夫婦だって伝わらない想いがある〜サイドメニュー編
当たり前だが、夫婦と言えど他人である。
他人でかつ夫婦であるからこそ、その関係を維持していく意思があるのなら、コミュニケーションの取り方を日々考え続ける努力が必要になる。
想いは、まず言葉にして欲しい。
私の夫は、「ふたりでひとつのものをわかちあう」ということをとても大切にしている。
婚姻届を出して数か月後、結婚指輪を注文しに行ったときのことだ。
ベースとなるデザインを選び、リング内側の刻印のデザインや使用するダイヤモンドの質(婚約指輪がない代わりにと、私の結婚指輪にはダイヤをあしらったものを選んだ)をどうするか、という相談をしているときに、店員さんから「内側にダイヤモンドを施すこともできますよ」「ひとつの原石からカットした世界にふたつだけのペアのダイヤモンドもございます」と提案を受けた。
へぇ~そういうのもあるのかと聞いている私の隣で、夫が「それだ!」という表情で顔を上げた。ベースのデザインが好みであればあとの細かい部分は妻の好きなように、というスタンスで座っていた夫が、前のめりで「それは素敵ですね」と提案されたダイヤモンドの資料を手に取った。
そんなこんなで、店員さんの営業にまんまとハマった形で、我々の結婚指輪の内側には世界にふたつだけのペアのダイヤモンドが施されている。
そういうことがあって、「ふたりでひとつのものをわかちあう」ということに強く思い入れがあるというか、強いポリシーがあるというか、そういう人であることを知ったわけだが、彼のその想いが、ときに私には、とても心苦しいが、とても身勝手で迷惑なものになる。
外食やテイクアウトで料理を頼むとき、こちらに相談なく「ふたりで分ける前提」で勝手にサイドメニューを頼んでいるのだ。
これは大変な問題である。
私は自分のその時の気分やお腹の具合や体調を考えて、自分が食べるメニューを選んでいる。まあ大抵の人はそうだろう。それなのに、同席した人が頼んでいたサイドメニューが届いたと思ったらテーブルの真ん中に置かれ、「半分どうぞ」と言われたらどうする。
お腹に余裕があったらまあいいかと思うかもしれない。食べるか迷っていたものなら喜んで箸をつけるかもしれない。でも、自分の注文分でちょうどいいつもりで自分の分を頼んでいたり、勧められたものを食べる気分でないとき、どうしたらいい。
相手は善意100%なのだ。
しかも「分け合う」ということをとても大事にしている人なのだ。
丁重に「私はいらないかな」と断ると、ものっっっっっすごい残念そうな傷付いた顔をする人に対して私はどうしたらいいのだ…。
注文する前に相談しろ。ただそれだけである。
何度かやんわりと夫にも伝えたのだが、どうにも分け合いたいという気持ちが先行すると勝手に頼んでいる。注文時に止めなよ、と言われるかもしれないが、店員を呼んで注文しているときに、ちょっと待ってと確認を取れるかというとそんな店員さんに余計な時間を取らせたくないし、タッチパネル式のようなところは何をいくつ頼んでいるかわからないことも多い。
更に私にとって悪いことに、どうやら分け合いたいという気持ちに加えて、私がモリモリ食べているところが好きらしいのだ。妻が肥満体形なのにあまり気にならないらしい。お願いだから少しは気にして欲しい。せめて健康面的な意味で気にして欲しい。最近食べ過ぎるとお腹を下すので、結構本当にどうにかしてくれないと困るのだ。
わかっている。これは我々夫婦の問題であって、こんなところで愚痴のように話すべきことではないことは。それでもちょっとだけ言わせてほしい。
その「分け合いたい」という想い、ちゃんと言葉にして事前に伝えてくれ。
そしてその想いを私のお腹が受け入れられないときは、許してくれ。