関西と東京の笑い ２ ええかっこしぃ
関西の笑いとは 無謀にも思えるがここから始める。
名作「薔薇の名前」ではアリストテレスの失われた著作「喜劇篇」が重要なモチーフの一つだった。また爆笑王と冠された桂枝雀 (故人である) は笑いを
「緊張の緩和」とユニークな理論を語った。大体、先ずもって何か始めるにあたって定義したくなるのは、理論派によくあるパターンである。
自虐とカウンタースピリット
１「関西人のお笑いの際立った特徴は自虐が基本戦略」 私の定義である。
これに
２「江戸お侍的規範、東京権威主義に対するカウンターカルチャー」精神
力学的な捻りが加わる。１の準則である。
ええかっこすんな すこい事やんな
ええかっこしぃ という言葉のニュアンスは標準語には翻訳しにくい関西の子供言葉で、他に、まねしぃ、勉強しぃ…「x x しぃ」と言う言葉がある。 何れも否定で他人を非難する時に発せられ これを言われると関西のお子様なら 己が不徳を恥じ、自ら態度改むるに遅からず…. がお約束である。
関東でも関西でも 人間、誰しも良い恰好をしたい、男前や美人と賛美されたい、外車やスポーツカーに乗りたい、レストランで給仕にステーキを持ってきて貰いたい 遠足の日にはまっさらな靴を履きたい、綺麗なおべべを着てデートしたい 参観日は手を挙げたい (が当てて欲しくない）
そんな 差を付けたい、自慢したい私をストレートに出すのは余りに欲望に
ストレート過ぎて「ちょっと人間として配慮とか深みが無いのでは」
自分だけ抜け駆けする スコイ性格なのですか いけませんねぇ
と言うニュアンスで ええかっこしぃ と周りから囃される。
他人の真似ばかりして、自ら工夫の努力を怠って憚らぬ人は まねしぃ
ご学友のお遊びの誘いを断る「がり勉君」は 勉強しぃ となる
すると、持たざる者にお金持ちが見せつけるような良い恰好をする事が、欲望のまま生きている煩悩の輩、世間を憚らぬ短慮な人と見なされる
一見カッコイイ人、実はカッコワル～イ人なのかも知れない疑念が起こる。
そこで、本来ええ恰好をしたいのだが、非難されないように言い訳を付ける戦術が必要となる。これは仮の姿、地の部分は皆と同じ平民なのですよと
二枚目だけど抜けたところもある （せん ばたろう とかどうか
美人だけど化粧が上手いだけ （と思わせる
カウンタックだけど買い物はスーパー玉手 （そこまでやらんでも
ホテルで和牛ステーキも食べるが祭太鼓のかつ丼も好き （ローカル過ぎ
遠足の前日にさらの靴を履いて、予め皆に見せておく （涙ぐましい努力
つまり一言でいうと自虐の要素を入れると
嫌味な自慢しぃと受け取られずに お笑い風味で平和な市民生活になろうというもの 生活の知恵ともいう（….言いません
これはストレートに「恰好いいだろう、羨ましいだろう、俺は偉いのだ」
と言った単純な権威主義の発露よりも 旧来の権威構造を再構成する知性が必要であり、その様な表現を開拓した人は 実はかなり賢い人と承認される風土が関西には昔からある。お武家様より町民の自助の方が偉いとされる
例をあげると理解しやすい事もある（返って分からなくなる場合もある
お客さ～ん、(相方の) こいつはこんなにバカなんですよ～ という攻撃的なスタイルで笑いを取ろうという芸と（星セント・ルイスを思い出した人 あなたも相当古いです）
僕なぁ昨日なぁ こんな事してもうたんや そら、アホとしか言えんな～ という自虐的スタイルでは、誰も傷けないで笑いを取れる事が違いである。
アホを言っている自分はどうなんだ、自分を傷つけてないのか？ と言うと
「賢くなければコンスタントに笑いを取れるアホは言えない」のは関西人なら小学校の時から学校生活で身をもって実践してきたので当たらない。
,,,, やっぱり 吉本に行くんや