【Dota2 プロリーグ】DPC、Majorってナンだ!?(2022年版)【仕組み解説】
タイトルは同名のテレビ番組からです。あれ面白かったなぁ。
最近だと似たようなテイストの番組に球辞苑ってのがありますね。
ああいうの好きなんですよ。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今回の記事はああいう番組に倣って技術面を深掘りしていく内容…ではなく、単に大会の仕組みとかを説明していく感じになります。
はい、分かる人にしか分からない話はこの辺にして、始めていきましょう。
前置き
さて、今回はDota2のプロリーグの仕組みについてです。
"DPCって何?昇格とか降格とか言ってるけど何をしてるの?"とか、
"Majorって世界規模の大会らしいけどTIとは違うの?"とか、
"TI出場チームはどうやって決めるの?"とか、
"俺もTIに出たいんだけどどうすりゃいいの?"といった内容を解説します。
なお今回説明する内容は2022年版(正確には2021年11月以降)です。
去年まではまた別の制度でしたし、多分来年以降もどんどん作り替えていくでしょう。
既に10年以上国際大会を開催し続けているDota2ですが、この辺りはまだまだ発展途上と言えそうです。
また、後の方で書きますが様々な情勢の影響で現在進行形でルール変更をしている部分も多々あります。
この記事は公開日(2022年5月19日)時点での情報となります。
それでは解説していきましょう。
全体の流れ
予選→リーグ戦(Div1・Div2)→メジャー
これを1セットとして、年間で3セット行います。
その後に集大成としてTIを行う、というのが今年予定されている流れです。
画像にするとこんな感じです。
予選とリーグ戦は6地域に分かれて開催されています。
メジャー・TIは全世界の選手が一堂に会して行われます。
なお、この地域区分は大会を開催する際のサーバーの位置が基準で、選手の国籍は不問です。
地域をまたいだ選手の移籍も特に制限されている様子はありません。
もう少し細かい情報を見ていきましょう。
まずは全ての始まり、予選(Open qualifier)から。
予選
予選はエントリーさえすれば誰でも参加できます。
「TIって賞金高額らしいし出てみたいんだけど?」な方はここからどうぞ。SEA鯖の大会に出るような気概があるならその前にMMRを盛りに盛ってプロチームにスカウトされる方がまだ可能性ありそう
大会方式は負けたら即終了のシングルエリミネーショントーナメント。
しかも途中まではBO1、つまり完全な一発勝負です。
ある程度勝ち抜いた後はBO3になったりシードチームが参戦したりしますが、この辺の細かいところは地域ごとに若干異なるようです。
最終的に2チームが勝ち抜け、リーグ戦(Div2)への参加権を得ます。
リーグ戦(Div1・Div2)
Div1(正しくはDivision 1、以下も同様に略記します)が上位リーグ、Div2が下位リーグとなります。
2つのリーグそれぞれに8チームずつ在籍していて、BO3を1戦ずつ行う総当たりのリーグ戦を行います。
そしてこのリーグ戦の順位によって、この後行われるメジャー大会に出場できるかどうかが決まるとともに、次のリーグ戦での待遇も変わってきます。
こちらも詳しく見ていきましょう。
Division 1
Jリーグで言うとJ1、イギリスならプレミアリーグ、イタリアのセリエA。
例を挙げればキリはないですが、とにかくそのような地域最高位のリーグ戦です。
このリーグ戦で上位になったチームはメジャーに進出します。
過去の実績に基づき、地域によってメジャーに出場できるチーム数が決まっています。
西ヨーロッパと中国が4チーム、東ヨーロッパと東南アジアが3チーム、南/北アメリカが2チームずつの計18チームです。
一方、Div1で下位2チーム(つまり7位と8位)になってしまった場合、次のリーグ戦ではDiv2で戦うことになります。
Division 2
こちらのリーグ戦ではDiv1へと昇格することを目指した戦いが繰り広げられます。
なお、試合はDiv1と被らない時間帯に行われ、全て生中継されます。
もちろんファンの注目度こそ一歩劣りますが、Div1から降りてきたトップチームと予選から上がりたての新人チームが戦うこともある、非常にエキサイティングなリーグになっています。
このリーグ戦で上位2チームに入ると、次のリーグ戦では栄えあるDivision 1で戦うことになります。
そして一方で下位2チームは次のリーグ戦の参加権を失い、再び予選から戦うことになります。
メジャー
各地域のDiv1リーグ上位という世界最高峰のプレイヤーを集めて行う国際大会です。
Div1の項目で書いた通り、各地域から2~4チームがメジャーに参加します。
リーグ戦とトーナメントを両方行う、かなり試合数の多い大会です。
Round-robin(総当たり)→ダブルエリミネーション
まずは参加チームを半分に分け、それぞれのグループ内でBO2でのリーグ戦を行います。
その後ダブルエリミネーションによるトーナメントを行います。
このときBO2リーグ戦上位のチームはUpper bracket(勝者側トーナメント)に、下位のチームはLower bracket(敗者側トーナメント)に回ります。
また、リーグ戦最下位のチームはその時点で敗退です。
実はこの形式、近年のTIと全く同じです。
かなり簡単な説明しかここではしていないので、上の説明でクエスチョンマークが残った方は私の過去のTI解説記事も見てみて下さい。
TIへの道のり(DPCポイント)
最初に書いた通り、この[予選→リーグ→メジャー]のセットは年間3回行われます。
これらは全てTI出場権をかけた戦いになっている、というのが今年のDPCの構図です。
具体的には以下の条件を満たすことでDPCポイントが手に入ります。
そうして稼いだDPCポイントの上位12チームに、TIへの出場権が与えられます。
予選/リーグ(Div2)
残念ながらどれだけ勝ってもDPCポイントは0です。
上のリーグに上がって初めてポイントが手に入ります。
リーグ(Div1)
5位までに入った場合、順位に応じたDPCポイントを獲得します。
また、このポイントは1回目よりも2回目、2回目よりも3回目と増えるように設定されていて、逆転の芽が残りやすく作られています。
メジャー
そもそもメジャーに出場する条件がDiv1リーグの上位です。
つまりその分のポイント加算は既に入っています。
さらにそれに加えて、メジャーで8位以上に入った場合、追加のポイントが手に入ります。
こちらも第1回より第2回、第3回と獲得ポイントが増えるように設定されています。
それまでほとんどポイントを稼げていないチームでも、第3回でDiv1リーグ優勝→メジャー優勝となると逆転でTI出場がありうるくらいには多めのポイントが手に入ります。
TI予選とワイルドカード
TIの参加チームは全部で20チーム。
DPCポイントで確定する12チームの他に、8チームが出場できます。
まずは6地域それぞれの予選会で6チームが決まります。
これまでのTIではオープン予選、つまり誰でも参加可能な予選を開催していましたが、今回は予選に参加できるチームは限られます。
具体的には3回目のDPCリーグ戦(Div1/2どちらか)に参加していたチームのみが参加可能となるようです。
つまり第3回DPCオープン予選が実質的なTIオープン予選も兼ねる形となっています。
最後の2チームについては最近追加されたルールというのが私目線での認識です。
ワイルドカードと呼ばれているこの枠は、各地域の予選で2位・3位だった全12チームを集めて大会を行い、選ばれるようです。
今どこまで進んでるの?(2022/5/19現在)
現在は[予選→リーグ→メジャー]のサイクルが2周目に入ったところで、現在ストックホルムでメジャーが開催されています。
ロックダウンの影響で参加が見送られた中国チーム4チームと、ビザの取得が遅れ参加できなかった東ヨーロッパチーム1チームを除いた13チームで戦われています。
ストックホルムメジャーの詳細は毎度おなじみLiquipediaをご覧ください。
大会の終盤、明日から3日間は久々の有観客試合となる予定になっています。
オンラインゲームで観客?と思う方もいるかもしれませんが、そこはeスポーツ。その名にスポーツを冠するだけのことはあります。
やはり観客のリアクションがあるのとないのとでは盛り上がりもかなり違うものです。
配信を通してもそれは伝わってきます。
個人的にはやっとこの時が来たかという感じです。とても楽しみです。
当初の予定からの変更点
ここまでDPCの制度について説明してきました。
しかし様々な世界情勢の影響で、予定通りになかなか進んでいないのが現状です。
これまでにあった大きな変更を見てみましょう。
第1回メジャー→中止
コロナウイルスの流行により選手の移動が困難となったため、第1回メジャーは中止となりました。
開催予定地はストックホルムで、この分は第2回メジャーへと持ち越されています。
代わりに開催されたのがリージョナルファイナルと銘打った大会。
これは各地域ごとに、リーグ戦Div1上位4チームのみが戦うプレーオフでした。
メジャーの代わりに、この大会の成績により上位2チームずつにDPCポイントが割り振られています。
東ヨーロッパ第2回リーグ戦→中止
ロシアによるウクライナ侵攻の影響を直接的に受けたこの地域は、ちょうど第2回リーグ戦が開催される頃合いだったこともありリーグ戦開催が見送られました。
その後関係者の尽力もあって、代わりとなるダブルエリミネーショントーナメント+3位決定戦というやや特殊な形式の大会が開催。
一時はメジャー進出枠の選出も絶望視されていましたが、この大会から3チームがストックホルムメジャーへの出場権を得ました。
第2回メジャーへの中国チームの参加中止
これは先ほども触れましたが、中国のロックダウン政策の影響によるものです。
中国では代わりに第1回と同じくリージョナルファイナルが開催され、4チーム中2チームにDPCポイントが割り振られました。
なおこのリージョナルファイナルで優勝したPSG.LGDに入ったポイントは450。
これは第2回メジャーで見ると4位(460)に近いですが若干及ばない程度のポイントです。
かなり多くのポイントが得られたと言いたいところですが、こと中国に関してはこれでも多いか少ないかは微妙なところに設定してきたなという印象です。
現在PSG.LGDは中国国内ではほぼ無敵の強さを誇っており、しかもその中国の競技レベルは世界的に見てもトップクラスに高いと考えられています。
メジャーに参加していた場合4位以上の成績を収めていた可能性は十分にあったことでしょう。
うーん、やっぱりこういう"たられば"はあまり語りたくないですね。
第3回メジャーこそは予定通り18チームでの戦いを見たいところです。
DPCポイント途中経過
さて、最後に現在のDPCポイントを確認しましょう。
なお小数点以下のポイントが発生しているのは、大会中の代理プレイヤーによる参加や、シーズン中の選手の移籍に対してペナルティーが設けられているためです。
前述の通り第2回メジャーが進行中で、中国のみリージョナルファイナルが終わっている、という状況での得点表です。
つまり中国チームだけ若干点数が多めになっているということを少し勘案して見る必要があります。
そうは言っても中国国内の大会をことごとく制覇しているPSG.LGDのTI出場はほぼ決まりと言っても差し支えない状況かもしれません。
なお、最終的なボーダーは840点前後になるのではないか、という独自研究をTwitterに上げている人がいました。
それをもとに考えるなら、上位5チーム以外のTI出場権はまだまだこれからの戦い次第、ということになるのかもしれません。
しかも先ほども言った通り第3回リーグ戦・メジャーはポイントがさらに上がります。
リーグ優勝で500ポイント、メジャー制覇で820ポイントです。合わせてなんと1320ポイント。
そういう意味では第3回リーグ戦に入ってさえいれば、まだまだTI参戦は可能ということになりそうです。
最後に
当初の案では注目チーム紹介という項目があったのですが、それはまたの機会にしましょう。
メジャーでは意外なチームが躍進をしていたりして、なかなか書きたいことは多そうです。
というわけで今回はDPCの仕組みについて解説しました。
そういえばDPCってナンだ!?って言って始めたのに、結局ここまでDPCが何の略なのか一回も触れずに来てしまった気がする…
今さらですが、Dota Pro Circuitです。よろしくお願いします(?)。
というわけで話のオチもかなり浅めに膝下くらいに作ったところで、今回はここまでとしようと思います。
この記事でDPCについて少しでも理解できた、興味を持った、という方がいれば嬉しい限りです。
そして他のeスポーツにはまっていて何かの拍子にここに流れ着いた方は、ぜひ自分が好きな大会のシステムを紹介してほしいです。
私はそういうのを眺めるのも結構好きです。
世界大会の枠は自然と強豪国の多い地域からより多くのチームが参加できるように設計されます。
大会の仕組みを見ることで、同時にゲームごとの世界的な勢力図なんかも見えてきたりして、結構面白いテーマなんじゃないかな、
なんて今思いついたことを付け加えてみたりして。
それではまた。