過呼吸。

酸素が不足した、うまく息が吸えない、浅い呼吸を繰り返して息継ぎの音だけが必死。何気ないLINEの返信速度が、僕を傷つける。何気ない言葉が、何も考えずに投げられた言葉が僕を傷つける。しんどいときこそ相手にとっての自分の価値が明確になって僕を傷つける。ただの他人ならあきらめて終わりなのに、ただ惰性で続いているような関係に僕は嫌気がさしているんだ。しんどいときに寄り添ってくれようとしない、適当な友情を守って生きていけばいいよ。僕が泣いている夜に、ゲームを片手に隙間時間に適当な文字を送られてきて、無駄に傷つけるくらいなら、終わりにしようよ。
いつだって人間関係はむずかしかった。一方通行の関係性が、苦手。僕と他人と、心が対等じゃなくてきつい。好きとか嫌いとか全然なくて、恋人関係という名前をつけているくせに友情以下、なのに、やることはやる、そういう関係性がしんどい。だったら他人のほうが気楽じゃん。
やっぱり僕にはわからない。恋人なんて作る意味がずっとわからなかったし、気に入っていた人でも告白されると興味がなくなるというか、「好きだから付き合おう」っていう感覚をもっていることが、それで満足してしまう人間なんだなっていやんなっちゃう。「付き合おうと思えば付き合えるんだから、付き合ってみたらいいじゃん。好きになるかもよ。」って友人に言われ続けて。なにを血迷ったか実際に恋人という関係を作ったら孤独は加速する一方だったけど、どういうことだろう。
心地よい人と、もしくは孤独をわかりあえる人と、居たいときだけ一緒に居られればそれが一番安心する。たとえそれが周りからみて不純だろうが、不誠実だろうが僕はそう思う。というより「恋人」という名前にこだわる必要はない。他人の薄情さに絶望しながら、そんな人たちより僕は愛にあふれていると思ってはいたし思っているのは事実だけれど、たしかに冷たい部分もクズなところもあるのも事実だ。僕にあるのは大切な人はちゃんと大切にするというだけで、大切にされたから大切にするという考えはない。自分が愛してる人を愛するという感情しかない。だから、されたから返そうとかそんなものはないし、自分の興味が消えたら終わりだ。でも、興味が失せたのに適当に関わる人こそやっぱ薄情だと思うし、もっと誠実に真剣に人間と関わるべき。いや、僕に対して適当な心も言葉も向けないでほしい。
#誠実とは
誠実と一途はイコールではない。関係性もイコールではない。僕には好きという感情がないのか、いやそんなことはない。きみが好きだよって僕は好きな人にちゃんと言えるよ。でもみんないう。「だれかを好きになることはないの?」って。なんだよそれ、好きになる人は一人じゃないといけないのかよ。じゃあお前は僕のこと好きじゃないのかよ、恋人が好きならそれ以外はなんなんだよ。
大きくなればなるほど、他人との境界線がよくわからなくて、どうしようもない闇が広がっていった。異性とか同性とか年上とか年下とかよくわからなくて、僕はただ人として向き合っていたいだけなのに、年下ってわかったら敬語を使わせようとする世界が理解不能だったよ。さっきまでのため口はどこいったの。異性にそういうことしちゃだめとか意味がわからないし、それが気を引こうとしてるとか心外だなぁ。悪いけど好きなら男も女も抱きしめるよ。ちなみにあなたのことは好きじゃない以前に興味ないので視界にすら入ってませんがなにか。
寂しいとき、温もりがほしいとき、誰かに会いたいとき、寂しさの溝を埋めようとするんじゃなくて、ただ寄り添ってくれる人が僕には必要だった。必要なのは恋人ではないしただのセフレでもない。寂しさを共有するにはまず寂しさを知らないといけないよね。
精神的にではなく、物理的に息が吸えない日々が続くようになったのはいつからだろう。酸素を吸っているのに酸素が供給されないのはまるで愛と同じだな。自嘲的に笑って呻いてた夜。どうでもいいよきみのことは、って懐かしい人に連絡をしたら秒で反応があって、なんでか泣きそうになる。
わかっていたんだ、関わってきた人のなかで一番愛のある人が誰かなんて。いつだって裏切らない誠実な心を向けてくれる人。会いたいといって、会いたいなっていうより駆けつけてくれちゃうところが、大好きなパフェをごちそうしてくれちゃうところが、強く、息ができなくなるくらい強く抱きしめてくれるところとか、性的のない愛情をくれるそんなきみ。
結局僕はどうしようもない人間で、他人を薄情といえないくらい薄情なのかもしれない。なにが正しいかって言いきれないのだから、仕方がないよ。
僕は僕の正義を貫いて生きている。だから今の状況はその道から外れてしまっている。そもそも愛から始まってはいないのだし、それよりも好きな人が他にたくさんいて、でもそういう関係を作ったからこそ不誠実が増していく。
誰とも比べられないくらい大好きな先生。こんな僕が珍しく自発的に、連絡を取り続けた相手。いつも曖昧にかわす先生が家にあげてくれたこととか、指先すら届かないはずの遠いところにいたのに、触れて、抱きしめられるようになって、先生の匂いがダイレクトに感じられて、もうこれは夢だ。抗えないよ先生には、って事実と言い訳をこしらえて、家に帰っても消えない先生の匂いが僕を中途半端にさせる。僕に恋人がいることを知っている先生と先生が恋愛を求めていないことを知っている僕。いつか超えるであろう一線を前に、僕の心は不安定に揺れていく。すでに終わっているのだ、終わっているのにどちらも確信に触れようとしない惰性の恋人という関係を遠くで演じているだけ、僕にそそぐ愛を持ち合わせていないし、優先度は低いとしても、きっと僕は不誠実で、どうしようもない。それでも定期的に心配してくれる先生に名前だけの関係の人より愛を感じるのは仕方がないし、名前だけ関係こそ不誠実だ。
連絡をしたらいつでも反応してくれるきみも、会いにきてくれるきみも、すべてを肯定してくれるきみも、たしかに情があって、愛があって、だからわからなくなる。恋人ってなんだ。
僕を僕としてちゃんと見てくれないひとなんていらないんだよ。
ただ、かなしいというよりいら立ちが混じって、くるしくなってしまっているのか、弱さを、取り除けないまま、でもその弱さ丸ごと僕だし、僕を好きだというのはつまり、裏も悪もすべてで構成されてこそ僕でそれを見てないだけで、それごときの好きなど求めてないし、僕は僕だよ。

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