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ハンカチ



「…これ使ってください」



差し出されたハンカチを振り払った。



忘れもしない日



あの時から私は恋に落ちていた。





川崎:和?今日はどこ遊びに行く?



井上:桜ごめん。今日は用事があるんだ



川崎:え…珍しくない?喧嘩?



井上:まぁ…そんなとこ。



川崎:なら、私も加勢するよ。



井上:いや違うんだ。そういうのじゃなくて



川崎:なに…まさか…男?



井上:い、いやいや!そういうわけじゃない。違うんだ



川崎:そっか…なら、アルノでも誘ってこよ



井上:おう。じゃあな。



手を振り教室から出た。



しかし、何かを怪しむ川崎はアルノを連れて、井上の跡を追いかけた。





中西:ちょっと桜…和に男が出来たって本当?



川崎:まじまじ!さっきの慌てぶりを見たら、絶対いる!あ!ほら、あそこ!



指を指す先に、井上と男性の姿。いつも、喧嘩ばかりで女性だという事を忘れているけど、その男性と話している時は、乙女の顔をしていた。



中西:まじじゃん。なにあれ…私達に内緒で。許さん!冷やかしに行こう。



川崎:あ!ちょっと!



中西:和!ちょっとどういうこと?



この声に気づいた和は、男性の手を取りその場から逃げた。



中西:ちょっと!待ちなさい!



川崎:ほら、やっぱり駄目じゃん。





〇〇:ちょっと…井上さん…待って…もう走れない。



井上:あ…ごめん。



〇〇:さっきの人達は友達?



井上:まぁ…そんなとこ



〇〇:じゃあ逃げなくてもよかったのでは?



井上:いいんだよ。気にしなくて。それより、これありがとな。あの時は助かった。ありがとう



〇〇:ううん。こちらこそ。まさか、学校にまで来るとは思わなかったけど



井上:迷惑だったか?



〇〇:ううん。むしろ嬉しかったよ。でもどうやってわかったの?



井上:細かいことは気にするな!私の情報網を舐めては困る。色んな人に聞いたら、すぐ〇〇だとわかってな。ハンカチ返せてよかったよ。



楽しげに喋る二人の背後に影二つ。やっと追いついたみたいだ。



中西:つ、疲れた



川崎:和〜早すぎだよ。



井上:げっ!逃げるぞ



〇〇:井上さん待って!僕ももう走れないよ



井上:ぬ。



中西:さて、事情を説明してもらおうか?



川崎:もらおう!!





中西:ほう…じゃあ…そのハンカチを返しに和が来たの?


〇〇:はい



川崎:お名前は?



〇〇:奥田〇〇です



中西:和のどんな所に惚れたの?



〇〇:え…あの…



井上:おい!お前ら!もういい加減にしろ!終わり!あんまり〇〇で遊ぶな



二人の質問攻めに怒りを露わにさせて、止めに入った。



中西:でも、和はどうしてこの事を教えてくれなかったのさ?



井上:え、いや…その…



川崎:実は〇〇君のことが好きだったりして



井上:う、うるせぇ…いいだろ別に…それは…



中西:あらあら…乙女の顔しちゃって…



井上:うるせぇ!帰る!



〇〇:井上さん。待ってください。僕も一緒に帰ります



井上:勝手にしろ…






駅までの道のり、〇〇の後ろを歩く井上



気まずい雰囲気を切るように〇〇が話し出した。



〇〇:僕は嬉しかったです。もう一度会いたいって思ってたから。井上さんほど喧嘩は強くないし、頼りない僕だけど…友達になってくれませんか?



井上:私もだ…でも、ごめん。友達は嫌だ



〇〇:え…何故ですか。



井上:私が〇〇のこと好きだからだ。付き合え!彼女にしてくれ!



夕焼けの下、一つの恋が実った日。














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