【掛け合い台本】少年と学問の神様

少年:中学生男子。神様が見える。成績が悪いがあまり気にしていない。
蔡(さい):学問の神様。神様として自分に自信がない。無名すぎて信仰としてはほとんど少年だけが頼り。
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少年「神様―!神様いないのー?」
蔡「……」
少年「なぁんだ、ついに絶えたか。惜しい神様を失くした。そろそろ大人しく塾に通いますかぁ」
蔡「まて!!いる!!まだいる!!」
少年「ならさっさと出てきてよね。最近の中学生は暇じゃないんだから」
蔡「いやお主は暇だろう。毎日毎日こんなところ来よって」
少年「来てほしくないならもう来ないんだけど」
蔡「すみませんでした」
少年「素直でよろしい。っていうかさぁ、この間のテスト最悪だったんだけど」
蔡「またか!?これで何度目だ!」
少年「それこっちの台詞!あんた学問の神様なんだろ?だったらいい加減どうにかしてくれよ!このままじゃほんとに塾行かされるし!そしたらこんなとこ二度と来てやらないから!」
蔡「私のせいか!?私のせいなのか!?」
少年「当たり前!何のためにこんなちっっっっちゃいお社の神様に『お勉強できるようになりますように』ってお願いしてると思ってるの?だいたい、学問の神様のくせに菅原道真じゃないとかどういうこと?詐欺?もしかしてあんた学問の神様じゃないんじゃないの?今までだましてたの?」
蔡「うぅっ……さらっと気にしていることを……い、今まで黙っていたが、お主そろそろ口を慎まねば祟られるぞ!?」
少年「へぇ、誰に?」
蔡「私にだ!」
少年「あんたが祟る?やれるもんならやってみなよ」
蔡「ああいいだろう!お主など万年学年ビリの刑だ!」
少年「それ、今と変わらないじゃん」
蔡「ぐぬぬ、確かに……」
少年「あ~あ、残念な神様だなぁ」
蔡「ぐすっ……」
少年「うわぁ、泣いてるし」
蔡「うぅっ……私のような神ではだめなのか?だからこのように小さな社で、人も滅多に寄らぬような場所で、そもそも私が学問の神であることも知られず……うぅ」
少年「はじまったよ……だから嫌なんだよなぁ、ここ来るの」
蔡「ならさっさと見捨てれば良いだろう」
少年「あんた見捨てたら塾行かないといけないじゃん。それは面倒くさい」
蔡「お主は私にどうせよと言うのだ」
少年「あー、んー、とりあえず、この間のテストの訂正ノート出さないといけないから手伝ってよ。大量すぎて俺一人では終わらねぇもん」
蔡「ぐすっ……分かった、見せてみろ」
少年「はい」
蔡「こ、これは、英語ではないか!私は英語は分からぬと何度言ったら」
少年「やっぱりだめかぁ。帰ろ」
蔡「まてまて、これ以外なら、これ以外なら何とか!特に国語!国語を出せ!あと社会!」
少年「分かったよ。まったく、我儘な神様で人間様は大変だよ」
蔡「うぅぅ……」
少年「泣くなよ、面倒くさい。ほら、国語と社会」
蔡「うむ……」

少年「ねぇ神様」
蔡「なんだ……」
少年「ここに来るのって、俺だけ?」
蔡「そうだな、お主だけだ。他のものは遠目に見て終わりだ。私が何の神様か分からぬのだから仕方あるまいな」
少年「看板でも立てればいいじゃん。作ろうか?」
蔡「いいや、このままでよい。お主が来なくなれば、それで終いだ」
少年「ふーん、消えるの?」
蔡「そうだな、人の思いが途切れればそうなる定めだ。頃合いだな」
少年「あっそ」

少年「ねぇ神様」
蔡「お主なぁ、口ではなく手を動かせ、手を!」
少年「息抜きしないと集中できないんですぅ」
蔡「生意気な」
少年「でさ、さっきの話だけど、ここに来るの俺だけってことは、あんたは俺の神様なわけ?」
蔡「本当に生意気だな。だが、まあ、そうだな。そう言っても過言ではないな」
少年「じゃあ、あんた消えないよ」
蔡「はあ?」
少年「だって、俺が俺の神様消すわけないじゃん。こんなに面白いのに」
蔡「面白いとかそういう問題では!」
少年「良いじゃん、面白いから、消えんなよ」
蔡「か、勝手に決めるな!人間!」
少年「はいはい」

蔡「人間」
少年「何?神様」
蔡「明日は、英語をみてやる。だから、また来い」
少年「無理すんなって」
蔡「無理ではない!私は学問の神様だ!お主の神様だ!絶対にお主を学年一位にしてみせるぞ!」
少年「はいはい、せいぜい頑張ってください」
蔡「うむ!」
少年「じゃ、今日はここまで。あーあ、疲れたぁ、帰ってゲームしよ」
蔡「げえむ?」
少年「何?興味あるの?今度持ってきてやるよ」
蔡「お、おう!」

少年「じゃあ神様、また明日」
蔡「ああ!また明日だ、人間!」


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