物を捨てた

きっかけはありふれたもので、引越すから荷物を減らすと言うだけの事だった。

どうせなら断捨離をして身軽になろうと思った。それだけ。ひたすらに、捨てる。

着なくなった服を、あることすら忘れていた小物を、読み返さなかった本を、もう何が書いてあるのか覺えても居ないノートを、よれたタオルを、履かない靴を、使わないペンを、鉛筆を、筆を、色ペンを。捨てて、捨てて。

そうして、まだたくさんの自分が選んだ物に囲まれて。本当に欲しかった物なのかは曖昧で、ただここにあるだけなのかもしれない。

自分の一部を捨てる。
好きだった本を、ぬいぐるみを、食器を。

それはなんだか、自分を少しずつ切り離すような。

とはいえ、身軽になるのは快適で、あれらは自分の贅肉だったのだろうと思う。

しかしなぜか、僅かにさみしくも思うのはきっと夏の青空があまりにも青くて暑いからだと思う。