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つくる理想郷/新しいお祭り


はじめまして

「生きる」ってなんだろう、「芸術」ってなんだろうをテーマに夫婦で芸術家をしています。この数年は茨城県の最北端、北茨城市の山間部の集落そのものを作品にしています。都内からクルマで3時間ほど、何もない、休耕田と耕作放棄地の限界集落。しかし何もないわけはなく、この記事はそこにあるもので開催する新しいお祭りについて書いています。

新宿から北茨城市の集落まで約3時間
これがそのお祭り。無料です。

この集落との出会いは、北茨城市が7年前に「芸術によるまちづくり」をテーマに地域おこし協力隊を募集し、ぼくと妻がそれをきっかけにこの街に移住したときです。
まず最初に市からこの地域・揚枝方にある築150年の古民家の活用を相談されました。そこはお店もないし親戚でもいない限り誰も行かない集落でした。しかし願ったり叶ったりだったので、ギャラリー&アトリエとして半年で改修しました。有賀さん宅だったことから、感謝するという意味も込めてARIGATEE(アリガテエ)と名付けました。

改修中の様子。

古民家を改修しているとき訪ねてきてくれたのが、揚枝方集落に暮らす豊田澄子さん(83)でした。超が付くほどパワフルなお婆さんで、ぼくたちと出会った翌年には、この集落の魅力を次世代に引き継ぐために、自費で50本の桜を植樹しました。それに感動してぼくらもお手伝いするようになりました。市の方でも、地域住人からのアクションに対して、震災の復興支援企業から桜の苗木200本を用意してくれ、集落のみんなと共に桜の植樹をしました。

桜の木を移植中の休憩。

このとき、集落の「景観をつくるランドスケープ」というコンセプトが生まれました。以来この集落の休耕田や耕作放棄地を草刈りしたり、木を切ったり、地域の方々、行政、移住者のぼくら夫婦とが協力しながら景観づくり活動しています。それを「桃源郷づくり」と呼んでいます。今年の10月26日~27日に秋祭を開催するので、せっかくの機会、みなさんに知ってもらうためにこの記事を書いています。

会場は炭窯広場

春の桃源郷の炭窯

名前の通り、ここで炭焼きをやっています。4年前に壊れた炭窯をみつけて、想像しました。炭焼きってどんなことだろう。炭焼きをやりたいと集落の方々に相談したところ、経験者が集まってくれ、ここに炭焼きが復活したのです。炭窯を作ったときに休耕田を埋め立てて広場にしてくれたのがこの公園です。ここに炭焼き師匠の有賀さんとむかしの電柱とトタンで作業スペースの屋根や物置小屋を作りました。

お祭りのはじまり

この炭窯広場には電気も水もトイレもありません。ところが3年前の夏、音楽家の友人Sinsenくんが、発電できるクルマと音響一式を持っている渡辺さんを連れてきて、DJ Kenseiさんと画家のChiyoさんとみんなでパーティーをやりました。作業スペースの屋根がステージになったのです。これはまさかの発明でした。もう一度言いますが、電気も水道もトイレもない炭窯広場がイベント会場になったのです。そして3年前に、第一回目の秋祭りを開催しました。

写真は去年の様子です

桃源郷秋祭26日夜

26日、土曜日は15時オープンします。夕方から音が出ますので、ぜひその前に集落を散歩してください。川や秋の草、森や山、日本の原風景があります。夜はDJ Sinsenの音楽と、地域住人の方々が提供する料理が楽しめます。焚火もあります。地域を醸すをテーマにしたフリーペーパーkamosによるbarも出店します。炭窯広場にテントを張れますので、泊まりも可能です。ただしワイルドキャンプです。基本はDo it yourself、水はご持参ください。トイレは簡易的なものです。

昨年、夜のお祭りの様子

出演者について

このお祭りは、繋がりあった人たちが出演します。子供からお年寄りまでがパフォーマンスで楽しませてくれます。0歳から100歳までが楽しめるイベントです。

豊田澄子with 三味線グループ
お祭りのへッドライナーといえる豊田澄子さん率いる平均年齢80超えの三味線グループ。澄子さんはTV東京の「なぜそこ」で特集され、すっかり人気者でもあります。

初年度の三味線グループ


UJOっ子グリーとたぬきーず
小学生の合唱とパフォーマンスです。遊びに来ていた子供たちが演ずる側に成長していく。ほんとうに嬉しいことです。

たぬきーず


uminoco(ウミノコ)
北茨城市、磯原駅前の自然食レストラン「Pumpkin」のコックさんと仲間が素晴らしい歌声で演奏します。ちなみにパンプキンはライブも楽しめるお店です。ぜひ行ってみてください。(パンプキンHP)

Down Home Blues Band
地元で長く活動するソウルやブルースを演奏するバンド。

CHUB DU(チャブ・ドゥー)
東京で活動する、暖かい歌のロックバンドです。今年新曲をリリースしたので楽しみです。(youtube

徳本萌子
彼女は北茨城市の地域おこし協力隊として10月に移住したばかりの芸術家です。「移動する植物とミシン」をテーマに活動しているので、この日もなにかを展開してくれます。(HP)

コミュニティ・ガーランド
三角形に布を切って紐に繋げて、旗を作っています。社会福祉協議会に声を掛けて頂き、市内のお年寄りサロンを巡回して作ってきた旗が会場を飾ります。

一回で100〜200枚のガーランドがつくられます

子供絵画造形展示
ぼくたち夫婦が、月二回教室をやっている「いそはら幼稚園」の子供たちの作品を発表します。

開催の目的

地方と都市、どちらもが必要だと思うのです。最近ですと、お米不足による値段の高騰、少し前だと、ウッドショック。田舎に行けば田んぼをやる環境はあるのに引き継がれずに休耕田になる、山に木はあるのに産業にならない。どちらも地方と都市を繋ぐ、社会システムの欠落だと思うのです。

だからと言ってすぐに何ができるとかではないにしろ、地方の山間部の現状や課題を知ってもらう機会としても、このイベントは意義があると思います。また観光スポットだけでなくても、有名も無名もなく、上手いも下手も、小さな事が集まって、大きな楽しみや喜びを作ることはできるという提案でもあります。

主催はぼくたち芸術家夫婦、檻之汰鷲(おりのたわし)です。名前には「檻のような社会からアートのチカラで自由に大空を羽ばたく鷲になる」という意味を込めています。いしわたのりお、ぼくの名前を反対から読んで漢字を当てはめました。ぼくたちはコラージュを技術にして活動してきました。コラージュとは異なる素材を組み合わせて予想しなかったものをつくる技術です。そう、おりのたわしの名前もコラージュです。続けるうちに技術が進化して、人との出会いや文化、自然、環境など、なんでも組み合わせて表現するようになりました。

つまり、ぼくたちが日々暮らしのなかで出会いを繰り返す、この集落自体が作品なのです。草、木、風、山、太陽、夜、匂い、音、火、煙、人。つまり「ここにある」自然そのもの。こればかりは美術館にもギャラリーにも展示できません。ですから足を運んで、ぜひこの環境をそのものをご体験していただけたら嬉しいです。またこの集落に2026年度にキャンプ場がオープンする予定もあります。限界集落と呼ばれる地域に広がる未来の可能性をみなさんに共有して、それを一緒に楽しんで頂けたら幸いです。

桃源郷秋祭
2024年10月26日(土)〜27日(日)
26日15時open
27日10時start
入場無料
場所:炭窯広場(地図)
茨城県北茨城市関本町富士ヶ丘


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