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はじめての「はじめてのトランスジェンダー」その17  Q25 トランスジェンダーの権利擁護をする人は性暴力に無関心ではないでしょうか

こんにちは。
はじめての「はじめてのトランスジェンダー」その17です。

はじめてのトランスジェンダーというサイトがありますね。

こちらのサイトはトランスジェンダーについて知りたいという人に紹介されることが多いサイトです。
しかし、このサイトには非常に多くの問題点が指摘されていて、トランスジェンダーについてはじめて学ぶ人に対して非常に不誠実な内容となっています。
それをなるべく丁寧に説明していきたいと思います。

今回は Q25 トランスジェンダーの権利擁護をする人は性暴力に無関心ではないでしょうか について見ていきます。


1.その関心は「女性の性暴力被害」への関心ではない

質問への回答の全文を見てみます。

「Q25 トランスジェンダーの権利擁護をする人は性暴力に無関心ではないでしょうか

宝塚大学看護学部の日高庸晴教授がLGBTQ+当事者を対象に2019年に行った調査(有効回答数10,769人)では、トランス女性の57%、トランス男性の51.9%が性暴力被害経験を有しました。被害を受けても安心して相談できる環境が少なく、弱みにつけこまれやすいなど、トランスジェンダーにとっても性暴力被害は重要な課題です。安全性を理由としてトランスジェンダーを排除しようとする動きが国内外で増加していますが、イギリスにおけるLGBT団体によるDV/性暴力被害施設への調査では、支援者たちは安全性対策は日常的にとりくんでおり、トランスのサバイバーを受け入れた経験を肯定的にふりかえっていました。日本でも、DV/性暴力被害者支援に関わる支援者たちから「女性の安全」をトランスジェンダー排除のための大義名分としないよう声があがっています。」

この回答ではある誤魔化しが行われています。

「トランスジェンダーの権利擁護をする人は性暴力に無関心ではないでしょうか」と質問する人は何を聞いているのでしょうか?
その質問者の意図は、
「トランスジェンダーの権利擁護をする人は『トランス当事者の受ける』性暴力に無関心ではないでしょうか」というものでは無く

どちらかというと「トランスジェンダーの権利擁護をする人は『女性が性暴力被害を恐れる発言をしたら責めるし、性暴力被害を恐れるのは差別だと言うし、女性が受ける』性暴力『被害』に無関心ではないでしょうか『?そのような人たちの求める仕組みでは女性の安全は十分に保障されないのではないでしょうか?』」というものではないでしょうか?

「あなた達は女性の受ける性暴力被害に無関心ですか?」と聞かれて
それに対して「わたし達はトランスの受ける性暴力被害に関心があります」と答えている訳です。

それならばやはり女性の受ける被害には無関心、
少なくとも回答できないような現実がある、ということなのでしょう。


2.自分の被害に関心があることと、他者の被害に関心があることは別問題

サイト運営者は
「トランスジェンダーにとっても性暴力被害は重要な課題です。」
「トランスのサバイバーを受け入れた経験を肯定的にふりかえっていました。」と、トランスの性犯罪被害に対する関心と活動をアピールしています。

ですが、これらは「トランスの性被害への関心」です。
トランス当事者やアライがトランスの受ける性被害に関心があるのは当たり前です。

でも、それは性被害一般に関心がある、女性の性被害に関心がある、という証明にはなりません。
どちらかと言うと自身の被害者性を強調して同情を買うような言葉遣いに見えます。
トランスが性被害を受けることが多いのが嘘だとは思いませんし、
それは解決すべき問題ですが、
「トランスも女性もどちらも性被害が多く、どちらも解決すべき」
という方向に持っていくべきではないでしょうか?

事実、Q25の回答の中で女性の性被害について触れないこと自体、
女性の性被害に対する無関心を表しています。


3.実際に性暴力被害者を軽視する発言が多くなされている

実際、「トランスジェンダーの権利擁護をする人」によって性被害を軽視する発言は多くなされています。

特に性犯罪被害を被害者個人のメンタルの問題として位置付ける発言は非常に多いです。

性被害に怯えるのはカウンセリングで解決

レイプされて傷つくのは思い込み

性犯罪被害者は医療マター

(アカウント凍結のため、スクリーンショット貼り付け)

性犯罪者に遭った人がやるべきことはカウンセリングを受けること

(鍵アカウントになったため、スクリーンショット貼り付け)

痴漢被害を恐れる人は精神的外傷を利用されている

といった感じです。
性被害は個人がカウンセリングなどの精神的ケアを受けて解消すべきものであり、性犯罪を防ぐような仕組みを作るよう社会に向けて訴えるべきではない、
というメッセージを「トランスジェンダーの権利擁護をする人」達が非常に熱心かつ頻繁に発していることが分かりますね。

そして、大事なポイントが、これらの発言に対して同じく「トランスジェンダーの権利擁護をする人」達からの反論や批判が行われていないという点です。
「トランスジェンダーの権利擁護をする人」達のコミュニティの中で、
女性の性犯罪被害は個々人の問題に過ぎないという位置づけは
容認されている訳です。

この個人のメンタルの問題と位置付けることで見えなくなるもの、
それは性犯罪を発生させないための防犯の仕組みづくりの問題です。
そもそもフェミニズムとは「個人的なことは政治的なこと」というメッセージと共に発展してきました。

性犯罪者が犯罪を行うような状況、女性が性被害を受けるような状況、
それらは「個人的」なものではなく、
そういう状況を作る社会があり、その社会を変えるために政治を動かす、
そういうことを繰り返して社会を変えてきました。

そして、実際性犯罪は圧倒的に女性に対して行われるものです。

それを社会の問題として取り組まず、
被害者個人の問題に矮小化すれば、
女性が性被害者になる社会や、性犯罪を認めるレイプ・カルチャーは維持されます。

「トランスジェンダーの権利擁護をする人」達の全員がそうだとは言いませんが、
やはり全体として女性の受ける性被害に無関心なコミュニティを形成していると思います。


4.性暴力被害女性の居場所を奪う運動がある

こちらはカナダの女性向けレイプ被害者シェルターです。
トランス女性のシェルターへの入居を拒否したところ、
どうなったでしょうか?

玄関前にネズミの死体が置かれ、窓やドアに落書きがなされました。
TRANS WOMEN ARE WOMEN
K*LL TERFS
F*CK TERFS などと言った内容です。

レイプ被害者女性のシェルターに向かって「F*CK」と書き込んだのです。

なおカナダでは実際、トランス女性による女性用シェルター内でのレイプ事件も起きています。

トランス女性の入居拒否は決して理由なきことではなかったのです。

ここで行われる「F*CK」はまさに現実味のある性的な脅迫として機能することでしょう。

日本でも港区が「トランスジェンダー女性を女性と表現しないのは、港区の男女平等と多様性推進の根幹に関わる」という批判を行い、東京強姦救援センターを助成事業から外しました。

トランスジェンダーの人権のためという理由付けで性暴力被害女性の居場所は実際に奪われているのですね。


5.DV/性暴力被害者支援に関わる支援者からトランスジェンダーを女性スペースに入れないよう声が上がっている

「DV/性暴力被害者支援に関わる支援者たちから「女性の安全」をトランスジェンダー排除のための大義名分としないよう声があがっています。」というのが具体的にどの団体なのかは分かりません。
またここでいう「排除」が何を意味するのかも問題でしょう。

「トランス女性だから性暴力被害者を支援しない」と言う意味の排除ならば問題ですが、
「トランス女性だから性暴力被害女性用シェルターに同居できない、他の女性とは別の場所を用意する」という意味ならば、
認める人の方が多いのではないでしょうか?

また「DV/性暴力被害者支援に関わる支援者」として40年間活動し、
女性もトランス女性も支援してきた東京・強姦救援センターから
女性専用の空間を守るように声明が出ています。

トランス女性も性被害から守られるべきなのは言うまでもありません。

しかし、その方法として
「女性スペースの利用」以外の手段はないのでしょうか?
目的と手段は別に議論しなければならないと考えます。


6.まとめ

以上のことから以下のことがいえます。

・「性暴力被害は重要な課題」といいつつ、女性の被害については語っていない。
・トランスの被害に関心があることは女性の被害に関心があることを意味しない。
・女性の性被害を個人的問題に矮小化する発言が多い。
・女性の性被害者シェルターに性的な脅迫を行っている。
・トランスジェンダー排除というときの「排除」の意味が曖昧。
・性暴力被害女性の居場所を奪う運動が行われている。
・「DV/性暴力被害者支援に関わる支援者」が女性専用の空間を守るように声明を出している。

Q25については以上です。

目次はこちら
はじめての「はじめてのトランスジェンダー」目次|ヘイトを許さない一市民🐸人権を相対化する改憲に反対|note

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