”そそっかしさ”と”カスタネットガール”
最近夫によく「君はそそっかしいね」と言われます。なんとなく聞いたことのある響きだけれど、使ったことはないし、響きがかわいいので
”そそっかしい=おっちょこちょいでかわいらしい”
という意味だと解釈していたのですが、夫に「それは褒め言葉なの?」と聞くと「違うよ」と言われました。
そそっかしい:《形》落ち着きがなく不注意で、早合点(はやがてん)や失敗が多い。
らしいです。そそっかしい、かわいい響きなのにな。要するに、私は夫が予測できうる失敗を殆ど網羅してしまうのです。「そこに置いたら君、ぶつかって絶対に落とすよ!」っていうよくあるやつは全て落とします。これ本当。
なぜこの話を書こうと思ったかと言うと、先日料理していた時に、200gくらいの豚肉細切れパックを手から滑らせてしまったのです。しかし、わたしには強い運があるので、パックはそのまま床に着地。肉の欠片ひとつ床に落ちずに済みました。
今まで私は、自分が落としてはいけないものを落としたり、変なタイミングで失敗したり、せっかちな部分を、少し鬱陶しくも思っていたのですが、ついにそれらを表現するしっくりくる言葉を見つけました。そそっかしい。
以前、とあるイベントで穂村弘さんが”カスタネットガール”という言葉について話していました。”世界”と”世界観”の話だったかと思います。ごめんなさい、ここはうろ覚えなので話半分で読んでいただきたいのですが、確かこんな話だったような。
世の中には”世界”と”世界観”があって、私たちは”世界観”の中で生きている。例えば、駅のエスカレーターでカツカツとヒールを鳴らしての歩いている人を見ると、少しイラっとするときありますよね。でもある人は、あの人種のことを、”カスタネットガール”って呼ぶらしいんですよ。その言葉を知った瞬間、人は”カスタネットガール”という世界観を持ちます。今まで知らなかった世界観を知った瞬間に、少しだけイラっとしなくなるんです。
私の”そそっかしい”という言葉を理解した時のあの安心感はこれか!と思いました。
あとは、電車の中での通話にイラっとする心理もそうですよね、目の前にいる人が何を話しているか分からない、自分の知らないところで何かしらの会話が行われているけれど、自分に見えるのはその半分だけ。全体像が見えないから不安になるし、イラっとしますよね。
その穂村さんの話を聞いてから、私は見えない”世界観”を探すようになりました。沢山の”世界観”を知って、理解すると、他人に対して少しだけやさしい気持ちになれます。
ちなみに私がやってきた失敗の中で最もそそっかしいな、と思ったのは、デリバリーピザを受け取り、嬉しくなってしまって玄関で蓋を開き、リビングにもっていくまでに綺麗にひっくり返したことです。もちろん、そのピザは玄関で落とされたので食べられませんでした。小学生の頃の話ですが、大人になってもそそっかしさは変わらないのです。
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