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104期蓮ノ空の展開に関する一考察(筆者が供給の調整とどう向き合ったか)

※当該記事は、2024年8月15日(木)時点で執筆されており、同日夜のかほめぐ合宿ラジオ配信までの出来事を軸に記述しています。


0 はじめに

 「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ」は、2023年3月のデビューミニアルバム「Dream Believers」発売を皮切りに活動を開始した、声優・ゲーム・配信コンテンツである。
 石川県金沢市を舞台に、スクールアイドルという部活動が定着し過去にはラブライブ!大会優勝経験もある伝統校「蓮ノ空女学院」に通う少女たちを主役として展開される。

 サービス開始前は「バーチャルスクールアイドル」というキャッチコピーが先行し、いわゆるVTuber界隈に今更後追いで企業参入しようとしているのではないか、という印象を抱かれてしまってもいた。
 しかし、サービス開始後は、丁寧な物語描写とキャラクターによる配信の頻度・内容の充実さ、キャストのパフォーマンス力の高さ等が好評を得て、一転人気を博した。
 特に2023年12月に開催された異次元フェス(アイドルマスターシリーズとラブライブ!シリーズの、初の合同ライブイベント)以降は急速に注目を集め、オタク界隈・サブカル界隈における世間的知名度を高めるに至っている。

 そんな蓮ノ空だが、2024年度(104期)に突入すると、前年度と比べて様々な面で供給量や頻度が削減される形となった。特に年度当初の4月~5月頃は、ユーザー間でも憶測が飛び交う中、供給の減少を残念に思う声や不満を漏らす声も少なからず見受けられる状況であった。
 また、3rdライブツアーの会場キャパシティについても、大きく物議を醸したことは記憶に新しい。何なら筆者の知る限り、蓮ノ空のユーザー界隈が最も荒れた空気になったのが、3rdの会場発表の件であると言っても過言ではない。

 これらの事情の背景について、いま一度改めて整理したい。記事の題材が題材なので、蓮のファン(正式には“蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさん”と呼ぶが、流石に長いので割愛させていただきたい)の方には不快に感じられたり、そこまでいかずとも残念な気持ちを再発させてしまう恐れがあることは、筆者も承知している。
 無理のない範囲で、お読みいただければ幸いである。

1 具体的な供給減の内容について

① 配信関連

 まず大きいものとして、月末開催のゲーム内生配信ライブである「Fes×LIVE」の回数が挙げられる。2023年度(103期)は4月から翌年3月まで、毎月の末日に定期開催されていた。同月にリアルのキャストライブやイベントがあろうと関係なく、である。
 それが104期からは、4月末のオープニングFes×LIVE、7月末の1st Term Fes×LIVEというように、3か月毎の開催へ変更された。これにより、5月と6月は活動記録上や実装カードのセリフ上では、ライブを行い新曲のパフォーマンスを披露したという趣旨の描写がなされるものの、蓮ファンが実際にライブという形でそれを楽しむ機会が用意されない形となる。
 特に6月は蓮ノ空3大文化祭の1つである撫子祭の月であり、103期はここで人気楽曲「DEEPNESS」の披露を含む評判の良いFes×LIVEが開催されたこともあって、撫子祭でのライブ披露が実現しなかったことを憂う声が見られた。

 また、毎週3回行われるWith×Meetsについては、開催頻度は基本的に変わっていないのだが、一度に出演するメンバーの人数が減っているという指摘が時折なされる。特に取沙汰されたのが、メンバーの誕生日をお祝いする配信の際に、ユニットメンバーしか出演しなかったケースだ。
 103期は各メンバーの誕生日配信に、その時点で部に加入している他のメンバー全員が出演していた。藤島慈がストーリー上で復帰した8月以降は、誕生日配信やFes×LIVE振り返り配信については6人フルメンバーが基本となっていたのだ。
 104期では、4月の最初に行われた新入生お披露目配信で、新入生を含む9人全員が出演して以降、長らくフルメンバーでの配信は行われていなかった。2回目のフルメンバー配信が実現したのは、8月になってからのことだ。
 蓮ファンの中には、5月22日の日野下花帆の誕生日を、昨年の同日時点で未加入だったみらくらぱーく!の2人が今年もお祝いできなかったことを嘆く者も見受けられた。
(補足すると、With×Meetsにはスリーズブーケしか出演しなかったというだけで、他のユニットメンバーもちゃんと誕生日のお祝い自体はしてくれたという旨の発言を、花帆本人がしている)

 なお、Fes×LIVE回数が減ったこと自体は悲しいとした上で、ライブ以外の日常の学校生活や文化祭の裏側を知られるWith×Meetsが行われたことは、キャラクターたちの生活の奥行を垣間見る機会として良かったと評価する声も一定数存在する。
 Fes×LIVEの開催前後は意気込み配信・振り返り配信で各1回分の配信枠が費やされたり、開催日程によっては通常ローテから外れて次回With×Meetsまで間隔が空くケースもあったのだが、今年度5月、6月についてはそれらが無く、ローテ通りかつ多彩な内容の配信が実施された。

② リンクラ内のカード実装枚数

 103期は、1回のガシャ更新につきUR2枚、SR2枚の4枚体制による新規実装というのがペースであった。また、毎月2回、個人戦とサークル対抗戦が開催されるイベント「ライブグランプリ」では、ランク報酬としてURとSRが1枚ずつ、各回計2枚が配布されていた。
 104期は春限定Vol.1~6、夏限定Vol.1~6までの各ガシャにおいて、新規実装カードは2~3枚に留まり、4枚同時実装のガシャは存在していない。レアリティ分布はガシャによって分かれており、URとSR1枚ずつの時もあればUR2枚の時もあり、UR2枚+SR1枚というパターンもある。
 ライグラ報酬については、月の前半~半ば頃に開催の個人戦ではSR1枚、後半のサークル戦ではUR1枚の配布となり、こちらは純粋に昨年度比で毎月2枚の減に当たる。

 カード実装枚数の減については大きく2つの点で不満の声が聞こえている。1つは、シンプルにカードイラスト・ボイスの供給頻度が減っているという点だ。リンクラおよび蓮ノ空というコンテンツにおいて、カードの入手時と特訓時(1、2)に解放されるボイステキストもまた重要な情報源であり、キャラクターの心情や関係性、カードイラストの衣装やシチュエーションなどの背景を補完するものとなっている。
 元々、104期に入りメンバーが増えるということは、103期水準のカード実装ペースだと各メンバーのカード供給頻度そのものは減ってしまうという点を気にかける蓮ファンも存在していた。人数が増えているにも関わらず実装枚数は反比例で減るという事態までは、予想していなかったのだ。

 もう1つは、シーズンファンレベル(S Fan Lv.)というシステムに係る不満である。こちらは主にライグラへ注力して臨むユーザーにとって重要な要素となっており、端的に言うと「1か月の間に何かしらの条件を達成すると、その期間中のキャラクターのレベルを上げることができ、レベルに応じてライグラのポイントに補正が係る」というものだ。
 この条件というのが、With×Meetsでギフトを送り獲得する星を振り分ける、新規カードを入手する、カードを特訓する、カードを凸(解放)するの4項目なのだが、カード実装枚数が減るということは後者3項目を達成する機会が減るということに直結してしまう。
 1回のWith×Meetsで送れるギフトポイントには上限があり、かつ配信に出演するキャラの回数が必ずしも等しいとは限らないため、ギフトで上げきれなかったキャラのS Fan Lv.を上げるにはギフト以外の手段を採る必要があるためである。

③ 楽曲のリリース頻度

 103期の蓮ノ空の展開において、ファンから支持されていた要素の一つが、新規楽曲の発表頻度とタイトル数である。以下に、103期にCDや配信でリリースされた楽曲数をまとめる(インスト版は曲数に含めない)。

  • 2023年

    • 3月:「Dream Believers」6曲

    • 4月:「Reflection in the mirror」3曲、「Sparkly Spot」3曲

    • 6月:「Holiday∞Holiday/Tragic Drops」4曲

    • 8月:「眩耀夜行」3曲、「Mirage Voyage 」2曲(「DEEPNESS」は両シングルに収録のため重複除外)

    • 9月:「夏めきペイン」10曲

    • 11月:「素顔のピクセル」3曲、「Take It Over」3曲、「アイデンティティ」3曲

  • 2024年

    • 1月:「Link to the FUTURE」3曲

    • 2月:「Special Thanks/青とシャボン/ミルク」3曲

    • 3月:「Colorfulness/ハッピー至上主義!/Pleasure Feather」3曲、「以心☆電信」3曲

    • 4月:「抱きしめる花びら」2曲(4月発売だが3月度Fes×LIVE披露曲なので、103期楽曲として計上)

 以上である。ユニット楽曲、全体楽曲入り混じりながら、合計すれば実に55曲もの新曲を、103期だけでリリースしている。歴代のラブライブ!シリーズ作品を振り返っても、初年度でこれだけの楽曲を発注・制作・発売したタイトルは存在しない。
 同年10月から3会場に渡り開催された1stライブツアーにおいて、既にセトリ落ちする楽曲すら存在したレベルである(ライブのセトリは原作再現など色々な要素込みで設定していると思われるので、必ずしも曲数の多さだけが理由ではないであろうことは補足しておく)。

 それに対し、104期にリリースが発表されている楽曲は、7月時点で下記の通りだ。

  • 2024年

    • 4月:「Dream Believers (104期 Ver.)」6曲(9人Ver.曲も1曲に計上)

    • 7月:「Bloom the smile, Bloom the dream!」2曲

    • 9月:「月夜見海月」2曲、「タイトル未定(ドルケストラ)」推定2曲

    • 10月:「タイトル未定(みらくらぱーく!)」推定2曲

 ドルケとみらぱの「タイトル未定」となっているシングルの収録曲数については、同じく当初タイトル未定だったスリブの「月夜見海月」が2曲収録だったことから推定した。
  見ての通り、楽曲のリリース頻度も曲数も、2023年度の同時期と比べるとかなり減っている。また、収録内容についても、7月度Fes×LIVEで披露された「月夜見海月」の音源リリースが9月であったり、4月度の時点で披露されていた104期NEW Ver.の各ユニット曲がやはり9月~10月のリリースであったりと、ゲーム内での披露から音源の発売までのタイムラグが、前年度よりも長くなった。

 なお、現時点では「ココン東西」や「千変万華」など、アレンジはされず純粋に歌唱メンバーが増えたVer.の既存曲フルVer.について、音源リリースの目途は明かされていない。
 同様に、103期に引き続き不定期ながらアプリ内で実装されたり、公式Youtubeチャンネルにアップされているカバー曲(ラブライブ!関連楽曲・その他のアニソンなど問わず)についても、フルの音源リリースはされていない状況である。

 楽曲の供給頻度減は、大多数の蓮ファンから残念がる声が挙がっている要素だ。彼らの多くは103期の尋常でない楽曲供給を浴びて今に至るため、前年度相当の供給を期待していた者にとっては梯子を外されたように感じても無理はない。
 前述の通りFes×LIVE開催頻度が減ったこともあり、「新曲を聴ける機会」「新曲のパフォーマンスを楽しめる機会」自体が少なくなってしまっている点もこれに拍車をかけている。
 7月にリリースされ、リリックビデオも公開されている「Bloom the smile, Bloom the dream!」は、104期生3人のカードとしてもゲーム内実装されているが、7月度Fes×LIVEでは披露されなかった。新曲の追加頻度が少なく、かつその新曲もFes×LIVEでのお披露目がいつになるか分からないという状況が、現状ネックとなっている。

 ただし、103期も「Regato」のようにかなり終盤になってから満を持してFes×LIVE披露された楽曲は存在するし、「明日の空の僕たちへ」や「Mix Shake!」のようについぞ披露されなかった楽曲もそれなりに多い。
 リリースされた楽曲が必ずしもキャラクターとしてパフォーマンスされるとは限らない、という意味で捉えると、この点に限っては前年度と変わりはないと言える。

④ その他の供給

 この項目については、2024年6月以降は解決している内容となる。

 103期は、毎週金曜日の更新を基本として、キャストが出演する配信動画「せーはす!」がYoutubeにアップされていた。3月29日の更新を最後に、年度切り替えに伴う番組リニューアルの準備として、一時更新がストップ。2週間空いた後、4月19日に104期第1回の動画更新が行われるに至った。

 ところがその後、6月14日公開の104期第5回配信まで、「せーはす!」の更新頻度が隔週へと変更になったのだ。これは事前告知などがなく、また「せーはす!」自体が次回予告に際し更新予定日までは明示しない番組構成であったことから、前年度通り毎週動画がアップされると思っていた蓮ファンの間に困惑と動揺が巻き起こる結果となってしまった。
 その後も公式XアカウントやYoutubeチャンネル上での、頻度変更に関するお知らせなどはないまま、4月~5月の間は隔週更新が続くこととなる。この点については、事前に公式から告知してくれていれば普通に受け入れられたのに、何も言わず急に供給頻度を減らされたからショックを受けた、という蓮ファンが多い。
 仮に、いつから通常の頻度に戻るのかまでは明言できなくとも、「当面の間、更新の頻度が減ります」という旨のお知らせだけでも正式に欲しかった、という意見も見受けられた。

 なお、6月14日以降は、前年度と同様に毎週配信へと頻度が戻っており、8月9日現在までその体制で続いている。


2 ライブやイベントの会場選定(収容人数)やコンセプトについて

 104期に開催が告知されていた3rdライブツアーについて、その会場が発表されると同時にSNSの蓮界隈がざわつく事態となった。103期も含め、具体的な会場と収容人数(キャパ)を見ていくと、以下の通りとなる。

  • 2023年

    • 「Dream Believers」リリイベ:豊洲PIT(スタンディング約3,100人、着席約1,300人)

    • オープニングライブイベント:パシフィコ横浜国立大ホール(約4,500人)※2公演

    • 1st福岡:西日本総合展示場新館(約7,000人)※2公演

    • 1st東京:武蔵野の森総合スポーツプラザメインアリーナ(約10,000人)※2公演

    • 1st愛知:愛知県国際展示場ホールA(約6,500人)※2公演

  • 2024年

    • 2nd千葉:幕張メッセ国際展示場1~3ホール(約25,000人)※2公演

    • 2nd神戸:神戸ワールド記念ホール(約8,000人)※2公演

    • みらぱラジオ公録:ヒューリックホール東京(900人)※3公演

    • Fes×REC LIVE:Zepp Haneda(スタンディング約3,000人、着席1200人)※4公演

    • 3rd東京(みらぱ):立川ステージガーデン(約2,500人)※2公演

    • 3rd大阪(ドルケ):オリックス劇場(約2,400人)※2公演

    • 3rd愛知(スリブ):名古屋国際会議場センチュリーホール(約3,000人)※2公演

    • 3rd神奈川:横浜アリーナ(約17,000人)※2公演

 ざっと並べると上記の通りである。
 今回物議を醸した3rdライブツアーの会場については、最後の神奈川公演を除き各会場3000人以下のキャパとなっている。これらは1st、2nd全5会場のいずれと比べても半分以下であり、何ならパシフィコ横浜や豊洲PITより収容人数が少ない。
 神奈川公演だけは5桁規模のキャパが確保されており、2nd千葉の幕張展示場ほどではないにしても、1st東京の武蔵野より70%増という比較的大きめの会場だ。

 この件については、大きく2つの観点から不満の声が挙がった。
 1つ目は、純粋にキャパシティが足りないという意見である。冒頭でも軽く触れたが、蓮ノ空は異次元フェスを皮切りに急激に知名度を伸ばしており、2ndライブツアーのチケット争奪戦はかなりの激戦となった。
 関連商品やコラボグッズなどの人気も高く、例えばドン・キホーテコラボの商品が発売開始日の午前中に枯れ果てた結果、受注生産販売が急遽決定されたことは記憶に新しい。
 現状の蓮ノ空の人気や支持層の多さに、3rdライブツアーの会場キャパシティでは到底対応できず、現地参加が叶わず涙する蓮ファンが大量に発生するだろうと予想されている事態だ。
 無論、どんなに大きな会場を押さえたとしてもすべての希望者が現地当選する可能性は低いし、現地でステージの観にくい席に当たるのと比べれば配信視聴の方が楽しみやすくて良いとする人も居る。

 とはいえ、大多数のファンにとって、ライブは現地で聴くのが楽しく、会場は大きいに越したことはない、という点は共通認識であろう。

 もう1点は、ナンバリングを冠したライブでありながら、規模感が小さいという声だ。
 1st、2ndライブツアーでは全公演とも全ユニットが出演したが、3rdライブツアーはユニットごとの公演を1会場各2公演ずつ、最終の神奈川公演のみ全ユニット参加という形式であることが発表されている。
 ユニット単位でのライブツアーという形式自体は、他のラブライブ!作品でも開催経験はあるのだが、作品タイトルのナンバリングライブと銘打った上で、ユニット単位での公演を行うケースは今回が初となる。
 この点について、各ナンバリングのライブはそのタイトルにつき1度きりずつだというのに、ライブ内容がこじんまりとしたものに納まってしまうのは残念である、という考えを持つファン層は一定数居る。

 また、ユニット単位の公演については、各会場とも同日中に2公演開催となっている。1回目の開演と2回目の開場の間隔は180分となっているが、観客の入れ替えや会場の原状復帰、拾得物の確認などといった対応が必要な点を考慮すると、実質ライブ時間は120~150分程度ではないかと推測されている。1st、2ndがいずれも180分超えの大ボリューム公演だったことを思うと、この点も気になるというファンも居る。
 とはいえ、逆に言うとユニット単独で150分規模というのは結構なボリュームであるし、103期曲から104期曲まで数多あるユニット曲を存分に楽しめる可能性も高い。キャパ問題は不満なれど、ライブ内容そのものには期待する蓮ファンが当然ながら多いのは事実だ。

 なお、ライブメインのイベントではないが、みらぱラジオの公録についてもかなりの小規模会場となっており、落選に嘆く蓮ファンが多い結果となっている。同じくラジオ番組の公録イベントだったAqours(わいわいわい)の「バブ卒大集合」などは複数会場で開催されたもののいずれも4桁単位のキャパが確保されていたため、ここでも会場選定を恨めしく感じてしまう蓮ファンは存在する。
 Fes×REC LIVEもキャパは多くないが、こちらは103期Fes×LIVEの再構成(総集編?)というコンセプトから通常規模のライブとは別物のイベントだろうという認識がある程度浸透している。そのためなのか、3rdライブツアーやみらぱ公録と比べるとそこまで荒れた空気ではない。

 キャパの観点、ライブコンセプトの観点のいずれにも共通するのは、蓮ノ空というコンテンツの独自性に由来するネックが、潜んでいるということである。

3 リアルタイムスクールアイドルカレンダーというコンセプト故の難しさ

 蓮ノ空はその展開において、常々リアルタイム性やライブ感といったものを前面に押し出してきたし、蓮ファンたちもそんなコンセプトに魅せられて蓮を追うようになった者が大半であろう。
 With×MeetsやFes×LIVEでは、キャラクターと視聴者が相互にコメントでやり取りを交わせる。リアルライブでは、直近のFes×LIVEで披露された楽曲をアンコール枠としてセトリに組み込む。
 そしてキャラクターたちは、リアルタイムで誕生日を迎えるごとに年齢を重ね、4月を迎えれば学年を1つ上っていく。キャラクターたちの1年と、それを追う蓮ファンたちの1年は同じ流れの上にある、というのが、蓮ノ空最大の売りであり魅力となっているのは、疑いようがない。

 だからこそ、ここまでの記事内で挙げてきた諸々が、小さくない問題点としてファンの間で取り沙汰されるのである。

「限られた時間の中で、蓮ノ空を追える楽しみや喜びの機会が、失われること」

 蓮ファンたちが何よりも恐れているのはこの1点に他ならない。
 蓮のコンセプト上、102期生の3人は2025年3月末を以て蓮ノ空女学院を卒業し、活動記録の表舞台から姿を消すことになる可能性が、現状極めて高い。104期蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブという9人が揃って活動できるのは、残すところ半年ちょっとなのである。

 にもかかわらず、Fes×LIVEの開催頻度が減ったことでキャラクターのパフォーマンスを鑑賞できる機会が減る。
 カード追加枚数が減ったことで、その分キャラクターの掘り下げや発言の機会が減る。
 楽曲追加頻度が減ったことで、キャラクターの新曲を味わえる機会が減る。
 あらゆる供給減が、蓮の持つ不可逆なリアルタイム性においては無視できない損失に直結するのだ。

 リアルのライブについても同様で、104期として行う3rdライブツアーはこの1度きりであるのに、チケット競争率が熾烈を極め、現地参加が叶わないという未来に、多くの蓮ファンが怯えている。
 過去のラブライブ!作品でも、メンバーの進級や新メンバーの加入はあったが、「作中で卒業したメンバーがライブに出演しなくなる」という前例は今のところ存在しない。
 一方で蓮ノ空は、まだ確定してはいないものの、キャラクターの卒業によってそれを演じるキャスト自身もリアルライブへの出演頻度が減るのではないか、という懸念が存在する。
 となれば、数少ないライブの機会は可能な限り現地参加を逃したくない、というファン心理が湧くのはごく自然のことであろう。

 104期に突入して以降、供給面やライブのキャパについて界隈の空気が穏やかでないものになった背景には、蓮ノ空の持つ魅力とそれを愛するファンたちの情熱そのものが強く関係していると言える。

4 プロジェクトの運営、ゲーム開発運営などからの説明不足に起因する不安

 筆者個人の考えとしては、104期初旬に巻き起こったファンたちの混乱や困惑は、運営チームからの説明や情報共有が十分でなかったことも原因の1つと認識している。

 まず最も影響の大きいFes×LIVEの開催頻度減についてだが、これが発表されたのは2024年3月19日のリンクラ生配信(キャストによるYoutube配信番組)だ。この配信内ではリンクラの大型アップデート情報として、新要素「Grade」の導入とそれに伴うコンテンツの追加、仕様変更が明らかになった。
https://www.youtube.com/watch?v=XB5g0x-FcMk

 動画の26:19辺りに説明画面が出ているのだが、そこでは「5月以降3か月スパンでTermが設定されこの期間内に獲得したTerm Grade Pt.を集計。その合計によって獲得できるFes×LIVEチケットランクが確定」と画面下部に小さく記載されている。
 そして、出演キャストによって説明原稿が読み上げられる中で、「Fes×LIVEチケットランクの確定方法の変更に伴い、Fes×LIVEの開催も各Term毎となる」という旨の補足説明が飛び出した次第だ。

 この説明がなされた時点で既に、動揺するYoutubeコメントやSNS上でのポストが散見されていた。この後はそのまま新コンテンツ「Grade Live」の説明に画面が切り替わり、Fes×LIVEの開催頻度についてそれ以上の言及は行われていない。
 番組終了後には公式Xアカウントで、番組内で表示していた説明画面の画像を投稿しつつ発表内容の再周知を行ったものの、「Fes×LIVEが3か月毎の開催に変更される」という文言が画像なりポスト本文なりに明記される形で残ることはなかった。

 この発表内容と発表方法について、コンテンツにとってかなり重大な方針転換であるにも関わらず、さりげない説明だけでお茶を濁そうとしている、という風に蓮ファンたちが感じてしまうのも無理はない。
 説明画像には「3か月スパンでTermが組まれ、Term毎にFes×LIVEチケットのランクが決まる」としか書かれておらず、パッと見では「Fes×LIVEが3か月毎の開催に変更される」という事実に繋がりにくいからである。
 生放送のアーカイブ自体はいつでも公式チャンネルから観返せるので、前述の出演キャストが読み上げた補足説明部分は後からでも確認できる。とはいえ、そもそも運営レターなどの形ではっきりと明言していれば、反発や残念がる感想は避けられないにしてもここまで紛糾する事態は防止できたのではないだろうか。

 また、カードの実装枚数の減少については、公式からの告知は一切ない。元々、1回のガシャ更新で何枚カードを実装するかなどはわざわざ明言していなかったので、実装枚数を減らすとしてもそれを明言する義務はないとは言える。
 かといって、103期の1年間、概ね一定の頻度と枚数を維持して新規カードを実装してきた経緯がある以上、何も説明がないということは前年度通りのペースで104期もカードが実装されていくものと思うのは自然である。

 これはせーはすの更新頻度の件も同じで、事前の告知無しに供給ペースを変更されることがファンに与える不安感・不信感を、もう少し考慮すべきだったのではないか、と筆者は考える。
 確かに事前告知する義務はないかもしれないし、告知することで反感や批判意見を受ける可能性もあるが、告知しておくだけである程度は飲み込んで受け止めてくれるファンたちも多数居たのではないだろうか。

 一応、103期の12月に発売された「FISRT FUN BOOK」内のスタッフインタビューの時点で、供給量の変更についてはうっすらと匂わされてはいた。当該記事はインターネット上でも全文公開されており、現在も閲覧可能だ。

佐藤:一方で、1年目はなにもかもが手探りの状態で最大限のものをお出しする状態でした
が、今後は諸々の最適な頻度や活動量を探っていければと考えています。

https://gs-ch.com/articles/article/arTe475p4y8wBMNiUBbqimcf

 リンクラプロデューサーの1人である佐藤一樹氏のコメントである。前半の1年目云々については、蓮ファン全員が頷くことだろう。103期のリンクラ/蓮ノ空の展開は、正に「手探りで最大限に供給しまくる」という運営スタンスであった。
 12月に公表されたインタビューの時点で、「今後は諸々の最適な頻度や活動量を探っていければ」と明言しているということは、104期の供給についてこの段階から既に内部で調整していたであろうことが窺える。

 というか実のところ、103期後半のFes×LIVEの段階から、曲数が抑えめになるという形で負担軽減策が取られていたりする。8月度、9月度は7曲ずつ、10月度はFes×LIVE本編6曲に加えて地区予選エントリー曲3曲の計9曲が披露されたのだが、11月以降は各回5曲披露に留まる形となった。
 無論、12月度は活動記録上でも触れられた通信量の問題上、長尺は取れないということが設定上無理なく通るし、1月度と2月度は完全新曲が各3曲ずつ含まれるセトリなので、新曲の振り入れ等も考慮した上でのセトリ構成ではあっただろう。
 3月度はFes×LIVE本編では4曲、Afterパートでアンコール1曲の計5曲と、蓮華祭かつ年度最後のFes×LIVEとは言え、やはり曲数自体は控えめに終わった。

 こうした背景を踏まえると、供給減に絡む事前情報が完全に0であったわけではない。とはいえ、実際に年度が替わり供給量を調整する段階に来たところで、今一度この点について蓮ファンへきちんと伝える機会を設けておくのも手ではなかっただろうか。

5 安定展開の難しさ、および展望見極めの難しさ

 ここからは多分に筆者の推測・憶測が割合を占める内容となるので、どうかすべてを真に受けるのではなく、ネットのオタクの一考察と思ってお読みいただきたい。
 ここまで書き記してきた、104期蓮ノ空の展開に関する出来事と問題点について、ではなぜこのような体制になっているのかを考察していきたいと思う。

① 蓮ノ空のコンセプトに由来する、安定展開の難しさ

 103期の供給頻度や展開の多彩さについて考えると、恐らく蓮ファン全員「1年目は正直異常だった。絶対ムリして運営してた」という意見で合致するのではないだろうか。
 実際、前掲のインタビュー内でも触れている通り、活動記録と配信の設定同期、キャストの体調不良に伴う緊急対応、実在性とライブ感の徹底追及……という風に、蓮ノ空は留意すべき事象が多岐に渡っている。

 特にキャストの体調不良については誇張抜きで死活問題であり、例えば新型コロナウィルスにキャストが罹患して配信中止が続いた時期に関して次のように語っている。

佐藤:あの時は不幸中の幸いというか、一番クリティカルなタイミングは回避できたんです。もし1週間ずれていたら……リカバリーは不可能になってしまっていたかもしれません。常にそういう緊迫感があるプロジェクトですね。「やり直し」ができないので。

https://gs-ch.com/articles/article/arTe475p4y8wBMNiUBbqimcf

 蓮ノ空の場合、ボイスや楽曲の収録はもちろん、週3回の生配信と月1回のライブの比重がコンテンツにおいて極めて大きかった。またリアルタイム性を重視する関係上、起きたことを後から設定修正することもできないという意味で、トラブルに対する「やり直し」が利かない。
 上記のインタビュー文章は、無事に窮地を乗り切った今だからこそ「あの時は大変だったんだな……!」とファンの間で苦労話や笑い話にできるものだったが、運営サイドにとっては修羅場の記憶に他ならないであろう。

 感染症などを抜きにしても、毎週3回のキャラ名義による生配信と月末の配信ライブに加え、リアルのライブの準備や外部イベントへの出演も多かった103期の歩みを見れば、キャストはもちろん運営スタッフやライブ・イベント対応スタッフの負担とプレッシャーも相当のものであったと察せられる。

 かといって、例えばMCやトークのみをキャストに分担してもらい、ライブシーンは事前収録したモーションを使うであったり、モーションキャプチャー担当をアクターへ別途依頼するなどといった負担軽減案は、前掲のインタビュー内で明確に否定されている。
 また、With×Meetsの開催頻度についても綿密に協議を重ねた上で、現行の週3回という形に落ち着いたと記載がある。With×Meetsは活動記録と現実の時間軸を同期させる重要な役割を持つため、休止になることの影響は大きい。
 キャスト自身がキャラクターのアクターも担当し、生配信とライブを行うというリアルタイム性やライブ感は、「コンセプトというより必須事項」とまで書かれており、蓮ノ空というタイトルを展開する上で絶対に外せない根幹要素として組み込まれているのだ。

 となると、キャストやスタッフの負担を軽減する手段としては、リアルのイベントやライブの回数、外部イベントへの露出といった方面を削ってリンクラ内の配信の方へ注力するか、逆にFes×LIVEの頻度を減らして「毎月生ライブを実施」という点の負担を無くすかの2択となる。あくまで推測ではあるが、検討の結果、後者が選択されたのではなかろうか。
 これについては、現実に蓮ノ空が大きく評判を伸ばしたのが他ブランドとの合同イベントである異次元フェスだったことを踏まえると、リアルイベントの方を重視するスタンスは妥当な選択だったと言えなくもない……のかもしれない。

 また、With×Meetsの出演人数が103期に比べ少なくなっているように思われる点については、配信回数を据え置きにしつつ、人数が増えた分の出演ローテに多少の余裕を持たせることで、こちらもキャストの負担軽減に多かれ少なかれ繋がるものと思われる。
 実際、104期に入ってからのWith×Meetsにおいて、8月15日時点では急遽の中止も、出演メンバーの交代も発生せず、スケジュール通りに配信が行われている。
 さらに、乙宗梢の誕生日配信では生出演をスリブに絞りつつも、ビデオレターという形で他のメンバーを登場させるという妙手を打ってきた。ビデオレター組については前録りでも問題ないため、前述の課題点を上手く調整した形となる。

② 103期の展開実績から見る104期展望の見極めの難しさ

 一方、カードの実装枚数や楽曲のリリース頻度については、完全な想像になる上に身も蓋も無い推測になるが、単純に予算との兼ね合いではなかろうか。

 度々参照させていただき恐縮だが、前掲のインタビュー内でアニメ化などのメディアミックスの可能性について尋ねられた際、「蓮ノ空は仕組み的にアプリでないと成立しない」「リンクラは生配信を通じてキャラクターたちを好きになってもらうプロジェクト」という旨の回答がなされている。
 103期の怒涛の展開により、蓮ノ空にハマるファンたちが1年かけて確実に増えていったのは間違いない。だがその一方で、103期の展開にかかったであろうコストについては、「過剰投資」「採算度外視」なものだったのではないかと、ファンの間でさえ噂される。
 その最たる例が、リンクラアプリのアーリーアクセス版リリースである。

 リンクラは2023年4月からのサービス開始を予告していたものの、実際にはアーリーアクセスという形で先行リリースされ、正式版のリリースは5月までかかることとなった。
 このアーリーアクセス版には、有償ガシャや課金アイテム購入といった収益に繋がる要素は何一つなく、ただ活動記録と配信を視聴するためのアプリであった。当然だが、この期間はサーバー代や保守点検費といった維持コストだけが発生し、売上は一切上がらない状態となる。

 また、筆者自身もリンクラをプレイしていて思うことなのだが、そもそもこのアプリは「潤沢に予算を投じてリッチな仕上がりにし、育成要素や対戦要素を充実させて、いわゆる“覇権”ゲーとなること」を目的には作られてはいないと思われる。
 モーキャプによる3Dキャラの生配信と、それに対するコメント投稿やプレゼント贈答といった機能を、外部の動画配信プラットフォームに頼らず独自に調整して賄えるアプリを用意するというのがまず大目的。
 それだけでは収益に繋がらないからガシャを実装してカード収集要素を確保し、その引いたカードの活用方法として育成要素とスクステ(およびライグラ)を実装した──そんなアプリである印象を受ける。

 そのため、初年度こそ固定ユーザー層の土台作りもかねてカード供給頻度をハイペースにしたものの、2年目からは1年目相当の予算を確保できなかった可能性がある。
 カード実装と簡単には言うが、1枚のカードをデザインするのにはイラストの発注、テキストの発注、ボイスの収録、性能デザインの検討、システム上での構築といった工程が必要であり、ノーコストで新規カードを用意できるわけでは当然ない。
 無論、Grade Liveやアイテム交換の実装など、104期になって新たに追加された要素もあるので、一概に予算がカットされたとも断定はできない。103期のゲームプレイ感からマンネリを抱かせないために、新要素をアップデートしていく方針自体は運営計画にしっかり盛り込んだ上で、限られた予算上限の中で使途の割り振りを吟味しているものと推察される。

 なお、覇権ゲーを目指すリッチなつくりのアプリではないとは書いたが、筆者自身は3Dモデリングのクオリティもギフトやアンケート機能を備えた配信形態も素晴らしいと感じているし、競合の多いリズムゲームではなく独自のカードゲームを構築しているスクステも意欲的でやり応えがあると考えている。

 楽曲のリリース頻度や数も同様のことが言える。前述の通り、年間で55曲もの新曲リリースというのは、実績のない新規タイトルが行うには過剰な施策である。
(無論、ラブライブ!ブランドという意味では歴史と実績があるものの、蓮ノ空という新規タイトルとして見れば流石に無実績と言わざるを得まい)

 当然ながら、新曲を1つ発注するのにも様々なコストはかかってくる。素人の筆者が思いつく限りでも、作詞家・作曲家・編曲家への各発注、歌唱キャストへの収録依頼、パッケージデザインの発注、商品製作など多岐に渡るし、実際にはもっと細かな調整や工程が無数にあるものと思われる。
 地盤づくりに全力をかけた初年度に対して、2年目はやや抑えめに展開していくという判断を選ぶことは十分考えられる。

 Fes×LIVEの開催頻度か、楽曲のリリース数か、せめてどちらかだけでも前年度相当を維持できていれば良かったのに……という趣旨の感想も目にする機会はある。しかしながら、こと蓮ノ空というプロジェクトにおいてこの両者は切り離せないコンテンツであり、「両方とも維持する」か「両方とも削減する」かの2択から選ばざるを得なかったと思われる。

 Fes×LIVEを毎月開催するなら、それに伴い毎月ユニット曲なり全体曲なりを計3曲前後は制作する必要が生じるし、CDリリースのタイミングによってはカップリング枠として別途新曲を追加することも検討しなければならない。
 一方でFes×LIVEとの相乗効果によって楽曲の人気が高まり、CDの売れ行きや配信のDL数が好調に伸びていくことが予想されることから、Fes×LIVE回数を削減するのに楽曲リリース頻度だけを103期水準で維持するのは、費用対効果の観点で厳しいものがあるのだろう。
 103期もFes×LIVEで披露されず終いだった楽曲はあるが、全体で見れば多くの楽曲はFes×LIVEが初出だったり、後から効果的なタイミングでFes×LIVE披露されていた。

 最後に、ライブやイベント会場の選定問題についても、103期の活動実績が如実に影響している要素と言わざるを得ない。
 一般的に、ライブ(イベント)会場の予約は希望日の1年~半年前から受付を開始する施設が多いとされる。5大ドームなど大規模な会場の場合はさらに細かい条件などがあるとも聞くが、例えばこの度3rdライブツアーの最終公演を飾る横浜アリーナなどは、公式HP上にて「ご利用予定日の1年前からお申込み受付を開始」と明記されている。

 となると、3rdライブの会場選定にあたっては、2023年の10月~11月辺りには動いておく必要があり、この段階で「2024年の蓮ノ空はどの程度の規模を想定すべきか」を暫定的に判断しなければならないのだ。
 ここで参考となるのは、この時点で既にチケット申込受付を開始しており、おおよその動員人数に目星が付いていたであろう、1stライブツアーの状況である。
 とりわけ3会場で最もキャパの大きい武蔵野の森の集客予想に着目した結果、「現状の蓮ノ空の実績では、10000人規模の会場を埋めるのはハードルが高い」と見なされた可能性が高い。
 実際、1st東京公演は当日券の販売が行われる程度には争奪戦に余裕があったし、1stツアー全体を通して全通報告者や、そうでなくとも最低1公演はCDを多数積まずとも当選できたという声が当時多かったのは事実である(尤も、全通自体は友人間やSNSのフォロアー同士で同行者登録を交渉し合う形でも狙えるので、必ずしも全通報告者が全公演を自力で当選したとは限らない)。

 また、先にユニットごとのライブというコンセプトがあったのか、会場キャパに併せてコンセプトを決定したのかは不明だが、ともあれユニット単位での公演に関しては全ユニット参加の公演よりも動員数はさらに控えめになるだろうという予測が立てられても無理はない。
 実績云々を抜きにしても、そもそも前提として昨今はライブ・イベント需要に対して箱の供給が足りておらず、どのアーティスト・コンテンツにおいても広い会場を押さえるのは熾烈を極めている。元より目ぼしい会場は先約済みだったという可能性も十分に考えられる。
 その点で言えば、17000人規模のキャパを誇る横アリを最終公演で押さえられたのは良手と言える。

③ 異次元フェスというターニングポイント

 蓮ノ空の知名度と人気が爆発的に高まり、注目を集めるようになったきっかけとして、多くの蓮ファンは2023年12月の異次元フェスを名指ししている。
 実際、アプリの売上予測サイトの推移を見ても、2023年は7000万前後を行き来していたのが、2024年1月からは1億の大台を突破し、6月頃までその水準を維持し続ける状況となった。
 またDL数についても、20万DL(2023年7月6日)から30万DL(10月8日)、40万DL(1月15日)については約3か月スパンでの伸びとなっていたが、50万DL(2月18日)と60万DL(4月21日)までは1~2か月スパンと、DL数が加速していることが公式の発表日時の推移から読み解ける。

 CD売上については、ユニット甲子園や2ndライブツアーの先行シリアルが特典封入されていることもあるため一概に異次元フェス効果とは言えないかもしれないが、2024年1月発売の「Link to the Future」以降は概ね初動16000枚以上を叩き出している。
 1st東京の先行シリアル入りだった「夏めきペイン」が初動10000強だったことを踏まえると、シリアル狙いと考えてもそれだけライブ参加したい蓮ファンの需要が増えていると言える。
 ちなみに、「眩耀夜行」や「Take it Over」などのユニットシングルは大体6000~7000枚台が初動なので、「夏めきペイン」の初動10000枚というのもこの時点の蓮としては十分な売上枚数ではあった。
 このように、売上予測、DL数、CD売上枚数のいずれの上昇時期も、異次元フェス開催以降のタイミングと合致するのだ。

 蓮の知名度が高まり、人気を博したこと自体は純粋に喜ばしいことである。異次元フェスで楽曲に触れて興味を抱いた新規の蓮ファンたちが、活動記録の面白さやWith×Meetsの楽しさにハマり、キャラクターやキャストの魅力を知ってくれたのは本当にありがたいし、我がことのように嬉しいことであった。
 しかし一方で、前述の通り、異次元フェス開催後の段階では既に104期の大きなイベントの会場は選定済であったと思われることが、ここに響いてくる。人気が爆発した時には既に、激増した蓮ファンの受け皿となるだけの広い会場を押さえられるタイミングは過ぎていたのである。

 こればかりは、流石に後の祭りとしか言いようがない。異次元フェスによって蓮ノ空が跳ねるか否かは予見のしようがないし、跳ねるにしてもその伸び代の程度がまた予測困難である。
 2023年4月から、良質な活動記録と日々積み重ねてきたWith×Meets、毎月末のFes×LIVEに、せーはすやみらぱラジオといったキャスト方面の定例番組、さらには六本木サマステライブやバズリズムライブといった外部イベントへのゲスト出演など、蓮ノ空運営/リンクラ開発運営は堅実に施策を打ってきたし、それらはしっかりと蓮ファンの定着に寄与してきたものと、少なくとも筆者は考えている。

 その上で、12月の異次元フェスまで躍進の好機を掴み取れなかった、という点は認めざるを得ず、翌年度の展望を描くに辺り予算配分の決定権を持つ総合部署の方が蓮の全体的な予算振分けを決断するのは、無理からぬことだったのだろう、と推察する。そして蓮ノ空運営/リンクラ開発運営としては、決定された予算の範囲内で、104期の展開計画を立てるより他にない。
 無論、いち蓮ファンの立場から言えば、「ここまで自分たちが作り上げてきたコンテンツや、スクールアイドルと一緒にパフォーマンスを磨いてきたキャストさんたちを信じて、104期も大規模会場の確保に努めてほしかった」というのが本音だ(無責任なオタクの言い分であることは自覚している)。

 一方で、ここまで長々としたためてきた通り、「こうなるに至ったであろう背景」を推論ながらもまとめてみることで、筆者自身はある程度気持ちに整理を付けることができた。本稿をお読みいただいた方も同様であったならば幸いである。

6 蓮ノ空という意欲的なプロジェクトの、今後への期待について

 蓮ノ空が、これまでのラブライブ!シリーズとはまた違ったコンセプトから生み出されたプロジェクトであることは、前掲のインタビューによって明らかになっている。
 動画配信を中心に、キャラクターとしてファンと双方向にやり取りをするという点も、キャラクターの生活する1年間の時間軸が我々の現実の時間軸と同期しているという点も、非常に意欲的だ。

 当然、それらを推し進めていくためには、多大な労力と綿密な設定構築が必須となる。毎月の活動記録と毎週のWith×Meetsを矛盾なく連携させ、年間通して切れ目なく供給していくとなれば、それこそ365日のうち1日たりとも気が抜けない状況で、運営スタッフもキャストも日々勤めてくださっていることだろう。

 時折、蓮ファンの間で持ち上がる話題として、「蓮ノ空は果たして第何期まで現状の形で展開してくれるのだろう」というものがある。

 これについて、メインキャラの中でも主人公格に当たる日野下花帆の卒業(105期)までではないか、という意見もあれば、花帆たちの卒業後もメンバーの入れ替わりをしながら続いていく初のシリーズになるのでは、という推論もある。
 あるいは、リンクラアプリを軸にしての展開は105期で終了し、以降は過去のシリーズと同様に、定期的なライブや外伝エピソードの製作、新規楽曲のリリースといった形で展開を続けるのではないか、という予想も見かけた。

 リアルタイム性、ライブ感を根幹に作られたプロジェクトであるが故に、先行きの展開が誰にも予測できないのは、ある種の醍醐味とも言えるだろう。そもそも前述したとおり、102期生の3人の露出が2025年度(105期)以降どうなるのかについてすら、今の我々には憶測でしか判断できないのだ。
 103期生、104期生の卒業後の話など、未知の世界である。

 筆者個人としては、どういう形であろうと構わないので、蓮ノ空がその展開を続けていく限りは、こちらも可能な限り追い続けようと思っている。
 筆者は103期の1年間でとっくに蓮ノ空に脳を灼かれているし、「果たして既に完成されつつある3ユニットに新人が融和する余地があるのか?」と懸念のあった104期生加入後の、あまりに見事な各ユニット内のバランス感覚を目の当たりにして頭を垂れた身だ。
 蓮ノ空が歩み続ける限り、こちらも同じ時間を並走していく所存である。

 とりとめもない締め方になったが、この先の蓮ノ空の一層の活躍を願いつつ、本稿を終わらせていただく。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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