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note写仏部体験入部中〜その石像みたいなものはなに?
(全部で2,000字ちょっとです)
先月末、商店街近くの菩薩像を写仏しました。
ここには5体の石仏が鉄筋コンクリートの社に安置されていたのですが、その手前に置かれていた石像みたいなものも、実はたいへん気になっていました。
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田中さんが建立したんじゃなくて
田んぼの中にあったのが名称の由来
(所在地:東京都渋谷区元代々木町24-4)
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ぱっと見て思ったのは、この中にはずいぶんいろいろなものが彫られている、ということでした。
真ん中に仏像らしきものが合掌しています。よく見ると他に手が4本あり、何かを持っています。お顔は少し険しい表情。目が3つあるようにも見えます。これはどなた?
このお方は何かを踏みつけています。劣勢の覆面レスラーのような顔をしていますが、尻尾が生えているところをみると人間ではなさそうです。
その下には動物のようなものが。3匹のしぐさから、見ざる・聞かざる・言わざるの「三猿」と思われます。それがここにある意味は何なのでしょうか?
鳥でしょうか。鳩サブレーのような形のものが左右対象に配置されています。上の方にも何だかわからないものが彫られている。なんか、情報量が多いです。
現地の説明板によると、これは「庚申塔」なのだそうです。享保10年(1725年)につくられたとありますから、およそ300年前のものということになります。こんなに古いものがあまり傷むこともなく残っているとは貴重です。きっと地域の人たちに大切に守られてきたのでしょう。
「庚申塔」と言われても私には何のことだかさっぱりわかりません。Googleで調べてみました。
庚申信仰はもともとは中国の道教が起源で、そこに仏教や日本の民間信仰が複雑に絡み合って人々のあいだに根づいていったそうです。
60日ごとにやってくる庚申の日は、寝ている間に体の中から3匹の虫が出てきて、天帝にその人の悪い行いを告げに行くと信じられていました。それを聞いた天帝は、罰としてその人の寿命を縮めてしまいます。眠らなければ告げ口する虫が体から出てこられないので、その夜は村人たちが集まって一晩中寝ずに過ごし、夜明けを待ちました。
その風習を「庚申待(こうしんまち)」といい、そのグループを「庚申講」といいます。そして庚申講が、庚申待を重ねた記念に建立したのが庚申塔なのだそうです。
目黒区のサイトにあった説明がわかりやすかったので、お借りすることにします。ご参考までに。
そういえば、庚申の夜は徹夜するという話、最近どこかで聞いたような…。思い出しました。大河ドラマです。NHK『光る君へ』の中にそんなエピソードがありました。平安時代にはすでに貴族の間でこのような風習があったようです。それが次第に庶民にも広がっていき、江戸時代に最も盛んになったとか。
庚申講は、最初は身を慎むための集まりだったのが、だんだん本来の目的はどうでもよくなって、情報交換や楽しい飲食の場になっていったそうです。
庚申塔にはいろいろなデザインのものがあるらしいのですが、病魔を追い払うという青面(しょうめん)金剛像や謹慎の態度を表すという三猿を彫ったもの(庚申の「申」は「さる」ですしね)が多いそうです。
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改めて、田中地蔵の庚申塔に何が彫られていたのか見ていきます。
中央が青面金剛。体は青く、手は2〜6本。3つある目は赤く、怒りの形相。しばしば蛇を体に巻きつけています。その怖い見た目から病魔を退散させる力があると考えられていました。手には剣や弓矢、錫杖、法輪などを持っています。
この庚申塔では手は6本。体に蛇を巻いている感じはありません。色彩は石の色そのままです。
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青面金剛に踏まれているのは邪鬼。(邪鬼っていろんな仏像に踏みつけられていますね。持国天とか、増長天とか)。
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邪鬼の下には三猿。
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鳩サブレーみたいなのはにわとり。庚申塔に彫られている理由は、夜明けを待っているところに朝が来たことを告げるものだからでしょうか?でもあんまり鶏には似ていなくて、やっぱり私には鳩サブレーに見えてしまいます。
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※鳩サブレ情報、追加しました
そして空にあるのは日と月らしいのですが、私の目には海老と蛇に見えます。
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庚申講の風習は廃れてしまったけれど、その名残をとどめた庚申塔は今も地域の人々を見守っています。
街角のお地蔵さまに引かれて、思いがけず庚申信仰についても知ることになりました。庚申塔、みなさまのお近くにはありますか?
今回はこの庚申塔を写仏しました。
こうした民間信仰の像が写仏の対象になるかは微妙かもしれません。でも、庚申信仰が定着する過程で仏教の要素が入り込んでいることから、可と考えました。
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「筆文字サインペン」で描きました
最後に私事になりますが、写仏部に体験入部し大体雰囲気がわかりました。正式にこちらに加わりたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。