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悔しさや失敗も物語の1ページとして

運動会が終わり、写真で当日を振り返りながら作文を書くことになった。


作文というのは、自分自身を見つめ直すというか、自分と向き合う時間だと思っている。だからこそ、節目では作文を書くようにしている。


私は作文指導が大好きだ。作文ほど個性を発揮し、仲間を認め合い、それを価値づけられるものはなかなかない。

・物語作文
・NGワード作文
・実況作文
・心の声作文

などなど、様々な方法を紹介し、その子が「やってみたい!」と思った表現方法で自分だけの作文を書く姿がたまらなく好きだ。そんな時、信じられないくらいの集中力を発揮する。まさに「没頭」という言葉が相応しい。


そして、その没頭は保護者にも伝わる。個別懇談の時に子どもが書いた作文を見せると、嬉しくて泣く保護者もいらっしゃったほどだ。それほど、子どもの言葉には人の心を動かす力がある。


今のクラスのみんなも、作文をとても楽しみながら書いてくれていて、鉛筆を持つ手は真っ黒になるほど夢中になって書いていた。



現在の勤務校では、朝の放送で作文を読むことがある。私の担任している学年は、運動会を作文を発表することになっていた。



そこで、子ども達で文章を読み合い、子ども達の推薦から発表の候補者が8名挙がった。さぁ、その中でどう決めようか。


8人に相談すると

「みんなの文章をもう一度ちゃんと読みたい。それで、自分以外の人に投票して決めたい。」

と。なんてステキな決め方だろうか。


その8人の中に、ある男の子(以下Aさん)がいた。Aさんは、一学期に作文の発表ができずに悔しい思いをしていた。投票の案を出したのもその子で、お笑い係の中心になってくれているムードメーカーでもある。その子の作文は、バトンパスリレーの臨場感や心の動き、そして彼の熱い思いが強く感じられる、どこに出しても恥ずかしくない素晴らしい文章だった。


友達の作文を真剣に読み合う8人。20分くらい読んでいたように思う。
投票すると、同票で3人が残った。Aさんも残っている。


しかし、最終投票で別の子が選ばれた。



選ばれた子は喜ぶわけでもなく、ただその事実を噛み締めていたように見えた。選ばれなかった子達は、泣きそうな子もいれば、おめでとうと声をかける子もいた。その場の空気の重さが、いかに真剣であり「自分もやりたかった」という気持ちを抑えてこの場にいることを表していた。


投票が終わり授業に戻ろうとすると、クラスにはいつもの明るさが感じられなかった。後ろの方を見ると、Aさんが机に突っ伏していて、なかなか起きない。きっと悔しさが溢れ出したのだろう。



「〇〇さんの本気、ちゃんと受け取ったよ。しっかり伝わってるよ。」
と声をかけた。



私もぐっと涙を堪えたが、もう一つ何かあったら号泣するところだった。
最近些細なことですぐ泣きそうになる。




実は、私も異常なほどの負けず嫌いだった過去があって。


兄とゲームで負ければ泣き
生き物係になれなかったら泣き
野球で負ければ泣き
ドッジボールで負ければ泣いていた。


だからこそ、Aさんの




「悔しさをどうしたらいいか分からない気持ち」

が痛いほど分かった。




でも、この悔しさは必ず成長に変わる。


だからこそ、教師として関わる時に大切にしたいことがあるなと思って。


それは、



悔しさ・失敗・トラブルも、その子の物語の1ページだと思えるか

ということ。


それは最近のこんなエピソードからも感じられた。


私が初めて担任を持った1年生が大きくなり、今では6年生になっている。その子達の運動会を観に行った時、ある子が私に気付き声をかけてくれた。



「先生さ、1年生の時の唐揚げ事件って覚えてる?」




私は、何のことやらサッパリだったのだが…




「〇〇さんが唐揚げ落としてさ、泣きやまないからみんなで分けてあげたやん!」




思い出した。当時、気持ちの整理が苦手な子が唐揚げを落としてしまい、教室の隅に隠れて泣いていた。すると、みんなが一つずつ唐揚げを分けてくれて、逆に多くなりすぎて「食べれへんやろー!」となった話だ。


「唐揚げ事件、めっちゃ覚えてるんだよねー!」


その子の中では、「みんなは1人のために」が能動的に行われたことが、とても印象に残っており、それからクラスが仲良くなったと話してくれた。1年生の些細な1コマをよく覚えているなーと思ったけど、その子にとっては大きな出来事だったのだ。


つまり、成功体験だけでなく、悔しい気持ちや失敗体験やトラブルも、成長の1ページになり得るということ。そして、それを教師が理解し活かそうとしているか、ということだ。


3月、Aさんとお別れをする時に、「運動会の作文の時のこと覚えてる?あれが、〇〇さんの成長の大きなきっかけになったんだよ。」と言えるようになれたら。ってかめっちゃ言いたい。笑



そのためには、そこまでの物語の続きをイメージする必要がある。その上で

・彼の成長できる環境を整える
・Aさんのこれからの成長を確実に見取る
・過去の経験と結びつけて成長が感じられる声かけをする

ことで、きっとAさんは大きく飛躍できるはずだ。


そんな関わりが継続できれば、3月がきっと愛おしい時間になる。「あの時、実はこんな風に思ってたんだよね。」って。そして、そのための伏線はいくらでもあるなと思えてくる。



そんな風に考えたら、子ども達の失敗やトラブルも前向きに捉えることができそうである。



芸人のピース又吉直樹さんの言葉をお借りすると



「バットエンドはない。僕たちは途中だ。」


途中なんだ。みんなが経験していることは、ゴールじゃなく、途中なんだ。これから自分という物語をまだまだ作っていけるんだ。





さぁ、3月最後にみんなにかける言葉をイメージして。


悔しさや失敗も、その子の物語の1ページとして。

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