ハンカチ
「…これ使ってください」
差し出されたハンカチを振り払った。
忘れもしない日
あの時から私は恋に落ちていた。
…
川崎:和?今日はどこ遊びに行く?
井上:桜ごめん。今日は用事があるんだ
川崎:え…珍しくない?喧嘩?
井上:まぁ…そんなとこ。
川崎:なら、私も加勢するよ。
井上:いや違うんだ。そういうのじゃなくて
川崎:なに…まさか…男?
井上:い、いやいや!そういうわけじゃない。違うんだ
川崎:そっか…なら、アルノでも誘ってこよ
井上:おう。じゃあな。
手を振り教室から出た。
しかし、何かを怪しむ川崎はアルノを連れて、井上の跡を追いかけた。
…
中西:ちょっと桜…和に男が出来たって本当?
川崎:まじまじ!さっきの慌てぶりを見たら、絶対いる!あ!ほら、あそこ!
指を指す先に、井上と男性の姿。いつも、喧嘩ばかりで女性だという事を忘れているけど、その男性と話している時は、乙女の顔をしていた。
中西:まじじゃん。なにあれ…私達に内緒で。許さん!冷やかしに行こう。
川崎:あ!ちょっと!
中西:和!ちょっとどういうこと?
この声に気づいた和は、男性の手を取りその場から逃げた。
中西:ちょっと!待ちなさい!
川崎:ほら、やっぱり駄目じゃん。
…
〇〇:ちょっと…井上さん…待って…もう走れない。
井上:あ…ごめん。
〇〇:さっきの人達は友達?
井上:まぁ…そんなとこ
〇〇:じゃあ逃げなくてもよかったのでは?
井上:いいんだよ。気にしなくて。それより、これありがとな。あの時は助かった。ありがとう
〇〇:ううん。こちらこそ。まさか、学校にまで来るとは思わなかったけど
井上:迷惑だったか?
〇〇:ううん。むしろ嬉しかったよ。でもどうやってわかったの?
井上:細かいことは気にするな!私の情報網を舐めては困る。色んな人に聞いたら、すぐ〇〇だとわかってな。ハンカチ返せてよかったよ。
楽しげに喋る二人の背後に影二つ。やっと追いついたみたいだ。
中西:つ、疲れた
川崎:和〜早すぎだよ。
井上:げっ!逃げるぞ
〇〇:井上さん待って!僕ももう走れないよ
井上:ぬ。
中西:さて、事情を説明してもらおうか?
川崎:もらおう!!
…
中西:ほう…じゃあ…そのハンカチを返しに和が来たの?
〇〇:はい
川崎:お名前は?
〇〇:奥田〇〇です
中西:和のどんな所に惚れたの?
〇〇:え…あの…
井上:おい!お前ら!もういい加減にしろ!終わり!あんまり〇〇で遊ぶな
二人の質問攻めに怒りを露わにさせて、止めに入った。
中西:でも、和はどうしてこの事を教えてくれなかったのさ?
井上:え、いや…その…
川崎:実は〇〇君のことが好きだったりして
井上:う、うるせぇ…いいだろ別に…それは…
中西:あらあら…乙女の顔しちゃって…
井上:うるせぇ!帰る!
〇〇:井上さん。待ってください。僕も一緒に帰ります
井上:勝手にしろ…
…
駅までの道のり、〇〇の後ろを歩く井上
気まずい雰囲気を切るように〇〇が話し出した。
〇〇:僕は嬉しかったです。もう一度会いたいって思ってたから。井上さんほど喧嘩は強くないし、頼りない僕だけど…友達になってくれませんか?
井上:私もだ…でも、ごめん。友達は嫌だ
〇〇:え…何故ですか。
井上:私が〇〇のこと好きだからだ。付き合え!彼女にしてくれ!
夕焼けの下、一つの恋が実った日。
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