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【読書メモ】『赤毛のアン』再読中⑦ギルバートは頼れる医者

 アンと結婚したギルバートはお医者さんです。
 最初に開業したのはフォー・ウインズという辺鄙な港町。アンとギルバートの新婚生活もこの地からスタートしました。新居の一室が診察室です。
 電話一本で往診にも行きます。なんか、すごく忙しそうです。
 よそからやって来た新米医師が信頼を得ているのは、腕がよいことに加え、もともとこの地で診療所を開いていたギルバートのおじさんが引退することになりそこを引き継ぐことになった、という事情もあるでしょう。
 今の日本だと、内科とか小児科とか整形外科といった診療科ごとにクリニックが分かれていますけれど、ギルバートの場合は歯科以外全部診る感じ。さすがに、小さな診療所では対応できない患者は大病院につなぎますが、病気だけでなく怪我の手当や分娩介助など幅広く対応しているようです。昔のお医者さんというのはそういうものだったのでしょうか。調剤を自宅でしていると思われる描写もどこかにありました(どこに書いてあったか忘れてしまいましたが。短編だったかな?)。
 研究熱心で最新の治療法も積極的に吸収し、臨床に生かします(上の世代の医師は『切ったりはったりの新奇なやり方』に偏見があり、ギルバートのおじさんは虫垂炎の手術でさえ反対。そんな時代の話です)。
 治療のことで頭がいっぱいになるあまり、妻のアンとの間にすきま風が吹きかけたことも。
 子供が産まれて手狭になったこともあり、後にグレン・セント・メアリという町に移転。ギルバートは大きな家で大家族を養いながら地域の医療に貢献します。

 「ギルバートが医師であること」が物語の展開の上で割とよく生かされているのが、シリーズ第5作『アンの夢の家』です。
 ネタバレを避けるため詳しくは書きませんが、ギルバートがある男性を診察したことをきっかけに、周囲の人物の運命が大きく動き出すのです。

 そんなギルバートの仕事ぶりは、この作品以降折に触れて書かれています。 
 その一端を、宮沢賢治っぽくまとめてみました。

雨にも負けず
風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けず
呼ばれれば深夜でも往診に行き
どんなに多忙でも
決して断らず
いつも患者ファーストでいる
毎日お手伝いのスーザンが作る料理と
残業で遅くなった時は夜食のパイを食べ
最新の医学知識を
自分も身につけるべく
よく見聞きしわかり
それで患者が助かる可能性があれば積極的に試してみる
最初は小さな家に住み
後に「炉辺荘」という大きな屋敷に移り
東に病気の子供あれば
行って診察してやり
西に産気づいた妊婦あれば
行って赤子を取り上げ
南に死んだ人あれば
命を助けられなかったと落ち込み
北に医学学会あれば
泊まりがけで出席し
時には妻のアンから「あなたのような現代式の医者は切れば血の出る生身の人間で実験しすぎると思うの」などと言われたりもするが
みんなから「若先生」と呼ばれていた頃から
地域の人々に頼りにされてきた
そういう医者なんですよ
ギルバートって

 こんな優秀なお医者さんが近所にいたら「かかりつけ医」はここにしたい!

 で、ここから先は『赤毛のアン』とは全く関係のない話でございます。「そんな話なんかどうでもいいよ」という方、ここまで読んでくださりありがとうございました。



 これまで私はいろんな医療機関のお世話になりましたが、必ずしも優れた医師ばかりではありませんでした。
 中には「えっ」という人も。そういうヘンな医者にかかってしまった腹いせに、〈私がこれまで出会った困った医師〉を3人ばかりご紹介したいと思います。

①突然の長期休業
 ある日テレビをつけたらローカルニュースをやっていて、私が通院中のクリニックが画面いっぱい大写しに。
 何事かと見ていると、いつもお世話になっている皮膚科医が逮捕された由。脱税の疑いで税務調査が入ったところ激しく抵抗したとかで、公務執行妨害でお縄になったそうです。
 しばらくクリニックは閉まったまま。埒が明かないので通院先を変えました。

②待ち時間ゼロ、60分診療
 というと、丁寧に診察してくれると思うでしょう。違うんです。
 診察が始まって、レントゲンを撮ったりしているうちはよかったのですが、そのあと高齢の整形外科医がやおら思い出話を始めたのです。
 「昔、この辺りは砂利道で…(以下略)」などという治療とは関係のない、はっきり言って退屈な話が延々と続いて終わる気配がありません。もう夕方だし早く帰って晩ご飯作らなきゃいけないのに、困りました。先生は喋りたいだけ喋って気が済んだのか、日が暮れた頃にようやく解放してくれましたけども。
 そういえば、クリニックに入った時にちょっと変だなとは思いました。
 この整形外科には前にもお世話になったことがあったのですが、その時は待合室が人でいっぱい。待ち時間がすごく長かったのです。昔は理学療法士が何人もいて、大勢の患者がリハビリを受けていて、大賑わいでした。だいたい、整形外科ってどこも混んでいるものです。久しぶりに診察を受けて、なぜ空いていたのか理由がわかりました。

③謎の処方
 今は治っていますが、私は長い間メニエール病という耳の病気を患っていました。内耳の浮腫により神経が圧迫され、難聴になったり激しいめまいが頻繁に起きたりします。なので、定期的に耳鼻咽喉科に通い、検査や投薬を受けていました。
 ある時、主治医が「今日からコレステロールを下げる薬を出します」と言いました。
 「はあ?」と思いました。私は健康診断でのコレステロール値はむしろ低い方で、内科的にはこれ以上下げる必要は全くありません。でも、めまいの予防のために服用すべし、と医師は言うのです。
 へー、コレステロールの薬にはそんな効果があるのか、と思いながら処方箋を調剤薬局に持って行くと、薬剤師にびっくりされました。なんで耳鼻咽喉科で抗コレステロール薬を出すのか理解できなかったようで、私の目の前で主治医に電話をかけて問い合わせていました。
 後に数ヶ所、違う薬局に処方箋を出してみたのですが、どこも反応は同じでした。
 抗コレステロール薬でめまいが予防できる、というのはあの医者独自の説だったのか。当時私はまだインターネットでものを調べることができませんでした。後にスマホを持ってからめまいの治療について自分なりに調べてみたのですが、その医師が言っていることの根拠はわからないままです。動脈硬化がある人はめまいを起こしやすい、という傾向はあるみたいですが。
 医師の指示通りコレステロールを下げる薬を飲み続け、悪玉コレステロールの数値は下限を大きく超えるくらいまで減りました。
 でもやっぱりめまいは起きていました。

 スタチンは本当にめまいに効くのか、効くとしたらどういう機序なのか、もしご存知の方がいらっしゃったら教えて下さい。

おしまい

 途中から『赤毛のアン』とは関係のない話になってしまう境目に、いつきさんの賑やかし帯を入れてみました。

いつきさん、お世話になってます♡

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