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文句言奴程大抵暇人

いつものようにtwitter patrolをしていると、ある投稿が目にとまった。

投稿者の男性は、妻が傷付けられたことに随分と腹を立てているようだった。渦中にあるのが最近話題の作品であることも気になり、少し詳細に見てみようと思った。

投稿の内容は、あるテレビ番組に委託された仕事をした妻が、誹謗中傷の的になっているというものだった。『100日後に死ぬワニ』の100日目予想を描いてほしいという委託で、作者公認と聞いて引き受けたとのこと。言い回しは多少異なるが、「この作品で有名になる以前から作者の作品が好きだった妻は、作者に敬意を払いながら丁寧に内容を考え、誠実に仕事に取り組んでいた。妻は自分が悪いと言っているが、私はこのような仕打ちが許せない。」と概ねこのような内容だったように思う。詳細は以下の投稿に続いている。

誹謗中傷を受けた妻が傷付き、「自分が悪い」と落ち込んでいる姿を見て、彼は「どうして誠実に仕事をした彼女を傷付けるのだ」と腹を立てたのだろうと思う。誹謗中傷の内容はどんなものなのだろうか、私はもう少し詳しい事情を確認すべく、彼の妻と思われるアカウントも見てみることにした。

リプライ元にあったと思われる4コマの投稿は削除されており、4コマの内容も、それに対してどのような非難の声があったのかも確認することが出来なかったため、情報収集はここで終了となった。そのため、ここからはこれまでの人生経験と想像力を駆使して考察を進めてゆく。


大きく話が飛ぶが、まずはじめに、テレビ番組やsnsというものは、基本的に消費者と思われている"見る側の人間"はそれらの情報に金を払っていない(ただし一部N○K視聴者を除く)。仕事を委託した番組側は彼女に金を払ったのだろうが、番組の内容を評価するのはあくまで"視聴者"である。企画したのは番組側だが、視聴者が攻撃の対象を彼女にしたのなら、番組はわざわざリスクを負ってまで彼女を庇いはしないのだろう。それが現実。

また少し話が飛ぶが、金を払わずに様々なメディアを通して情報を手に入れられるだけでなく、snsを通して匿名で発信することも出来る...とても便利な世の中かもしれないが、情報の正しさや意見の正当性を考察する能力のない人でも容易に情報戦に加わることが出来てしまうのが、現代の情報社会の恐ろしいところだと思う。

刀が武士の持ち物だった時代から、誰でも刀を使える時代になったとしよう。正しい扱い方を知らない人間が刀を扱うことは、刀の価値を下げ、他人を傷付ける恐れがあることくらい誰にでも想像がつく。それなのに、情報にもそれだけの影響力と力があることを、分からないで扱う人があまりにも多過ぎるのではないだろうか。

番組に出る、snsで有名になるということは、そんな少しイかれた危ない剣士が溢れる土地を歩いていると思っていた方がいい。いつどこで理不尽に刺されようが、ツイてなかったと諦めるほかに出来ることはない。蚊柱に巻き込まれた怒りで、ユスリカを一匹一匹潰していく程の恨みと執念があれば話は別だろうが。


そもそも、金を払わないで済む商品に集まる消費者に、価値を付けたらどうなるだろうか。"無料"のものには、金を払うだけの価値を商品に見出して応援してくれる"良き支援者"以外も集まることを念頭に置かなければならない。自分や自分の作る商品を守りたいのであれば、"良き支援者"が集まるような価格設定が必要だろう。"無料"で集まる人数の多さは確かに影響力を持つが、それだけ質の悪い客も呼び込むリスクを内包していると考えた方がいい。

ここではじめに戻る。金を払わずにテレビ番組を視聴し、snsを眺めている人々の価値は、ピンからキリまであると認識を改めていきたい。理不尽な誹謗中傷があったとしても、まともに傷付かないだけの防御力が求められるが、人間の心はそう強くはない。傷付いて、逃げ出したくなる気持ちもわかる気がする。だけど、攻撃をうまくかわし、話題性だけをうまく利用できたら、もっと沢山の優しい人の目に触れるチャンスにもなり得ることも、忘れないでいてほしい。夫が「誠実だ」と評価していた話題の4コマは、彼女が投稿を消してしまっていたのでもう見ることは出来なかった。とても残念に思った。彼女は、自分の仕事の価値を自分で下げてしまったのではないだろうか。私はなによりもそれを悲しいと思った。

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