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医師のキャリア【臨床編】

医師のキャリアについて、できる限り解像度高く整理しました。
医学部受験生~若手医師の先生方に参考にしていただければと思います。


1 勤務医(医局)

一般的なモデル

入局後、大学病院と関連病院を異動しながら徐々にキャリアアップし、行き詰ったらキャリアチェンジを検討する。
途中で国内外の施設に留学する。大学院への入学を勧められることが多い。

メリット

  • 大きな仕事ができる

  • 人との交流機会が多い

  • 臨床、臨床以外でロールモデルがたくさんできる

  • 幅広い診療範囲を経験できる

  • 様々な医療機関で勤務できる

  • 研究できる

  • 論文の執筆をしやすい

  • いろいろな機会を与えられる

デメリット

  • 医療と関係ない雑用も多い

  • 希望が通らないことがある

  • 自分の進むキャリアとは関係ない仕事をしなければならない

  • どこかのタイミングで転職・開業が必要になる可能性

他者からの評価項目

  • 専門医取得数(収益、教育への貢献度)

  • 論文執筆数(教育、研究への貢献度)

  • 診療実績(収益への貢献度)

  • 研究費の獲得額(研究への貢献度)

  • 学会のポスト(教育への貢献度)

必要なスキル

  • 愛嬌

  • 体力

  • 忍耐力

コメント

将来の選択肢を幅広く持っておきたい医師や大きな仕事をしたい医師にお勧め。また、行きたい診療科は決まっているものの、具体的なキャリアがはっきりとしていないときにとりあえず医局に入っておくのもアリ。終身雇用の時代ではなく、人事交流や他大学のポストなどで異動になることもある。
ちなみに、大学の主要ポストは自大学出身者が占めることが多い。これは他大学出身者への差別というよりは

  • 東大・慶応など→自大学出身者の能力がシンプルに高い

  • 一般的な医科大学→母校出身者の数がシンプルに多い

と考えた方が無難だと思われる。

2 勤務医(医局以外)

一般的なモデル

国立病院機構、日赤、徳洲会、済生会など、系列内の病院を適宜異動しながらキャリアアップする。但し、ポストの数は限られているため、どこかのタイミングでキャリアチェンジが必要になる可能性がある。

メリット

  • 慣れた環境で働くことができる

  • 異動のストレスが少ない

  • 大学院も行ける

  • 大学病院よりは雑用は少ない

デメリット

  • 診療科によっては症例が偏ることがある

  • 臨床以外のロールモデルは医局よりも少ない

  • 他施設の情報が集まりにくい

  • 一部の超有名病院以外は大きな仕事は集まりにくい

他者からの評価項目

  • 診療実績(収益への貢献度)

  • 教育実績(教育への貢献度)

必要なスキル

  • 体力

  • 将来設計し、足りないものは自分で補う力

コメント

徐々に増えてきたキャリアスタイルではあるが、メジャーではない。有名病院や、日赤、徳洲会などであればある程度育成の仕組みが整っているので専門医・指導医を取るまでをゴールとすれば特に問題はないと思われる。

3 開業医

3-1 雇われ院長

一般的なモデル

理事長や運営法人の募集に応募し、採用される。開業医というよりは管理職に就いた勤務医と考えていた方がよい。

メリット

  • 臨床以外のスキルが身につく(経営・管理など)

  • スキルを説明するうえで必要な経験を蓄積できる

デメリット

  • 自由度は少ない

  • 運営法人によって責任の範囲が様々

他者からの評価項目

  • 実行力

  • 協調性

必要なスキル

  • 基本的には勤務医と同じ

  • マネジメントスキル

  • (経営スキル:法人本部が担うことが多い)

コメント

どこまで権限があるかは法人次第。腹切り要因として管理医師を募集しているところもあるので注意が必要。
法人本部の人事部・法務部など運営体制がしっかりしていることが多いので、将来的に開業を目指す人は一度雇われ院長を経験して、クリニック運営に必要な知識や運営体制を見ておくメリットは非常に大きい。特に皮膚科や訪問診療はこのパターンが多い。

3-2(狭義の)院長

資金調達から人材採用まで、ゼロから作っていく必要がある。開業コンサル等を利用する手段もあるが、その分コストがかかる。ある程度覚悟と準備が必要

メリット

  • 自由度が高い

デメリット

  • 責任が重い

  • 仕事量が多い

評価項目

  • 信用度

  • 実行力

必要なスキル

  • 経営

  • 運営

  • 体力

  • メンタル

  • コミュニケーションスキル

コメント

とにかくこれまでの信用と人脈が大事。
例えば、融資を受けるためには信用が必要で、税金の未払いや公共料金・クレジットカードの支払いの遅延などがないようにしなければならない。また、資金計画を考える際も、開業する土地にどの程度見込み患者がいるか、重症度が高い患者が来た場合どこの病院に紹介するか、またはどこの病院がどの程度紹介してくれるかを試算する必要がある。この時、勤務経験がある土地の方が「予想」ではなく「実情」として説明できるし、良好な関係性のある医局の方が確度を高くシミュレーションできる。
運営面においても、非常勤の医師に来てもらう際にも、医局にお願いすることになるので、この場合も医局との関係性が必要になる。
また、雇われ院長よりも必要な要素が増える。特に経営部分は学ぶ機会がほとんどないので、開業までにいかに経営に触る機会を持つかが重要。

4 フリーランス(番外編)

専門医あり

誰でもできる仕事ではないので単価が高くなりやすい。
但し、医局の派遣の方が代診の確保や何かあった際のリカバリーが効きやすいので、フリーランスの方が優先度が下がる可能性が高い。

専門医なし

単価は相場よりも低いことが多い。また、下がり傾向が続いている。
若いうちは無理が効くかもしれないが、10年後、20年後に年を取ったときに単価がさらに下がっている可能性もあるので注意が必要。

メリット

  • 好きなタイミングで働ける

  • 仕事のボリュームを調整しやすい

デメリット

  • 収入が安定しない

  • 一度悪い印象がつくと案件を確保しづらくなる

  • 社会的な信用が低い

他者からの評価項目

  • 社会常識(遅刻しない、ドタキャンしない)

  • 協調性(スタッフや患者とトラブルを起こさない)

必要なスキル

  • 平均的な医療知識、スキル

  • 社会常識

  • 謙虚さ

  • 忍耐力

コメント

特に専門医なしの状態でのフリーランスは労働者として弱いので、個人的にはあまりお勧めしない。少なくとも何か一つ専門医を取った後、収入源のひとつとして活用する方がよい。

いかがでしたでしょうか。次回は臨床以外のキャリアについても触れていきます。

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