アタシが緊張する理由
?:あ?先公、てめぇ何ジロジロ見てんだよ。あたしに喧嘩売ってんのかよ?
「い…いえ…そう言うわけではないんです…」
?:チッ。だったら見てくんじゃねぇよ。ムカつくな
あたしは池田瑛紗。見ての通りのヤンキーってやつだ。あたしがグレ始めたのは中2の時だ。反抗期になり、中学に入ったときからの連れと共にヤンキーになった。理由なんてものはない
今は親に嫌々行かされた学校の前で先公に見つかり、注意されてるところ
瑛:んで?あたしに何の用なわけ?
「あの、時間的に遅刻なのですが...」
瑛:はぁ?遅刻ぅ?うっせーよ。あんたには関係ねぇだろ
「い…いやちゃんと時間は守ってもらわないと困るので…」
瑛:はいはい、分かった分かった。次からは気を付けます~
こんな感じで呆れたように先公を適当にあしらって校内へと入る
瑛:ハァ。ったく
すると
?:あ~遅刻してる悪い子がいるぞ~
?:ホントだぁ。悪い子がいるぞ~
瑛:あ?てめぇら見てたんだったら助けろよ
?:だって、面白いんだもん。ねぇ~アルノ
?:ねぇ~
瑛:チッ、てめぇら後で殺す!
?:きゃあ~瑛紗が怒ったぞ~逃げろ~
コイツらは中学の頃からのダチの岡本姫奈と中西アルノ。この2人とは小学校の時からのダチで中2の時に姫奈から誘われ、アルノと一緒にグレた
そのまま、三人でしばらく駄弁り、途中先公に見つかり渋々教室へと向かっていると
?:あっ、池田さん
瑛:ッ //お…おう。なんだ、いたのかよ
あたしの前に現れたのは、あたしが密かに気になっている一ノ瀬◯◯だ。コイツと話すとき、何故かいつも緊張してしまうのだ。他のやつと話すときは緊張せずに話せるんだけど、何故かコイツと話すと毎回緊張して、少し強気な態度を取ってしまう。だから、あたしはきっとコイツからは嫌われていると思っているんだろうな
○:う…うん。おはよう。
瑛:あっ…えっと…う…うん。おはよ
会話が続かない…こんなときは
瑛:…ああ!そ…そうだ。姫奈に用事があるんだった。じゃあな!
○:う…うん。
そして、その後もなかなか話すタイミングを見いだせず結局そのまま放課後を向かえてしまったのだ
キーンコーンカーコーン🔔
瑛:あっ…
あたしが教室を出るとちょうど、◯◯が帰るところだった
瑛:な…なぁ!ちょっと今、良いか?
あたしが◯◯に声を掛けると、あいつは一瞬ビクッとして
○:えっ…別に構わないけども、カツアゲでもするの?
瑛:え、いやいや!そういうのじゃないって!あたしこう見えてカツアゲとかしたことないし!
○:そ…そっか。じゃあどうしたの?
瑛:いや…その…ほら、あれだよ
○:あれだよって言われても僕には分からないよ
瑛:ああ!もう!良いから、ちょっとこっち来い!
○:あっ、ちょっとどこ行くつもりなの
瑛:どこって体育館裏だよ。誰かに見られたらめんどくせーし
○:いや、でも…
瑛:なに、文句でもあんの?
○:い…いや。ないけども…
瑛:な…なら良いけどよ...
そう言ってあたしは◯◯の手を引いて体育館裏へと向かった
瑛:…よし、この辺なら誰にも見られないよな
あたしは心の中で小さく気合いを入れて
瑛:お…おい。◯◯、あんたにあたしから言いたいことがあんだよ
○:は…はぁ...
瑛:は…話しってのは...えっと...その…
どうしよ...緊張する…
するとアイツは
○:あ...あの。これで良い?
あろうことかアタシに金を差し出してきた
瑛:は?…なにこれ?
○:こ…これで全部…なんだけど…
瑛:これで全部って...はぁ...あのなぁ。さっきも言ったろ。カツアゲじゃねえって
○:え…じゃあ僕をここまで連れてきた理由って...
瑛:えっ…いや…だから…その理由ってのは…
あたしは勇気を振り絞って打ち明けた
瑛:こ…これを…見てほしくて
○:え…っとネコ?
瑛:そ…そう。ネコ。うちで飼ってるの。あんたってネコ好きなんだろ?
○:いや、好きだけども。なんで知ってるの?
瑛:その…この前話してるのが聞こえてきたの
○:あぁ。そういえば話してたかも…
瑛:だから…その…見せてあげようって思って…
すると
○:その、ネコの名前って何て言うの?
瑛:え?あ、あぁ。名前?まろんちゃんって言うんだ。かわいいだろ?でよ。まろんちゃんのイチオシの写真はこれだよ!
そう言ってアタシは彼にイチオシの写真を見せた
瑛:ネコってめちゃくちゃ伸びるんだよ。それが見てて面白くてさ
○:確かに!よくあんなに伸びるよね
瑛:だろ!他には....これ!
○:うわっ!めちゃかわいい!!
瑛:でしょ!マジでかわいいでしょ!普段はあんなにツンツンしてる癖に甘えてきたらこんな顔してくるんだよ!都合良いって思われるんだろうけども、それもまた良いんだよ。こんなにかわいいならネコに振り回されても良いって思っちゃうんだよなぁ
アタシは興奮のあまり次々に写真を見せているとその中にすっぴんのアタシの写真があった
○:あれ?この写真は...
瑛:えっ?あっ!やばっ!み…見た?
○:いや、えっと…ごめん...
瑛:うぅ~恥ずぃ~
完全に油断してた。あたしのすっぴんなんてダチの2人にしか見せたことないのに、よりによってコイツに画像越しとはいえ見られるなんて!
アタシが1人悶々としてると
○:でも、そんな池田さん可愛かったよ
瑛:は?か…可愛いわけないだろ!お前の目、腐ってるんじゃねぇの?
○:いやいや、そんなことないって。ほんとにそう思ったんだって
瑛:は?いや、なに?あんたブスが好きなわけ?
○:ち…違うって!本当に可愛いって思ったんだって
瑛:あ~分かった!分かったから!も…もう可愛いって言わないでよ。恥ずかしくて無理…//
○:あっ、ごめん
瑛:あ、いや、全然。こっちこそごめん。わざわざここまで連れ出して、紛らわしい真似して
お互いの間に少し気まずいどんよりとした空気が流れ、お互いに何も切り出せなくなる
そんな空気を打ち破り
瑛:あの…さ…あんたさえ良かったらなんだけども、う…うちの家に来ない?
○:えっ…
瑛:ほ…ほら、あんたネコ好きなんでしょ?うちの子、けっこう人懐っこくてさ。始めての人とも仲良くなれる方っていうか…
○:…
瑛:ほ…ほら。お互いネコ好きだし、色々話してみたくってさ。うちの子の可愛さをあんたにも知ってほしいし…
○:池田さん…
瑛:ど…どうかな…
○:気持ちは嬉しいよ
瑛:えっ…じゃあ…
○:でも、ごめんね。僕、このあと予定があるから今日は無理なんだ。わざわざ誘ってもらったのに
瑛:い…いや。全然良いんだよ。むしろ、無理言ってごめんな。そうだよな。アタシ、こんなんだもんなぁ…(小声)
アタシがシュンとしてうつむいて、その場を後にしようとしていると◯◯は
○:池田さん、これ良かったら…
そう言って差し出してきたのは会話アプリのQRコードだった
瑛:えっ…こ…これって…
○:僕の連絡先なんだけど…いるかな?
瑛:えっ!良いの!
○:まぁ、池田さんさえ良ければだけども
瑛:うん!しよしよ!あっ、ちょっと待って。これどうやって友達追加するんだっけな…
アタシが少しアプリに四苦八苦してると
○:あ、え~っとこれを…
わっ、ち…近い...//
○:これでここを押してって…池田さん?
瑛:あ、あぁ。えっとここ押して…それでこうで…あっ、なるほど。このQRコードを…あっ、来た来た!これがアンタ?ふふっ、なにこの写真。なんか独特だな
○:う…うるさいなぁ笑
そんなこんなんで◯◯の連絡先を手に入れることが出来た。その嬉しさから自然と笑みが溢れていた
瑛:へへ、やった…
○:ど…どうして僕の連絡先なんかで喜んでくれるの?
瑛:えっ?い…いや。なんで?
○:なんでって…池田さん、僕のこと嫌ってるんでしょ?
瑛:そんな、嫌ってるわけないじゃん!むしろ…
○:むしろ?
瑛:っていやいや、なんでもない。ってか、どうしてそういう風に思った?
○:いや、だっていつも僕と話すとき、遠慮がちに話すから僕のこと嫌いなのかなぁって
瑛:あ、いや、違…くはないけども、あれは嫌いだから避けてたんじゃなくて…その…緊張しちゃって…
○:緊張?
瑛:うん…話すきっかけはずっとほしかったんだけど。ちょっと私にはなかなか…
そんなアタシの姿をみて◯◯は
○:ふふっ、池田さんまるでコミュ障みたいだね笑
瑛:お…おい!笑うなよ!それにアタシはコミュ障じゃねえ!
○:ご…ごめんって...
瑛:ったく、次そういうこと言ったら本当にカツアゲするからな!
○:分かったから
瑛:ふふっ
○:ん?
瑛:いや、なんかさ...こうしてみるとさ、けっこう普通にアタシら話せるんだなぁって…
○:ホント。意外に話せるね
瑛:アタシもあんたも無駄にビクビクしすぎたね。
○:だね笑
ここでいうしかない。そう心の中で決心し
瑛:な…なぁ。その…さ…アタシとさ。友達になってよ。
すると◯◯は
○:僕もそれを言おうと思ってたんだ。池田さん、僕と友達になってください!
瑛:えっ…ほ…本当?
○:僕が嘘つくと思います?
瑛:お…思わないよ!へへっ//良かった
そのあともお互いのネコの話で盛り上がり、気がつくと辺りが夕方になっていた
○:あっ、そろそろ時間だからもう、行くね
瑛:あ、うん。ね…ねぇ。また、来れるとき教えてよ。早くまろんちゃんにも会わせたいからさ
○:うん。会えるの楽しみにしてるよ
瑛:よし。まずは初めの一歩(小声)
○:ん?なにか言った?
瑛:ううん。なんでもない!じゃ…じゃあまた明日な!
○:うん。明日は遅刻しないでよ
瑛:うっせ!明日は遅刻しねえよ。…多分(小声で)
○:遅刻したら、話さないから
瑛:なっ!そ…それはやだ!
○:ふふっ、じゃあまた明日ね
瑛:うん!また話そうな!バイバイ!
アタシたちは明日も会う約束をしてそれぞれ家路についた
後日談
瑛:うぅ~
姫:まだ落ち込んでる~いつまで引きずるの。瑛紗~
ア:どんだけアイツと話したいんだよ。ゾッコンじゃん~
瑛:う…うるさい!お前らにはこの気持ちは分からねぇんだよ!
翌日、あたしは見事に遅刻をし、約束通り◯◯とは話せなかったのだ
すると
ピコン
突然ケータイに通知があり、開いてみると
瑛:あっ。ふふっ
姫:あ、ケータイ見てニヤニヤしてる!な~に見てんの?
瑛:あっ、ちょ!勝手に見んな!
だって送られてきたのはアイツの飼いネコと◯◯のツーショットだったから
Fin...
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