GRE 独学対策法
はじめに
今回はGRE対策について記載します。
海外MBA受験における学力試験としてはGMATが定番ではありますが、MBA以外の専攻で欧米系の大学院を受験する際にはGREが一般的に利用されており、近年ではMBAにおいてもGREによる出願が広まってきているようです。
世界のトップMBA校が公表している合格者のテスト選択(GMAT vs GRE)を見るとGMATでの出願割合が依然として過半を占めているみたいですが、少なくとも私が調査した限りではGREで出願しても選考上不利になることは無いと確認しているので、今後海外のMBA受験をされる方々は自分の適性と照らし合わせて高いスコアが出せる方を選んで準備されればよいかと思います。
私のGREスコアですが、Verbal157点、Quant170点、合計327点を獲得してMBA受験に臨みました。ハーバードMBAの合格者平均が326点、スタンフォードMBAが327点ですので、世界トップMBA校への出願者と遜色なく戦えるスコアを幸いにも揃えることが出来ました。特に大学時代の成績が全然良くなかった私にとってはアドミッションに対して自分の学力を証明する術としてGREで高得点を獲得することに拘っていました。尚、私費での受験でしたので受験費用を極力抑えたかったため、TOEFL同様にGREでも専門の塾などには通わずに独学で対策を行いました。
実のところ、GREの対策を開始するまでにGMATの対策を1年弱行っていました。しかし、大変残念ながらGMATがなかなか自分の肌に合わなかったため、合計3回受験したものの目標としていた700点(※)を超えることが出来ず、それが原因となり2023年秋口が締め切りのRound 1での出願を諦めねばなりませんでした。この出願を後ろ倒しにしたタイミングではかなり精神的な挫折感があり、自分はそもそもMBA受験に向いていないのかもしれないとまで考えてしまい、1週間ほどMBA受験を断念するかどうか本気で悩みました。
(※)以降も全てGMAT関連のスコアは旧GMAT換算のもの
そんな中でたまたま参加したMBA関連のセミナーで出会ったトップMBA校の合格者の方がGMATよりもGREの方が対策が簡単であったと話されており、自分も最後の望みをかけてGREに切り替えることを決断し、約3カ月の対策を経て上記のスコアを揃え、2023年冬のRound2出願に何とか間に合わせることが出来ました。対策期間3カ月はかなり短いですが、GMAT対策で培った基礎に助けられたのと、必ずRound2に間に合わせるという執念でスコアをもぎ取りに行きました。
今回は私が考えるGMATとGREそれぞれの特徴について解説するのと、私がGRE対策で使用した教材(一部GMAT)について全て公開します。今後海外のMBAを受験される方々や、MBAに限らず欧米の大学院進学に向けてGRE対策に励んでいる方々への参考となれば嬉しい限りです。
尚、私が対策していた2022年から2023年でGMATは一部テスト形式が変更されているようですので、最新の試験形式と異なる部分がある可能性はご了承ください。私が把握している変更点については出来るだけ記載します。
GMAT vs GRE
私がGMAT、GREの両方を受験して感じる両試験の特徴は以下の通りです。
尚、試験時間についてはどちらも約2時間という点は共通してしています。Analytical Writingに関しては、MBA受験においてはそれほど重視されないことから特に対策を行わなかったのと、両試験で大きく内容が異なるわけでではないかと思いますので今回は解説を省略します。
GMATの特徴
Verbalで単語問題が出題されないので、単語問題のためだけに英単語暗記に取り組む必要が無い(但し、長文読解のためには対策必要)
Verbalで長文読解問題の比重が小さめ
Verbalの論理問題の比重が大きい
Quantの問題難易度がGRE比で難しい
GREの特徴
Verbalで単語問題が出題される
Verbalで長文読解問題の比重が大きい
Verbalで論理問題は出題されるが数が少ない(1‐2題程度)
Quantの問題難易度がGMAT比で易しい
私自身がそうであったように自分の頭の使い方や得意分野に応じて、どちらかのテストでは高得点が取れるにもかかわらず、もう一方では全然点数が伸びないことは往々にしてあると思うので、これから受験される方々は上記の特徴を参考としながら是非とも両試験の問題を受けてみて適正を見極められることをお勧めします。
私はGMATであらゆる対策を講じても点数が680点辺りで頭打ちになってしまい、目標としていた700点を超えることが出来ませんでした。その一方で、GRE用の単語を暗記して約3カ月の対策でGREを受験してみたところ、GMAT換算で730点のスコアを獲得することが出来ました。もしGREに切り替えなければGMAT680点で戦わねばならず、出願先のランクも下げねばならなかったと思われます。テストを切り替えたことが私のMBA受験における一種のターニングポイントとなりました。それほどまでにテスト選択はMBA受験を左右する重要なファクターであると思います。
Quantの比較
Quantに関しては、私の受験経験を踏まえるとGMAT Quantの方が問題の難易度は高く感じるものの、一定の数学力を備えた受験者が両方のテストを受けた際に出てくるスコアには大きな差異は生まれないと思います。例えば、GMAT Quantで満点に届かない受験者がGRE Quantに切り替えたところで急に満点が取れるわけではなく、こちらも同様にGMAT Quantと同程度のスコアになるかと思います。
採点の仕組みとして、GMAT Quantでは高難易度の問題を数問間違えても満点の51点もしくは50点が出ることがあるみたいですが、GRE Quantでは問題が易しい分、1問でも間違えるとダイレクトにスコア減少として反映され、満点を取るためには全問正解が必要となる様です。従って、GMAT Quantの難易度が高いからと言って、必ずしもGRE Quantの方が高いスコアが出ることにはなりません。これらを勘案すると、Quantにおいては両試験の間で明確な優劣があるとは思っておらず、後述するVerbalの特徴を軸にしてテスト選択をするべきであると考えます。
私のケースですが、GMAT Quantで満点もしくは満点近い点数が取れるだけの数学力を準備出来た段階でGRE Quantを受験したところ、満点の170点を獲得することが出来ました。学生時代は文系でしたが、元々数学が好きだったこともあって満点の170点を獲得する素地はあったのかと思いますが、逆に言うと一般的な文系日本人でも学生時代の基礎学力と十分な対策すれば満点を狙うことは可能であると思います。細かな受験戦略の話にはなりますが、どうしても英語のハンデがある日本人はVerbalで他国の学生に比して高得点を取ることが難しいので、Quantで満点か少なくとも満点近い点数を獲得して全体スコアに競争力を持たせる戦い方をするべきだと思います。
Verbalの比較
Verbalに関しては私はGREの方が遥かに対策がし易く、安定的に高い点数を取ることが出来ました。まずGMATのVerbalですが、GMAT独特の問題形式であるCritical ReasoningとSentence Correction(今は廃止された形式と思います)という問題について対策する必要があり、練習問題を通じて解法をマスターしたと思っても、本番で違う文章・テーマの問題に直面すると何故か正答率が下がり、結果的に点数が安定しないという問題に直面しました。GMATを3回受験しても点数を更新できなかった際に、改めて自分なりに現状分析したところ、模擬試験や公式問題集を通じて正解にたどり着く為のGMAT Verbalの解法を十分理解して脳に染み込ませたはずなのに、それが本番の問題回答に適用出来ていないケースが多々あることが分かりました。しかし、このような状況では次の試験に向けての改善策を立てることが出来ないことから、GMAT Verbalでこれ以上の点数向上は見込みにくいと考え、GREへの切り替えを決断することになりました。私が見聞きする限りでは、2‐3カ月程度の対策でGMAT Verbalを攻略できる方もいらっしゃるみたいなので、もともとの地頭力や頭の使い方、これまでの受験歴などによってGMAT Verbalの方が得意という方も一定数はいらっしゃるようです。
その一方で、GRE Verbalは私にとってはかなり対策がし易かったです。
まず、GRE Verbalで中心となる問題は単語穴埋め問題と長文読解ですが、単語問題についてはGRE専用の単語帳をひたすら暗記することで、6‐7割程度の正答率まで持っていくことが出来ました。この単語問題については自分の暗記量がそのままスコアに反映されることになるので対策法が明確で取り組み安かったです。それに加えて、GREの長文読解はTOEFL等の英語試験の延長線上にある問題形式であり、TOEFL Readingで満点を取ることが出来ていた私にとってはこちらも得点源とすることが出来ました。結果的にGRE Verbalでは157点(GMAT換算で34点)を獲得することが出来ました。
これらの点を勘案して改めて両試験に対する適正を検討すると、単語の暗記が苦手な方や長文読解よりも論理テストのような問題を得意とする方はGMATの方が対策しやすい可能性があり、他方で単語の暗記が得意で長文読解が得意という方はGREの方が対策し易いものと思います。私個人としては単語の暗記量や長文読解の練習量と実際の試験スコアが比例しやすいGREの方が努力が成長につながっている感覚を持ちやすく、精神的にも取り組みやすかったです。
使用した教材(おすすめレーティング付き)
ここからは私が対策に使用した教材をご紹介します。
一部GMAT用の教材も含まれますが、GREのみに取り組まれている方はGRE用のものを中心に使用いただくだけで十分かと思います。レーティングは★~★★★で表現しています。
Quant & Verbal共通
Magoosh GRE Prep(★★★)
MagooshはGRE対策教材としてダントツでおすすめの教材です。QuantとVerbalともにこの教材を中心に据えて対策を行いました。
米国のGRE対策用プラットフォームですが、例えば半年間の利用プランでUSD179を支払えば2,000問近いVerbalとQuantの練習問題と本番を想定した模擬試験を解きまくることが出来ます。本番の問題と比較しても類似した問題が収録されていて解説も充実しており十分理解しやすいです。Magooshにしっかりと取り組めば、GRE対策のために塾に通う必要はないと思います。仮にGMATやGRE専門の塾に通えば数十万円近いコストがかかることを考えれば、Magooshは圧倒的にコストパフォーマンスにも優れています。
そして、Magooshは問題演習に加えて、GRE用の単語暗記アプリも出しており、私は毎日の通勤時間でMagooshの単語暗記アプリを繰り返し見て活用していました。
KMF(★)
TOEFL対策でも登場したKMFですが、GREでも演習問題を解くことが出来ますので、Magooshの問題を解き切ったタイミングで追加の問題演習としてこちらを利用していました。但し、TOEFL同様に解説が中国語なので、Magooshをマスターした後の力試しとして解いてみるような位置づけで十分だと思います。
Quant教材
マスアカ(★★)
日本のMBA受験生の間で定番となっているインターナショナルマスアカデミーのマスアカですが、私はGMAT対策を開始したタイミングで購入しました。マスアカはGMATやGREで出てくる基本的な数学の公式や解法を網羅的に理解することに役立ちましたが、正直なところ高校受験と大学受験で数学を勉強された方々にとっては復習の役割にしかならないので、学生時代に数学が得意であった方や理系の方は購入される必要はないかもしれません。私も数学の基本公式や考え方を思い出す目的で使用していましたが、ある程度の数学の感覚が蘇ってからは全く使わなくなりました。一方で、学生時代に数学が苦手であった方や大学入試で数学を使用されなかった方は基礎固めとして利用しやすい教材かと思います。
Advanced Quant(★)
GMAT対策を行っていた時期にQuantで満点を獲得するためには高難易度の問題への対応力も鍛える必要があると思い購入しました。実際に、この本に収録されていた問題はかなり難しく、短時間で解けない問題も数多くありましたが、この本をマスターすることで、本番で高難易度の問題が出てきても焦らずに着実に正解まで辿り着くことが出来ました。GMAT Quantでは安定的に50-51点を取れるようになりましたが、この本に取り組んでいたことが一定程度は寄与していたものと思います。とはいえ、GRE対策においては基本問題を短時間で完璧に解けるようになることが最優先ですので、基本をマスターされた方が満点を目指す際に初めて購入を検討する程度でよいかと思います。
Verbal教材
Manhattan Prep GRE Prep
GRE Vocabulary Flashcards Essential & Advanced(★★★)
GRE用の単語暗記にはManhattanが出している単語カードを使用していました。Essentialに基本単語500語、Advancedに応用単語500語が収録されており、基本単語を全て暗記、応用単語も7割程度を暗記している状態に到達すれば単語問題で体感6-7割程度の正答が可能です。基本と応用併せて1,000語の暗記はかなり長い道のりではありますが、毎晩フラッシュカードをペラペラめくって眺めていくだけで想像するよりも短時間で暗記することが出来ます。単語暗記についてはこちらのManhattan Prepの単語カードとMagooshの暗記アプリを二つで十分かと思います。
最後に
今回はGMATとGREの比較と私が行ったGRE対策について公開しました。
MBA受験でGMAT、GREのスコアメイクに多大な時間を要してしまい、私のように出願時期を後ろ倒しにする方や、ひどいケースでは翌年に出願を後ろ倒しにされる方がちらほらいらっしゃるみたいですが、私個人の考えとしては20‐30代の貴重な時間をGMATやGREのような学力試験にズルズル費やしてしまうのは勿体ないと思います。だからこそ、出来るだけ最短の時間投下で目標点数を取ってしまうべきですし、最悪スコアが足りないのであれば他の要素(エッセイなど)で補うなどの次善策を取るべきだと考えています。一方で、このような効率的に短時間でスコアメイクを完了したいという需要に対して複数の塾が数十万円の値段でサービスを提供しているのだと思いますが、私のように私費で受験している方々にとってはこれらの塾代を払うこと自体がかなり重たい負担になるかと思います。そんな中で、私の実体験を踏まえると英語試験やGREは独学が十分可能な分野であると思いますし、私が公開している英語対策やGRE対策の記事が今後独学でMBA受験に臨まれる方々の力になれば嬉しいです。