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【心地よい暮らしの照明術】#5 美しい天井をつくる
最近の住宅は一戸建てもマンションもダウンライトばかりです。かつて一世を風靡した蛍光灯のシーリングライトは姿を消し、今はダウンライトが主役です。
小さな光源から発する光は、部屋中を明るく照らすには向いていません。明るくするには、沢山のダウンライトで天井を埋め尽くすことになります。
これまでの住宅の照明といえば、なるだけ効率的に明るくする照明計画がほとんどでした。高効率のシーリングライトは部屋中を隈なく明るくするには最適です。
ダウンライトで同じように明るくしようとすれば、天井に沢山の穴を開けることになり、昼間は穴だらけ、夜になるとその穴の数だけ天井に眩い光が見えるようになります。
家は一日の疲れを癒す大切な場所でもあるはず。利便性や効率性を重視した空間よりも雰囲気がよくリラックスできるような住まいの方が何倍も心地が良いのではないでしょうか。
海外のインテリアを見てみると違いがよく分かると思いますが、天井に無数のダウンライトが埋め込まれた住宅は案外少なく、天井にある照明の数が少ないことに気付くと思います。
代わりに壁付照明やフロアスタンド、テーブルランプといったものを複数置いてあり、日本でもハイクラスのホテルでは以前からそのような照明計画がされています。
日本の住宅の天井高は2,400〜2,700mm程度。それほど高くないために照明からでるグレアという不快な光が目に入りやすく、気付かないうちに家の中でストレスを感じた状態になっているのではないでしょうか。
ホテルが家よりもリラックス出来る理由は案外、照明の違いによるところも大きいのかも知れません。フロアライトやテーブルランプには電球を覆うシェードがあることでグレアを防いてくれます。
天井についた照明よりも、手元に近い方が見やすく便利で、グレアによる眩しさも感じることもありません。また、近くにあることで光が弱くても充分に明るく感じます。そのような室内は落ち着いた雰囲気と合わせてリラックス効果も高くなります。
夜が長い北欧諸国では照明は特に大切です。家にいる時間が長い北欧の人々は照明やインテリアへの関心が高く、デンマークは灯りの文化が最も発達している国といっても過言ではないでしょう。
1874年創業のデンマークの照明メーカー、ルイスポールセンはグレアフリーをテーマに、1920年代には近代照明の父といわれるポール・ヘニングセンと共同でPHランプを発表するなど世界中の照明に大きな影響を与えています。
そんなルイスポールセン社では、照明セミナーなどを通じて以前から住まいの照明にも多灯分散を推奨されています。
日本の住宅も少しづつデザイン性が求められるようになってきましたが、照明についてはまだまだ正しく認知はされていないように感じます。
機能や効率も重要かもしれませんが、人の暮らしの中でもっとも大切なことは暮らしに心地よさや愛情を感じることではないでしょうか。情報やモノが溢れる時代だからこそ本質的なものの大切さがわかるようになっていくのだと思います。
ノイズのないすっきりとした美しい天井を見ると、本当の豊かさとは何かといった問いに答えてくれるような気がするのはきっと私だけではないはずです。