実は、すごくめんどくさい話
民間の調査によれば日本の総世帯数は5,500万世帯前後、うち集合住宅の世帯が2,500万前後とのことです(いずれも2023年)。
通信インフラには「幹線」と「引き込み」があって、この引き込みのことを「足周り」と呼んだりしますが、この足周りの途中に「(通信会社と利用者の)責任分界点」というのがあり、戸建てと集合住宅には異なる「足周り」事情があります。
集合住宅では入居するとすぐに使える「備え付けのインターネット(プロバイダ)」がある場合も多いかと思います。各戸が独力で手配をしなければならず、ときに引き込み工事費を負担しないと引けない、といったケースもあります。
備え付けのインターネットサービスがある場合、ほとんどのケースでは「いったん棟に引き込んで、そこからまた各戸に分配する」という「回線」を棟内に施工・敷設しているでしょう。
この棟内の分配回線には、建物の建築時期によっていろいろあるでしょう。
大別すると「光ファイバー」なのか「金属線」なのか。
もしeスポーツ・オンラインゲームなどを楽しんでらっしゃる方なら、ご自身でご自宅のルーターには一家言あるという方も多いかと思いますが、この棟内の「つくり」には回線だけではなく通信機器もあります。通信機器の陳腐化は回線よりもはるかに速い。
では、それら回線や機器の「更新」はどうなっているのでしょうか。
先述の責任分界点から「内側」は所有者の責任において設置する必要があります。
では集合住宅の場合、その責任分界点どこにあるかというと、「いったん棟(私有地)へ引き込み」の間に存在します。「棟内で再分配」には通信会社は関わりません。
集合住宅ではこの部分は「共用部分」のはずです。占有部分ではありませんから、各戸居住者が勝手にするわけにはいきません。こうなっちゃうとめんどくさいから、いまはインターネットサービスに「据え付けのモバイルルーター」風の機器をセットにした契約が目立ちますよね。引っ越す際にも契約ごと簡単に移設できますし。
ですが、昨今の「ネット利用の様態」からすると帯域や遅延性能には不満もあります。
「もっと快適なネット環境」を、ここで便宜上「真のブロードバンド」と言って、話を進めますと、今日は、集合住宅の「真のブロードバンド」化ってどうなの?という話題を、しかも当社のような通信技術屋の目線で、メモっておきます。
「棟内に”時代遅れ”の金属線が敷設されていても、光への回線更新は管理組合総会ではどうにも合意形成に至らない」ということは容易に想像がつきます。
これを「規格」(ある種のソフトウェアパワー)で切り抜ける、そういった「対案(競合勢力)」があるというのは私たちの業界のある種の強みのようなものです(笑)。
とはいえ、どっちにしても「機器」は更新しなければなりません。
共用部の更新は必須としても、もう一方の「他端」対向機器は各戸負担とするなら、やはり揉めるでしょうね。
そうなると、不動産価値なども勘案すると「光化」の方が安価なうえ投資対効果も高いのかもしれません。
この話題は、未踏市場の性格もあって、私たちからするとほぼ事業の本丸でもあり注視していきたいと思います。
さて、冒頭の統計ですが。思いのほか戸建てが多いと見るか、集合戸数が多いと見るか。仕事柄そこそこ地方を訪ねたことがあるつもりの経験からすると、日本はまだまだ戸建て文化なのだろうと思うのですが、なにせ、この国でなにごともモノゴトの「見方」を決め、社会の方向付けをしている方々は集合住宅にお住まいでしょう。そこで「集合住宅」の「広帯域(真のブロードバンド)化」についてというのは「思いのほか」重要な話題なのかもしれません。