そりゃそうだよね、天文台とネットワーク
2000年の直前くらいから動画の配信プロジェクトに関わっていたという話と、北大理学部惑星科学の方々とご一緒していたのはきっかけが同じだったのか別なものをくっつけたのか、いまとなっては記憶が怪しいのですけれど、とにかく天文イベントと動画配信がいつもパッケージになって数か月に一度広域のネットワーク相互接続の「演習」をやるようなことが数年続いていました。
そのなかにはみさと天文台のような「先駆的」な方々もいらして、いつも参考にさせていただいていたのを覚えています。
そんなこんなで、名寄の「市立木原天文台」を北大と相互接続したお話は以前にしたのですが、その名寄市の天文台が郊外の公園の大規模な造成に伴ってそこへ移転する、ついてはオンライン化のプランを立ててくれというご依頼がありました。2006, 2007年ころのお話だったと思います。
この公園はのちの「北海道立サンピラーパーク」で、道立の公園の中に市立の施設を立てる(で、そこへ国立大学法人との相互接続ネットワークを引き込む)という、聞いただけでもたいへんそうなお話だったのですが、ここでは技術に関わるところを中心に記しておきます。
道立サンピラーパークはとても魅力的な、いわゆる自然公園です。
市街地から少し離れた郊外の山のすそ野の丘に、大きなキャンプ場なんかもあってひろびろとした、市街地にあった木原天文台にとって周囲に明るいもののない絶好の立地です。
絶好の…立地…。なにもないんです。もちろん回線もない。いまのように「携帯基地局」だってありません。(いまだって、携帯基地局は「住民カバー率」ですから、人の住んでないところには基本ありませんし、北海道にはまだまだそんなところ 文字通り "山のように" あります)
そのうえ、この公園は市街地からみると国道の向こう、線路の向こう、川の向こうなのです。
これを市立つながりで「名寄市立大学」のご協力を得て、天文台と市街地にある市立大学を「無線」でつなぎ、市立大学を別途「道内大学間ネットワーク」に収容して北大と直通するようにしました。
有線に比べて、帯域も遅延も安定性もどれもこれも見劣りしてしまうのですが開園、天文台の移転開台のスケジュールが迫ります。開台時にオフラインになるわけにいきません。しかたがない。
これには、長い時間かけた交渉の紆余曲折と挫折があって有線が引けなかったということがあります。前述の通り、国道、線路、川という横断敷設許可の三重苦に、さらに回線事業者から「その "結界" の向こうに200件の契約があれば回線敷設が可能です」という取り付く島もない最終回答があって、いろいろな意味で心底がっかりしました。
それにしたって、直線の見通しがとれにくい(夏になって葉が茂ると障害になる)問題、中継局を置かせてくれるところがない問題、機材が高価だ問題、いい周波数帯の電波を使おうとすると局(機材)の免許と人(無線従事者)の免許が必要問題、などさまざまな問題がありました。
なんとか開通したものの、高指向性・高利得アンテナを使った無線LAN規格(IEEE802.11シリーズ)の接続では、数十Mbpsも出せればいっぱいいっぱいです。その当時木原天文台をつないでいた「フレッツ」と比較するとイイ線だったのですがその後フレッツは、さすが光、どんどん増速していきましたから、この新天文台の外部接続回線は急速に陳腐化したろうと思います。
そういう意味では、安価に、当時容易に入手可能で運用しやすい機材で、しかも「市立」施設で両端のみという構成のこの構成は「過渡的・暫定・当面のもの」としては必要十分だったともいえたかもしれません。
この後、北大の苫小牧電波望遠鏡の件になっていくのですが、なんにしても天文台・望遠鏡というのはいつも人里離れたところにあって、好むと好まざるとにかかわらず「専用線」のような費用面で厳しい回線と向き合わなければならない、なかなか手ごわい存在でした。
結局、このプロジェクトに関わったことが私にとっては次の10年間を方向付けることになりました。
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