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境界戦機という作品の反省点

 個人的には、出てくるメカの斬新さも相まってそれなりに期待していた作品でした。とりあえず全話見終わっての感想を述べます。どちらかというと批判的なことが多くなると思います。

■作品設定について

 まず導入として「日本が各国の占領下にある」という設定には、今の日本の未来が見えて非常にリアリティがあるなと感じました。これだけ貧乏になって国力の衰えた日本は、いずれどこか大国の属国になるであろうと思っています。中国なのかアメリカなのかはたまた。それはわかりませんが、どちらにしても「すでに独立した国家ではない」という設定がどうも好きなようで見ていました。コードギアスに近いといえば近い設定ですが、それに比べるとちょっとだけライトなのかなと感じます。
 この設定にまず一つ難癖をつけるとしたら、「分割統治が細かすぎた」ということです。中国とアメリカくらいであれば十分許容できましたが、そこにオセアニアとロシアが入ってくる。可能性としてないわけではありませんが、この細かすぎる分割がまずマイナスだったと思います。そもそも小さな島国である日本をここまで細かく分割統治することに何のメリットがあるのかということです。ぶっちゃけ成り立ちません。だったら最初から「各国の勢力争いの土俵」くらいの割り切り方をしてほしかったです。一部では支配当地のような描写がありましたが、一部ではある程度の自治が残っている。なんかこの中途半端さがいけない、やるならトコトン支配下に置くべきであろうと思います。そこで下手にワンオフのアメインを急に出して主人公に乗らせて反抗の狼煙を上げるのには、ちょっときっかけとして弱すぎます。やるんだったら、無人機に対して圧倒的な強さで、孤軍奮闘するくらいがよかったでしょう。そしていずれ八咫烏と合流、そのくらいがよかったのかなと。

■登場人物について

 次に登場人物です。はっきり言うと「印象に残っているキャラがほとんどいない」ということです。主人公3人も全体的に主張が弱く、もっと強い日本への執着もしくは敵対国に対する憎悪が欲しかったです。「焼き物の復興? よそでやれ」って感じです。せめてガシンの「親の敵」という部分が、ゴーストではなく人に対して向いていればよかったかなと。
 そして、割と多めにキャラクタが出ましたが、これにしても「それぞれの役割が薄すぎる」ということです。多くし過ぎたため、本来であれば一人で十分な役割が分割されてしまい、「こいつ何してんだっけ?」となることが多かったです。無人機が戦争の主役ということで、それも相まって死者の少ない作品でしたが、「必要な死は入れるべき」というのが持論です。というかガンダムで学んだといえばそれまでですがw メカニックに関する部分で話しますが、無人機という設定がこの作品を最も駄作にしてしまった要因だと思っています。人を殺すでもなく、他国の無人機と撃ち合いをする。「ゲームじゃん」と。まぁここではこのくらいにしておきます。戦争が題材なのに、あまりにも奇麗すぎるストーリーなんです。なぜ死なないなぜ殺さないで溢れています。2期になってアモウがちょっとそうなりそうな感じもありましたが、結局そうはなりませんでした。あとね、やっぱ建てたフラグはちゃんと建築すべきなんですよ。あそこは恐らく視聴者総ツッコミだったと思います。てかジェルマン必要だった?
 
■メカニックについて

「逆関節だー!」と、久しぶりに興奮しましたが、そこまででした。せっかく斬新なデザインだったのに、その個性を生かしきれないまま終わったのが非常に残念です。量産機なんかも非常に魅力的で、プラモは結構買いました。てかやっぱり有人機にすべきだったんです。これが最大のミスでしょう。この設定になぜしてしまったのかわかりません。なんとなくですが「最近の流行りは無人だし、未来の戦争ならそれっぽくなるだろうからそうしとこうか」ってくらいのノリだったのかもしれません。その読み間違いでしょう。結局戦争は人がやるものです。血が通わない戦争にリアリティはありません。何も人が大勢死ねばいいというわけではなく、「戦争はそういうものである」という大前提を否定したのがいけないでしょう。無人機を後ろで操るだけ、これが戦争を「ただのゲームにしてしまった」んです。無人機ですから各国にエースもいなけりゃ中二心をくすぐるような画期的な戦闘もありません。日本という土地を使った陣取りゲームをしているだけになりました。ここをもうちょっと特化できれば面白い話になっていた気がします。ガイたちAIがいたことで無人機に対して無双する結果となりましたが、身もふたもない言い方をすれば「CPUや初心者相手にイキっているゲーマー」みたいなもんです。いっその事、ケンブたちも無人機にしてAI合戦にしときゃよかったんですよ。

■ストーリーについて

 上記の話を総合したものとなりますが、設定をうまく活かせていない、戦争にリアルさがない、キャラがたっていないなど、とにかく全部中途半端でした。「何と戦っているのか」というのが非常にぼやけた作品でした。アメリカなのか中国なのかロシアなのかオセアニアなのか。最初からこれだけ色とりどりの敵役を出したのもまずいです。的がバラバラなんです。主人公たちがいずれかの国に対して何らか個別の恨みでもあればよかったのですが、それも特になし。最初の頃は少し理解がある風に見えたブラッドも、最終的に変な戦闘狂みたいな扱いになって、最後そうなった理由もなんか中途半端。あれで「いい奴じゃん」とはならないでしょう。敵も味方もどっちつかずなんです。特にこれといった巨悪も存在せず、また主人公たちもこれといった信念がない。誰もヒーローにしない、だれも悪役にしない。ツイッターで書いたのですが「みんな仲良くお話を終わらせましょうねー」という感じ、現代の訳の分からない公平さがあったことが最大の欠点です。この作品こそまさしく「やおい」なんです。「山なし、オチなし、意味なし」なんです。教訓も何も残らない残念な作品として終わったと思います。


 こんな感じになればそりゃプラモも売れませんよw 独特のフォルムが好きで何個かは買いましたけど、大ヒットに至らなかったのはやはり元の作品の出来の悪さでしょう。結構期待して見始めたんですが、非常に残念です。サンライズのロボット作品でこれほど否定したのはガンダムAGE以来ですw やりようがあっただけに本当に残念です。戦争というものを題材とする以上、そこには必ず人の死や非常な現実というものがついて回ります。それが最後までありませんでした。ちょっとだけ子供たちが殺されるという現実もありましたが、ストーリー上無理矢理作った現実という感じでした。
 私は戦争を題材にする場合、人の死に方に上手い下手はあると思っています。何らかの意味を持たせるか、それとも意味もなく理由もなくただ残酷に殺される。戦争という現実を突きつけるためにはどちらも必要です。それを描けなかったのが敗因かもしれません。そこについてはやはりガンダムは上手いと思いますし、最近では鉄血のオルフェンズはその「死」というものが非常によく描けた作品だと思っています。一部ではオルガばかりが引き合いに出されますが、あの作品の本質は別にあります。あの作品は岡田麿里脚本の傑作だと思います。

 とまぁ、好きな人もいるでしょうけど、私にとっての境界戦機はこんな感じでした。

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