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梅雨入りが早いと梅雨は早く明ける?

 今年(2021年)は梅雨入りが早いですね。この記事を書いている時点でまだ5月ですが,続々と梅雨入りしていっています。気象予報士の資格を持っていると,天気予報についていろいろと聞かれることがありますが,自分で気象観測して予報しているわけではないので,基本的に気象庁が言っていること以上のことは分かりません(笑)。今回は「梅雨はいつ明ける?」と聞かれたのでちょっとデータを調べてみました。


 僕が住んでいる九州北部地方のデータを使って確認してみます。梅雨入りの平年値は6月4日ごろです。過去(1951年から)の梅雨入り日を1週間ごとに区切ってカウントしたものが下図です。

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 ばらつきは結構ありますが,だいたい6月の1週~2週目には梅雨入りしています。5月15日ごろに梅雨入りした今年は特異的に早いということが分かります。
 

 梅雨明けについては下図です。平年値は7月19日でその前後1週間ということが多いようで,7月中にほぼほぼ梅雨明けしています。

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 早く梅雨に入ったら,早く明けるのでしょうか。横軸に梅雨入り日,縦軸に梅雨明け日をとったグラフと梅雨入り日を横軸,梅雨の日数を縦軸にしたものが下図です。

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 入り日と明け日には関係性は見えず,梅雨入りが早いほど,梅雨の日数が長くなっています。これらのデータから,梅雨入りが早かったら,梅雨明けも早いわけではないということが分かります。

 雨量との関係はどうでしょうか。梅雨の日数と,梅雨期間中の雨量の平年比(100%が平年と同じ)をプロットしたものが下図です。これは当然ですが,梅雨の日数が長いほど雨量は多くなっています。

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 梅雨入り日と梅雨明け日と雨量の関係が下図です。

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 入り日と雨量はあまり関係がありませんが,明け日と雨量は,明け日が遅ければ雨量が多くなっています。梅雨末期には前線の活動が活発となり大雨が降りやすいのですが,その通りのデータとなっています。

 ではその他の気象要素はどうでしょうか。日照時間と気温についても同様に見てみたいと思います。ただし,日照時間と気温は梅雨期間のデータとしてまとめられていませんでしたので,代わりに6月のデータを用いました。


 梅雨入り日の6月の日照時間をプロットしたものが下図です。

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 当然梅雨入り後は雲が空にあることが多くなり日照時間は減ってきますので,梅雨入りが早ければ,6月の日照時間も少なくなります。
 

 気温についての同様のプロットが下図です。

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 6月の平均気温は梅雨入りが早いほど高い傾向にあります。梅雨前線は北側にある冷たい空気と南の湿って暖かい空気がせめぎ合ってできるので,梅雨になるということは南側の空気の影響下となり気温が高くなるということです。

 梅雨入りが早くなると梅雨明けも早いというわけではありません。梅雨の期間が長くなりますので,農業の視点で見れば特に日照時間の低下は大きな問題となるでしょう。

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