理想の夫婦〜きみとぼくとあさやけと

朝。

一緒に目覚める。

それが理想的だけど、
彼女の方が一足早く起きてる。
そして朝食を作ってくれている。

目覚ましとともに起床した俺。
寝ぼけ眼でおはようを交わす。

彼女が作る料理は絶品とまではいかないけど、
程よく美味しくて程よく温かい。それがいい。

何気ない会話。
本当に何気なくてトピックを挙げられない会話。

それから彼女は後片付けをして、
俺は職場に行く準備をする。

いってきますのキス。
いってらっしゃいのキス。

夜。

残業もそこそこに帰ってくる。
家の前に着くと空腹を誘う香りがする。

玄関を開けて。
ぎゅっとそっと抱きしめて。

ただいまのキス。
おかえりのキス。



おわりおわり!!

書いてて腹が立ってきた。

こんな理想的な夫婦いるか!!


確かにこれは俺の理想なんだけど、
理想は理想でしかなくて、
どこをどう頑張っても
こんなの現実にならない。


そもそも専業主婦の設定が
今の俺の稼ぎじゃ無理だ。

朝だってそんなに余裕をかませない。
ギリギリまで寝ていたいもの。眠たいんだもの。
何人たりとも俺の眠りを妨げる奴は許さん。


そんでそんなに都合よく、
程よい感じの料理を作ってくれるオナゴなどいない。
夫婦の味はどちらかの妥協のもとに成り立っている。

はい、いま俺、いいこと書いた!
核心を付くこと書いた!


そんでなに?
いってきますのキス?
いってらっしゃいのキス?

少女漫画か!ライトノベルか!
いやいや今時、ラノベでもこんなのは
「童貞の発想」として扱われるレベルだ!!

羨ましいけどね。
そんなのしてくれる奥さん、どこにもいやしねえ。


いろんな経験を重ねるほどに、
はたまた年齢を重ねれば重ねるほど、
現実っていうものが重く冷たく見えてくる。

そもそも俺はまだ結婚すらできてない。
このご時世、この日本。これからの将来。
一生その人と子供を守れるほど稼げる保障がない。


共働きならいいのかも知れないけど、
いかんせん俺は自分の親が共働きじゃないから、
共働きという概念がしっくりこない。

俺が余裕あるほどにちゃんと稼いで、
奥さんは好きなことしてそれを極めてってのが理想だ。
というか、そういうビジョンしか見えない。


だから結婚できない。

負のスパイラル。ぐるぐるぐる。

デフレスパイラル。ぐるぐるぐる。


せめて、せめて、せめて。

娘から嫌われず、息子から尊敬されて、
奥さんから愛され続ける。

そんな家庭を築きたいとは思うけど。


その時点で結構ハードルが高い。
子供が2人いる前提になってるし。

俺を愛し続けてくれる以前に
俺に愛想を尽かさない人を見つけるのも困難だ。


あーあ。

あーあ。

あーあーあ。


書いて損した。損した書いて。


理想的な夫婦像を書くつもりが、
現実を逆に見つめる結果になってしまった。


んー。


夢があるうちに、現実をそんなに知らないうちに
勢い任せに結婚しておくべきであったな。



はっはっは。