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缶チューハイ

失敗した。少し考えればこうなることは予想できたはずなのに、それが出来なかったのはやはり疲れていたせいなのだろう。耳の奥の方で拍動が聞こえる。血の気が多くて脈ははやい。血行が良すぎるせいで手足は火照り、走ってもいないのに荒々しく動く心臓のせいで息が苦しい。

もともと酒に弱い体質のくせに、疲れた空きっ腹にゴクゴクと缶チューハイを流し込んだのは馬鹿だった。身体のことを考えて酒を控えていたのも今思うと良くなかった。酒は飲み続けなければどんどん飲めなくなる。もちろん休息はなくてはならないが、使わなければ使わないだけ衰えるという点で、肝臓は筋肉に似ていると思う。少量を習慣的に摂取するのが良いのだろうとも思うが、そうもいかなかった。缶チューハイにはポテチがつきものなのである。美味しいが不健康の代名詞のようなポテチがあってこそ、缶チューハイの清涼感が活きるのだが、ポテチは日々我慢してこそたまに食べる美味しさが引き立つ代物である。ポテチのタイミングに缶チューハイを合わせると、どうしても月2〜3回になってしまう。

ここまで考察する余裕があるのだから、案外私はまだ大丈夫なのかもしれない。遠のいていく意識のなかで、そんなことを思ったような気がする。気が付いた時には、半分程残された缶チューハイの炭酸は抜けきっていて、食べかけのポテチはすっかり湿気っていた。

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