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退職D進を享受せよ(進学前後の生存戦略メモ)

あけましておめでとうございます。
大変私事ですが、昨年2024年に前職のIT企業での仕事を辞め、博士課程学生となりました。
論文も出ていないうちにいろいろと書き残すのは恥…………という気持ちがありますが、1年目の新鮮なうちに残しておけることもありそうなのでメモを書き残しておきます。

ここで言う生存戦略はアカデミアでサバイブ…とかそういった意味ではなく、あくまでヒト1個体が健全に持続可能に生活するという文脈での生存戦略です。つまり大体お金に関わる話なのですが、いわゆる退職D進を検討している方に何か参考になれば幸いです。


健全で持続可能な退職D進のための生存戦略メモ

①進学前の正社員→業務委託への切り替え

私は2024年4月入学ですが、タイムラインとしてはまずその前年である2023年の9月に正社員から業務委託へ雇用形態を変更しました。(その後、両立の限界が来る2024年5月まで会社との業務委託契約を継続。限界が早かった)業務委託契約については後述しますが、これによりほかの正社員のみなさんの半分くらい稼働する形になりました。自分は進学後、修士までとかなり異なる研究分野へ変更することに伴い、事前の研究準備のための時間を確保したいという考えのもとでした。

結論としては研究準備期間が設けられてもちろんよかったですし、少なくとも仕事と研究が両立できる間は学振DC程度の収入が保証されるという進学に際しての安心感もありました。

ほかにも…
・業務委託に伴い個人事業主になることで、進学後に必要になる確定申告や税の知識が深めに得られる
・進学前年の収入を減らすことで、進学後の税/保険料負担(無収入の間はとてもつらい)が少しマシになる
・同じく進学前年の収入を減らすことで、入学料/授業料免除により有利になるかもしれない…?
などはあるかもしれません。ただ2、3個目については時期によっては誤差程度ですし、進学までフルタイムで働いて貯蓄額を増やす戦略も大アリだと思います。

そして自分の場合は雇用形態変更に関して会社や部署、上司が非常に柔軟に対応してくださったこともあり、業務委託契約も基本的にこちらの希望条件で締結していただきました。社員の採用/教育コストも高いので、このあたりの交渉はしっかり対応してくださる企業が多いかも?という所感です。ちなみに自分が学生になった後の金銭的リスクヘッジのためにも、続けられる時期までは進学後も仕事を続けることを見据えていました。契約締結で考慮すべきは(賃金交渉ももちろんですが)稼働時間で、当時の学振DCなどの採用要件に合わせて私の場合は基本的に月75時間稼働での契約としていました。

例:月80時間以上稼働してしまうと常勤職と見なされてしまう(日本学術振興会HPより


②プレドクの活用

①ともかなり関連しますが、私の進学前の研究準備期間=「プレドク」期間でした。私も現在の指導教員から提案いただくまでプレドクそのものの存在すら知りませんでしたが、pre-doctoral programやpre-doctoral fellowshipと呼ばれるものです。正式?なプレドクについては下記の経セミnoteなどが詳しいです。

私の場合はプレドクというポジションではなく、進学までの期間に指導教員の所属研究所にてアシスタントスタッフとして雇用してもらうというスタイルでした。日本の大学でプレドクをやることについてはまったく事情をよく知らず申し訳ないのですが、少なくとも研究所の先生のもとではやりようがあるということだけここではお伝えさせてください。未来の指導教員に相談してみる価値はあるかと思います。

最大のメリットとしてはやはり現場に近いところで研究準備ができる(しかもお給料も貰いつつ!)点です。また私の場合は、進学後に指導教員となる先生と進学前から議論がこまめにできる点もありがたかったです。もちろんチームの勉強会に参加したり、チームの過去データを扱わせてもらいながら失われたR言語の記憶を取り戻したりアップデートしたり、良いこと尽くめだったと思います。


③(学振不採択でも)ありがたいSPRING with 青色申告

業務委託契約の稼働時間、学振の要件に引っかからんよう気をつけなはれや…とドヤ顔してましたが、小見出しの通り私はDC1およびDC2に関しては不採択でした。ただ、博士課程学生を取り巻く環境がここ数年で向上した最たる例、JSTのSPRING(次世代研究者挑戦的研究プログラム)に救済された者の一人です。採択率で見ても私の申請区分/大学区分で学振DC:10%台、SPRING:70%台と非常にありがたかったです。

これに関しては退職D進に限らない話ですが、博士課程進学に際してSPRINGの支援を受ける可能性も高いと思うので、その際に是非やっておきたいSPRING×青色申告をここでは推させてください。

こちらも下記noteが非常に詳しいので詳細はそちらに譲りますが、要は節税の話です。学振DCの生活費相当の所得は給与所得扱い(+給与の3割程度を経費計上して控除できる)なのに対し、SPRINGの生活費相当の所得は雑所得扱いになってしまいます。そこで、SPRINGの支援を受ける際には個人事業主として開業して青色申告を行うことで、青色申告特別控除(最大65万円)を受けつつ、研究者として作業環境や物品等に使用する費用も経費計上できるという大きな利点があります。

(余談:不採択だったので特に説得力が無いのですが、進学前年のDC1も申請するメリットは大きかったなと思います。何よりも申請書作法に慣れられるという点で。ゴールデンウィークを学振ウィークと揶揄するミーム?がありますが、会社員でもまとまって休みやすいボーナスタイムなので大型連休の力も借りて是非!)


④RAの活用

RAに関しては博士課程進学関連でほかの方がたくさん発信されてると思うので、言及するだけに留めます。強いて付け加えるのであれば、やはり退職D進1年目に避けられないそれなりの金額の税・保険料負担をするには、RAの収入も無いと結構厳しいなと個人的には感じました。もちろん生活環境にも依りますが、RAとして雇用してもらえるに越したことは無いのでこちらも相談の価値ありです。


⑤活用したかった民間奨学金

自分があまりアンテナを張れておらず、活用できなかった戦略の一つが民間の奨学金です。狭き門であることが多いですが、非課税で支援を受けられることがとてもありがたい。申請対象者が博士課程1年目に限られるものも多いので、ばたばたする進学年にも頑張って申請してみてもらえると後々ハッピーかなと思います。もし自分が一年前に戻れるとしたら絶対に申請したい。団体によっては奨学生同士の交流も支援してくださるようなケースもあり、金銭的支援+αの恩恵を受けられることもあります。いいなーーー!


最後に:リスクヘッジとしての退職D進

そもそも個人的には、会社員を経ての博士課程進学は相対的に健全で持続可能な博士課程ライフを目指しやすいのでは?ということはひしひしと感じています。主観100%でぱっと思いついたものを例に挙げていますが、また何か思い当たったら追記します。

【メンタル面】
・数年の実務経験があるので、例え博士課程で何かうまくいかなくなっても会社員に復帰できるという安心感がある
・会社員時代の貯蓄から自分で学費等を賄って進学できるため、良くも悪くも自分の選択に関する責任を自分自身で回収できる

【生活面】
・会社員時代に生活に投資したものが進学後も引き継がれるので、収入にかかわらず学生生活でもそれなりのQOLが担保される側面がある(例:仕事環境、ヘルステック、娯楽など)
・会社員時代の人並みの健康投資、金融投資習慣は学生生活をより持続可能にする(はず)

【その他】
・会社員経験から自分の労働対価をそれなりに見積もることができるので、やりがい搾取労働に巻き込まれにくい(はず)



以上、メモに残したいことは残せたので、今年はたくさん論文書きます!!!!!
みなさんも最高の2025年を!


最後にこのnote、投げ銭も受けられるように有料部分も設けさせていただきました。その際には御礼(?)として、自分が博士課程学生として今のところ持続可能に行えている副業(フリーランスのイラストレーター/デザイナーとしてのサイエンスコミュニケーションに関するお仕事)の実情に関して読めるようにしております。せっかくクローズドなので具体的なお金事情についても少し触れています。

あくまでも我々は研究が本業なので、趣味的に息抜きも兼ねながらサイエンスコミュニケーションやアウトリーチの業績と副収入が得られる、という立ち位置の副業は様々な側面から持続可能だと思っています。が、再現性がある話にまで昇華させられていないので、おまけのチラシの裏の読み物の域を出ないことはご了承くださいませ。良くも悪くも情報商材ではございません…。


おまけ:研究×趣味で持続可能な副業を?

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