宇宙はループしている?ブラックホールから前回の宇宙の痕跡が
COBRAの2023年5月21日の記事「Situation Update and Cobra Conference in Japan」で紹介された記事「Another universe existed before ours – and energy from it is coming out of black holes」を翻訳しました。
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”宇宙の周期に関する認識が、徐々に科学界の主流になりつつあります。”
元記事
ビッグバンからこの宇宙は始まったとされていますが、ノーベル賞受賞者のある物理学者によると、それ以前にも「旧宇宙」は存在していたのだそうです。それを証明するのは、ブラックホールから出てくるエネルギー残滓です。
その物理学者の名は、ロジャー・ペンローズ卿。
彼は、「ブラックホールの形成が一般相対性理論の強力な裏付けであることの発見」により、ノーベル物理学賞を受賞しました。受賞の際、次のように断言したといいます。
「消滅したブラックホールの痕跡であり、強力な電磁波が観測される領域「ホーキング・ポイント」は、太古の前宇宙の名残りである」
いわゆる「共形サイクリック宇宙論」という宇宙モデルです。
ホーキングポイントとは、ブラックホールからの放出「ホーキング放射」により前回の宇宙からエネルギーの残滓が出てくる領域なのだと論じられています。
ブラックホールはご存知、超強力な引力により物質が崩壊して、時空間が落ち込んだ「穴」です。ここに引き込まれたものは光でさえ抜け出せないと言われています。
天の川銀河の中心にも、超巨大ブラックホールがあると予想されており、ノーベル賞受賞者のラインハルト・ゲンツェルとアンドレア・ゲズはその有力な証拠を示したことで知られています。
しかしブラックホールが完全に蒸発するまでには、途方もない時間がかかります。現在の宇宙の年齢よりも長いのです。よって、前宇宙の残滓を検出できない可能性は高いと見込まれています。
「ビッグバンは始まりではなく、ビッグバン以前にも何かが存在しているのです。それは私たちの未来にあるものとも言えます」
しかしロジャー卿の理論を否定する科学者も多くいます。特に、検出されるエネルギーが、ブラックホールから放射されたものであるという証拠が無いという理由が大きいです。
さらには、「宇宙がほぼ無限大に膨張してから次の宇宙に移行するなら、次の宇宙では無限に小さな宇宙になるはず」という理屈で考えると、この世のどんな物質であっても、そんな長い間質量を保っていられるはずがないと考えられています。もっとも、この考え方も疑わしいものですが。
これまでの宇宙論では、ビッグバン後の短期間の膨張の過程で、宇宙構造の中の「異常」は無くなっていったとされてきました。
ロジャー卿によると、ブラックホールの存在も自説も、初めのうちは疑わしいものと見られるのは当然だと思っているようです。ブラックホールもその存在が証明されるまでは、数学の仮想的な作り話だと思われていたのですから。