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防衛省へ要請書提出 回答と質疑・再要請

 一昨年の12月、沖縄県北部の米軍演習場である北部訓練場の返還地で米軍が投棄したとみられる放射性廃棄物が発見され、テレビや新聞などで大きく報道されました。
 放射性廃棄物の投棄自体問題ですが、この放射性廃棄物が現在まで撤去処理されていない現状も大変由々しいものがあります。令和4年1月13日、農魂党はこの放射性廃棄物のことも含め返還地に投棄されている大量の米軍廃棄物について、また米軍基地からのPFAS汚水放出についても、米軍に撤去・処理の協力をさせるよう日米地位協定の改定を求めることなどの要請書を手交し回答を得ると共に、回答に対しての質問や要請・意見交換なども行いました。

 要請書の内容は以下のとおりです。(※令和三年十二月二十日付)

             要  請  書

 平成二十八年十二月、沖縄県東村ならびに国頭村にまたがる米海兵隊「北部訓練場」の一部、約四千ヘクタールが米国から返還されました(以下「返還地」といいます)。
 これをうけて沖縄防衛局は、一年程度の時間をかけ、返還地の使用履歴を文献などで調べる「資料等調査」を実施するなどして、土壌や水質の汚染、残置された米軍のものと思われる不発弾や廃棄物などを撤去する支障除去を行い、平成二十九年十二月に返還地が地権者に引き渡されました。
 しかし、返還地では、その後も沖縄防衛局による支障除去完了後も米軍のものと見られる空包や薬きょう、廃タイヤ、ドラム缶など多数の廃棄物(以下「米軍廃棄物」といいます)が発見されている他、米軍廃棄物が残置されていた土壌から有害なポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」といいます)が検出されるなど土壌汚染も確認されています(「琉球新報」平成三十一年三月九日の報道など)。
 これら返還地における米軍廃棄物や土壌汚染については、新聞やテレビなどでも報じられている他、返還地が世界自然遺産登録されたことから、環境問題としても問題視され、国会審議などでも取り上げられており(平成三十年五月十七日参議院外交防衛委員会での伊波洋一議員と小野寺五典元防衛大臣のやり取りなど)、返還地において米軍廃棄物が残置されていることは、政府としても一定の事実は認めているところです(平成三十年一月三十一日提出の糸数慶子参議院議員「米軍北部訓練場の返還跡地の支障除去等に関する質問主意書」に対する平成三十年二月九日付「答弁書」など)。
 
 そうしたなか、昨年十月二十五日、沖縄県国頭村安田の返還地内のFBJヘリパッド跡地の茂みから、付近住民(以下「発見者」といいます)が放射性物質「コバルト60」を含む通信機器の機材であるTR管(型番1B63A)十九個を発見しました。また、このTR管に付着していた布もしくは紙のようなものから、PCBが検出されました。言うまでもなく、このような危険な物品の投棄は、関係法令に抵触する犯罪です。
TR管が発見された場所の周辺には小川やダムが存在しており、これらは沖縄県内全域をまかなう重要な水源となっています。本件も含め、返還地における米軍廃棄物や土壌汚染の問題は、自然や人体への重大な影響という意味でも大きな問題です。
 また有機フッ素化合物であるPFASが、米軍基地から垂れ流され、暫定指針値の何千倍にも及ぶ状態で貯水槽から検出されている現状は、自然破壊はおろか人々の生活への不安は増すばかりです。さらに昨今の新型コロナウィルス感染症の水際対策に米軍は除外されていることから、米軍基地でのクラスターが発生し、観光立県の沖縄では経済的な打撃を受け続けなければならない状態に陥っています。米軍人は感染症対策もせず、検査協力も拒否しており、また市民が生活する場所で買い物や食事をおこなっています。こうした状況は人々の命はもとより生活や財産を守るという防衛の観点からみても、在日米軍の存在こそが人々の命や生活を脅かす脅威となっています。
 
 これまで、防衛省は「適切な対応をする」という言葉で私たちの要請に対応してくださいましたが、現時点でのこうした米軍のいい加減な状況に対して、日本の防衛機関として毅然とした態度で対応する必要があると考えます。
 
これを踏まえ、次の通り要請します。
 
               記
 
一. 未だに北部訓練場返還地に残るTR管とこれに付属する米軍廃棄物をただちに撤去し、適正に処理すること。また返還地に同種の米軍廃棄物が残置されていないか調査し、発見した場合は同様に撤去、処理すること。

二. 返還地に今なお残る米軍廃棄物の状況や土壌汚染、水質汚染などについて、あらためて広範囲に調査し、撤去など支障除去を適正に実施すること。

三. 米軍基地内からの汚水に関しての協議・委員会などの強化を図るとともに、近隣住民への丁寧な説明と、再発防止の徹底を米軍に求めること。

四. 日米地位協定における提供施設の原状回復義務の免除にかかる条項や運用を見直し、米軍廃棄物の撤去や処理について、米軍に協力をさせること。

五. 新型コロナウィルス感染症対策として、米軍に検査協力を強く求めるとともに米軍の移動制限を設けること。
                               以上
 
 速やかなる対応をお願いします。
 
                       令和三年十二月二十日
 
                         農魂党 仲村之菊
 
防衛大臣 岸信夫 閣下

防衛省担当者(右)に要請書を手交

 要請に対し防衛省側からの回答を以下にまとめます。

【要請の1】については、沖縄県における米軍施設区域の返還に際しては、跡地利用特措法の規定に基づき、返還地の有効かつ適切な利用が図られるように防衛省において返還地を土地所有者等に引き渡す前に土壌汚染等調査等の支障除去を講じている。その上で、北部訓練場の返還においても、平成29年の土地所有者への引渡し前に、全域を対象とした資料等調査を行い、支障除去処置の範囲や内容を確認した上で、土地所有者や関係機関に説明したのち、土壌汚染調査や廃棄物除去等を実施した。さらに、土地の引き渡し後も新たに廃棄物等が確認された場合においては、土地所有者や関係機関との調整の上、防衛省において適切に処分しているところであり、お尋ねの廃棄物に関しても既に処分を完了している。防衛省としては、北部訓練場の返還地の環境保全について、関係機関と連携の上、引き続き適切に対応していきたい。
【要請の2】については、北部訓練場の返還地については、土地所有者への引渡し前に防衛省において、全域を対象とした資料等調査を行い、支障除去処置の範囲や内容を確認した上で、土地所有者や関係機関に説明したのち、土壌汚染調査や廃棄物等を実施し土地所有者に土地を引き渡しています。その上で、土地の引き渡し後も新たに廃棄物等が確認された場合においては、土地所有者や関係機関との調整の上、防衛省において回収し、適切に処分している。防衛省としては、北部訓練場の返還地の環境保全について、関係機関と連携の上、引き続き適切に対応していきたい。
【要請の3】については、PFAS等の問題については、沖縄県の皆様が不安を抱いているということは受け止めておりまして、政府全体としていま取組等をすすめているところです。防衛省としては引き続き関係自治会、関係省庁と緊密に連携して必要な対応、安全対策、再発防止の徹底をしっかりと行いたい。第三金武湾タンクファーム(※米陸軍貯油施設)のPFASの事案(令和3年6月)については、昨年12月28日に政府・沖縄県および米軍に施設内(第三金武湾タンクファーム)の貯水槽の水の確認に関する分析結果を公表しています。(※陸軍貯油施設のPFOS等を含む水の流出事案に関する水の分析結果について 防衛省・外務省・環境省 令和3年12月28日 PDF)施設内(第三金武湾タンクファーム)の貯水槽からやはりPFASが発見されたということを確認しています。これを踏まえ、防衛省としては米軍に対して、施設の安全管理および再発防止の徹底を求めるとともに、関係機関と緊密に連携して適正に対応していきたいと考えている。現在、貯水槽に水が残っている状態ですが、それについては2020年から消火システムの稼働を停止していて、現在撤去に向けて調整をすすめている状況です。その上で、貯水槽内の水については、米側からの詳細は不明ではあるものの、適切に処理をするとの説明を受けているところである。それを踏まえ、防衛省としては、PFASなどを含む水の取扱いについて、適切な処置がなされますようしっかりと米側に訴えていく。
【要請の4】については、日米地位協定第4条1では「合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たつて、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。」と規定されています。これは、米側に原状回復の義務はない代わりに、日本側においても残された建物や工作物の米側へ補償をする義務を負わないというかたちで、双方の権利義務のバランスをとっているものです。このため、米軍から施設及び土地が返還された場合については、我が国の責任において原状回復をおこなっています。

※【要請の5】については、要請書手交日よりも事前の段階で、防衛省の管轄ではなく外務省への要請が必要だとの旨を聞かされていましたので省いています。

要請書への回答に対する質疑・再要請の一部を以下にまとめます。

Q.(農)
要請の1への回答で、「お尋ねの廃棄物に関しても既に処分を完了している。」とのことでしたが、いつの時点で完了しているのか?昨年の12月半ばの段階で、放射性廃棄物がまだ現場にあったことを地元住人が確認しています。
A.(防)
放射性物質コバルト60を含むTR管は、沖縄防衛局が適切に処分している。お尋ねのものと、我々の方で確認しているものが同一のものかどうかは定かではありませんが、我々の方で確認して処分したというものに関しては少なくとも11月末までに処分しています。

Q.(農)
要請の3についてですが、去年の8月26日は在沖米海兵隊は、普天間飛行場内で保管していたPFASを含む汚染水を一方的に下水道に放出しましたが、抑止すべきではなかったか?日本の発言が米軍には何も届いていないという印象を受け取らざるを得ない。
A.(防)
日本でPFASが規制されたのは2012年と最近の話でして、それまでは一般家庭も含めまして、通常に使われていました。例えばフライパンのフッ素加工など一般的に使われていたものです。沖縄のPFASについては、米軍基地由来とよく言われていますが、現時点では米軍基地との因果関係ははっきりしていない。

再要請
全ての要請に関係しているのですが、私たちは沖縄防衛局・九州森林管理局・沖縄県警などに度々この廃棄物の件で開示請求を行っていますが、例えば、廃棄物を発見した後に沖縄県警に通報をしてもその通報が九州森林管理局や沖縄防衛局まで届いていないということも開示請求から確認出来ています。何度も述べられている「関係機関との緊密な連携」や「土地所有者との調整」が出来ていないように感じています。それは適切な対応とは言えないのではないでしょうか。次回も同じ回答しか出来ない状態ではないことを望みます。


 なお、当日は要請行動参加者を減らし、防衛省側も含め感染症対策を講じた上で要請行動を実施しました。引き続き、要請や交渉を行っていきます。

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