスタイル、キャリア志向

  • 労働市場:需給バランス、給与・報酬体系、労働条件

  • 制度・政策:医学部の定員、財政状況、教育・研修制度

  • インフラ:交通アクセス、情報インフラ

医学部の定員や職業の自由などは行政の範囲となり、多くの人にとっては定数です。
一方で、教育・研修制度などは我々が動かせる変数であり、かつ各々の医師や民間事業者が得意とする範疇です。

curewithが掲げるミッション

curewithは
「自分のまちで完結できる医療を増やす」
というミッションを掲げています。

心筋梗塞のカテーテル治療や白血病の抗がん剤治療などは専門性が高く、専門医が専門の施設で実施するのが望ましい医療です。

一方で、有病率が高い疾患について、自分のまちで完結できる割合が増えると、患者さんや家族の様々な負担軽減につながります。
これを実現するために、遠隔医療や医師のスキルアップ支援などのテクノロジーの活用が解決策と考えられています。
また、行政が意思決定をするために必要なエビデンスを確保していくことも必要です。
非常に大きな仕事ですが、curewithではこの領域で実績を作り、医療における課題解決に貢献したいと考えています。

長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます。
引き続き、ご理解・ご支援のほどよろしく申し上げます。

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