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山種美術館「福田平八郎×琳派」展で花鳥風月な休日
11月下旬、山種美術館で「特別展 福田平八郎×琳派」を見てきました。
この展覧会については、noteで鑑賞レポートをいくつか読ませていただきました。今さら私が書き加えることもないかな、と思います。しかも、私は美術鑑賞にはそれほど慣れていないので、的確なことを書けそうにありません。
なので、これからご覧になる方の参考にはならないかと思いますが、日本画鑑賞の初心者なりに、その場で感じたことをあまり深く考えずに書いてみました。
この展覧会を見ようと思ったのは何かで筍の絵を見て、実物を見てみたいと思ったからなのでした。福田平八郎の作品です。
まず、私は「福田平八郎」って誰?と思いました。
明治から昭和を生きた日本画家だそうです。この展覧会は福田平八郎の没後50年を記念して開催されたとのこと。
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美術館などに置いてある厚手の広告チラシのことを「フライヤー」と呼ぶことは、最近になって初めて知りました
ニョッキリと伸びる筍が2本、力強いではありませんか。
こういう筍を贈られて、えらく迷惑したことがあります。
朝早く起きて崖を落ちそうになりながら筍掘りをしたという長大な苦労話と共に、ドヤ顔で渡された2本がちょうどこんな感じでした(筍というより、もはや竹)。
大きすぎて茹でるのに苦労しました。食べてみたら、恐ろしくエグかったです。筍のてっぺんが青々としてしまうとエグみが強くなることは知ってはいました。しかし伸びてしまった筍の味とはこんなに凄いものなのか。ひょっとしてこれは嫌がらせだったのでしょうか。
どうでもいいことに話がそれました。
福田平八郎は、琳派から大いに影響を受けたそうです。なるほど周りに生えているはずの竹を省いた構図は思いきりが良い感じがします。
他の絵も、日本画というより、グラフィックデザインを見ているような。芥子の花や、波や、桐の枝に雀が止まっている絵など、おしゃれです。お菓子のパッケージにこんな絵がついていたら、箱目当てで買ってしまいそうです。
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山種美術館のサイトより
残念ながら、この展覧会では一枚を除き撮影禁止でした。見出しの写真は、唯一撮影OKだった福田平八郎の作品です。この写真を見出し画像に使った人は多いみたい。大勢とダブって紛らわしかったかな。
さて、福田平八郎が影響を受けたという「琳派」の作品のエリアに入りました。
なんか、世界が一変しました。
有名画家の作品、という先入観も勿論あるのですが、たぶんそれだけではないと思います。作風とか技法とか画材とかの違いによるものなのか、そもそも世界観が違うのか、私にはよくわかりません。
福田平八郎の絵は、現代の生活空間にも割と違和感なく馴染みそうですが、俵屋宗達や坂井抱一といった古典的な作品は、やはり格調の高そうな空間に飾らないと似合わない気がします。
俵屋宗達が描いたという屏風は、がっちりとした構図に目を持っていかれますが、よく見ると木の根元に秋草が繊細に描かれていて、離れて見ても近寄って見ても見応えがあります。
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ミュージアムショップで購入したポストカード
線に沿って折ると屏風みたく立てられます
酒井抱一の絵は、秋草の向こうに見える月が、色といい形といい独特で印象に残ります。銀が使われている場合には時間が経つと黒く変色することもあるらしいのですが、この絵は最初から黒い色で描かれているそうです。
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酒井抱一 《秋草鶉図》
ちなみに、美術展鑑賞後に喫茶スペースでお茶をいただいたのですけれど、私が選んだ和菓子はこの絵をイメージしたものだそうです。
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俵屋宗達の作品にも、こんな月が描かれていました。
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これは山種美術館公式のX(旧Twitter)から拾った画像です。
月をこういう形で黒く描くというのは何かの様式なんでしょうか(たったふたつの例だけで「様式なんでしょうか」と言うのもあまりに短絡的ですが)。
夜に響く鹿の鳴き声は秋を象徴するもの。月と鹿の組み合わせは、和歌や絵画で好まれたモチーフなんだそうです。鹿ってどういう声で鳴くんでしょうね。私は聞いたことがありません。
俵屋宗達の鹿の絵はもう一枚。
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《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》
これは、山種美術館公式のInstagramから拾った画像。鹿の絵に西行の和歌が添えられているのだそうです。
俵屋宗達の動物の絵って好きです。犬の絵もありました。
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これもネットから拾った画像
俵屋宗達の描く犬って、単に可愛いというのではなくて、なんか可笑しみが漂っているような。
以前、松濤美術館で犬の絵ばかり集めた展覧会を見たことがあるのですが、この時にいちばん気に入ったのも俵屋宗達の描いた犬でした。
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※山種美術館とは何の関係もありません
なんだかんだ言って私はカワイイものに引かれてしまいますが、たまにはこういう花鳥風月の優美な絵に浸るのも良いな♡と感じた休日でした。