米ドルの偽札の大量製造が止められない
2019年10月10日のCOBRAの記事「The Silver Trigger」で紹介された記事「Someone has been producing highest quality fake US notes for decades and the US can’t afford to call them out on this.」を翻訳しました。
"現在のシステムのもう一つの構造的な弱点は、大量の偽造米国紙幣です。
マスコミにこの情報が出ますと、米ドルの世界の準備通貨としての信頼を損なうことになります。"
元記事:
21世紀の現代、史上最大の通貨偽造詐欺が現在進行中で起きているのをご存知でしょうか。この世界のどこかで、誰かが数百万とも数十億とも推測されるほど巨額の偽ドル札を機械的に偽造し続けてきたことが問題になっています。偽札はどれも非常に高品質で、見つけ出すのも困難です。
それに首謀者は未だに見つかっていないのです。世界中でたまに少数の個人や団体が逮捕されることはありますが、この犯罪行為の黒幕はまだどこかに隠れたままです。
この史上最大級の通貨偽造詐欺の流れは、誰にも止めることができていないというのが現状なのです。
この件について掘り下げていくと、ここ三十年ほどは、ロシア人マフィア、アイルランド系テロリスト、FBI、北朝鮮外交官、シリアの秘密基地、諜報機関が出元の謎のメモなど、きな臭い話ばかりが出てきます。「スーパーノート」と呼ばれた偽米ドル札の歴史は今日も続いています…
80年代後半から90年代半ばにかけて、この件は一大事となっていました。米国は調査を開始すると、偽造が想像以上に大規模に行われていたことが判明しました。偽札の製造は世界各地でまるで一つの産業であるかのように行われていたのです。中東全域では数百万ドル以上という偽札が製造され、その波はアフリカ、アジア、ヨーロッパへと広がっていきました。インターポールは米国諜報機関に支援を求め始めたが、諜報機関はインターポールを煙たがっていて、国内に問題に足を踏み入れないようにけん制し始めたのです。なぜなら、米ドルの偽造通貨製造の専門家は、実は米国諜報機関だったからです。
シリアには秘密のコネクションがありました。90年代初頭、中東ではお金が無尽蔵に刷られているという噂が広まりました。それらの噂の焦点となっていたのが、シリアでした。
1996年、イギリスにおいてイラン政府がアイルランド人武装組織であるアイルランド共和軍を雇って、亡命中のイラン反政府軍の3人を暗殺させようとしたというスキャンダルがありました。恐らくその暗殺請負への前報酬だったのでしょう、イラン政府には大量の武器と数百万ドルほどの偽札が手渡されていたのです…
当時、今でもそうですが、イランはシリアと密接な関係を持っていました。恐らく、同じ犯罪組織からお金を得ていたのでしょう。現地の諜報機関と繋がっていたCIAは、中東には約十億ドルほどの偽札があると考えていました。米国シークレットサービスはこの事態に怒りを示し、CIAは役立たずだと言いました。CIAはほくそ笑んでいたことでしょう。シークレットサービスの連中は中東で起きていることを、何も解っていない、と。
噂がどんどん大きくなってしまったため、1996年にシリアを訪れたクリントン大統領は、アサド大統領(現在のアサド大統領の父)に何か知っているかどうか、また調査してもらえないかと尋ねました。とは言うものの、そのような大型で高性能な凹版印刷機を持っていて、それを扱える専門家がいるということは、ただのギャングの仕業ではないということは解っていたのです。印刷機をシリアまで運び、それを完全秘密にしたまま保持し、運用し続けているなんてことはただのギャングにできる犯罪の規模ではありません。しかも、米ドル紙幣にはリネンと綿が編み込まれているわけですが、それもそっくりそのまま同じ技術をコピーしているのです。そんなことが、一犯罪組織にできるでしょうか?こうなると手がかりを掴むことも逆に難しくなってきます。シリアの線は途絶えてしまいました。その間にも、偽札は世の中に出回り続けています。こうして数年以上の時が過ぎていきました…
物語の舞台はロシアに移ります。偽札は世界中で使用されていました。米国財務省の報告書によると、ロシアがこの偽札が流している水源だと特定したのです。ロシアの銀行が保有していた米ドル札の約20%が偽札だということまで突き止めました。ロシアの犯罪組織はその偽札を世界にむけて売りさばいていたのです。2005年、最初の逮捕者が出ました。しかし事態はそこから更に複雑になっていきます。イギリスのマンチェスターにおいて、小さな犯罪者集団が超精密なスーパードル札(偽札)を製造し続けていました。おとり捜査などでこの集団を捕らえることは可能ではありましたが、もしそうすればイギリス全体の経済が強い損失を被ることになると考えられていました。(そこではなんと五十万ドルにおよぶ額の精密な偽札が、毎日造られていたのです!) 結局、一人のギャングが逮捕されることになりました… しかし、押収された高品質の偽札は、なんと超高品質な偽札のコピーに過ぎなかったのです!捜査はそこで行き詰まってしまいました。その後、アイルランドの有力なテロリストが、欧州に偽造したドル札を大量に持ち込もうとした罪で、モスクワで逮捕される事件がありました。
アメリカ国内でもスーパードル札が姿を現し始めました。これに対しFBIは二つのおとり捜査を実行しました。(ロイヤルチャーム作戦とスモーキングドラゴン作戦) 捜査を通して何名かの犯罪者が捕らえられましたが、彼らは偽造通貨の時流に乗っているだけの犯罪者に過ぎず、誰が偽札を製造しているのかの解明には至りませんでした。2006年、シリアではまだ偽札の噂は止まず、ロシアでの捜査も暗礁に乗り上げており、埒が明かないという状態の中、新たな噂が流れ込んできました。米国捜査官たちの注目は、世界の反対側、北朝鮮のほうを向き始めたのです。
北朝鮮の外交官たちは、モスクワ大使館を通して各国の大使館を渡っていました。まるで、各地から偽札を拾い集め、それを目的地に届けて廻っているような動きでした。外交官たちは一時拘留されましたが、国際外交ルールによって守られている彼らは強制帰国だけで済んだのです。しかし、米国捜査官たちは北朝鮮や中国に巨額の米偽札が集められていることを見逃しませんでした。脱北者などの証言などの多数の証拠は、北朝鮮で大量の偽札が印刷されていることを裏付けていました。
米国上院委員会での報告によって、北朝鮮が全ての黒幕だと発表された時には「やっと犯人がわかった!」と大きな反響がありました。2006年から2009年の間にはこの線が本筋であるという認識が浸透していきました。アメリカからは韓国に対しても強い圧力がかかり、北朝鮮から犯人をあぶりだそうとしていました。しかし、韓国はアメリカからの申し出を拒否します。黒幕は北朝鮮では無いと言うのです。そう、当時の捜査官が後々語ったことによると、アメリカは北朝鮮が犯人だという話を捏造し、誇張していたのです。それは西洋からの観点を東洋に押し付けるという思惑が裏にありました。では、北朝鮮に偽札は本当に来ていたのでしょうか?北朝鮮がスーパードル札を大量に保有していたことは事実のようです。この20年間、中東に偽札をばら撒いていた犯人が北朝鮮だったかどうかは、十分な証拠が揃っていません。北朝鮮が世界各地の大使館を経由してスーパードル札を運んでいたことは事実です。しかし、元々どこから偽札を持ってきたのかが、判っていません。またも捜査は行き詰ってしまいました。その間にも、世界には偽札が人々の手を渡り続けています。
今日でも、偽札騒動は進行中です。いまだ北朝鮮が真犯人だと主張する声もあります。他にも、ロシアや中国が黒幕だと疑われているようです。それと、この件について何度もその名前が取りざたされる国があります。1994年、その国こそが真犯人だという声もありました。
それがイランです。1970年代、イランではCIAによって政府が転覆され、新たな指導者が代わりに用意されました。軍隊や警察による国民を力で抑えつける政策によって指導者の立場に居続けたシャーは、アメリカが大好きで、アメリカも忠実なシャーを気に入っていました。そして沢山の支援を施してあげました。つまり、銃器などの武器弾薬のことです。それと、こんな素敵なプレゼントも贈ってあげたのです…なんだと思いますか?
そう、紙幣印刷機です。皆が使っている米ドル札を印刷することができる、インタグリオ凹版印刷機です。
皆 が 使 っ て い る ド ル 札 の 真 券 を 製 造 で き る 印 刷 機 です。
それがイランのシャーに手渡されたのです。ドイツ経由で多額の移送費用をかけて、イランに輸入されました。アメリカからしてみれば「おお、我が友イランよ、君の国を手伝ってあげよう。僕らが使ってる印刷機と同じものをあげるから、これで僕らのお金をいっぱい刷って使っておくれ。普通の紙に刷っちゃだめだよ。ちゃんと僕らと同じ、リネンと綿が織り込まれたやつを使うんだよ。長持ちするし、もっとお金っぽく印刷できるからね。」というところでしょうか。
というわけで、イラン革命政府はテヘランに印刷機と紙とインクがあるのを発見したのでした。彼らはロシア経由で追加の特製紙を取り寄せました。ちょうど冷戦の最中の頃のお話です。アメリカ大使館人質事件のあと、イランは厭わしい国として予定通り切り捨てられました。そして新しい仲間を見つけたのです。その一人が、東ドイツでした。なぜ東ドイツかというと、そこの秘密警察・諜報機関であるシュタージを通して、米ドルの偽造通貨製造に必要な材料を得ることができたからです。
そしてイランは静かに、騒ぎを起こして気づかれないように、密かにアメリカのお金を印刷し続けていました。名目上は経済破綻状態にあるはずのイランがなぜ最新の破壊兵器を購入できるお金を持っているのか、これで説明ができますね。アメリカに見捨てられた時、イランが中央アジア各国へ米ドルで支払いすると言った時は笑えました。そんなお金、どこから持ってきたのかと。ロシアで突然、偽米ドル札が流通し始めたのも、これで説明がつきました。ついでにロシアの最新兵器もイランから送られた偽札で支払われたことも推測できます。それと、朝鮮半島のことも説明可能ですね。イランには大量の高価なミサイルが売却されていたのでしょう。そして北朝鮮は取引の途中で、「もうこれ以上の現金は受け付けない。今後は石油で払ってもらう。」と突っぱねたのでしょう。さすがに、騙されていたと気づいたのでしょうね。
それと、シリアでの噂もこれで説明可能です。イランは大量に印刷した偽札を隠していました。それがあまりに大量なので、外国のどこかに隠す必要がありました。だから、シリアに送られた偽札が発見されてしまったのです。もしこれが真実なら、80年代だけでも数十億ドルもの偽札が造られていたということになります。しかし、「公式には」アメリカ合衆国はこれまで一度もイランに対する捜査に踏み切ったことはありませんでした。なぜだと思われますか?おかしなことですよね。
イランを公けに批判できない理由は2つあります…
1. この記事は人々の不安を煽っています。こんな扇情家は信用できないと言われています。だから、問題はそんなに大きくないんです。だから、イランは大丈夫です、心配いりません、関係ありません、だから…
2. イランにそんな世界史上最悪レベルの詐欺が隠されているなんて、アメリカ一国だけでは主張できません。
まあ、イランを公的に非難することができない理由があるとすれば、2が妥当な線だと言えるでしょう。
ところで、米ドルは国際準備通貨という重要な立場にある通貨です。地球上のどの国に行っても、アメリカの米ドルの影響力があります。地球で最も強力な通貨が米ドルなのです。世界の経済は、米ドルの影響によって支えられていると言っても過言ではありません。
ですが、もし、例えばトランプ米大統領が「イランが米ドルを偽造している犯人だ」と発言でもしたら、どうなると思われますでしょうか?「多分、イランは米ドルの偽札を何十億ドルぶんも印刷している!それは全部偽物のカネだ!そして、偽札が世界中に出回っているんだ!」もしこんな暴露があったら、人々はどう反応するでしょうね?もちろん、落ち着いて穏やかにいつも通りの日常を過ごすでしょうね??
それとも、今度という今度は、人々の怒りが爆発するかもしれません。もしかしたら、もう米ドルがこの世から消えることになるかもしれません。主軸通貨には、他の通貨が選ばれるかもしれません。ユーロ、スイスフラン、人民元とか。
ひょっとして、とんでもないことを書いてしまったのかもしれません。でも、想像してみたら恐ろしいことですよね。アメリカ大統領は選択を迫られています。このことを、言っちゃうか、それとも隠したままにするか。もし暴露したなら、米ドルは再起不能なほどに信用を失うことになるでしょう。黙ったままにするなら、イランは今後も「テロリスト国家」と言われ続けるでしょう。ブッシュやオバマやクリントンが言っていたように…
October 9, 2019
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