【 占い師が語る本 】陰摩羅鬼の瑕(京極夏彦・講談社)
どうも、占い師の端くれです。
いや、改めましょう。
京極夏彦先生を読み漁る引きこもりです。
そんな引きこもりが、
おススメしたい
京極夏彦先生作品二作目。
陰摩羅鬼の瑕です。
(おんもらきのきず)
特に、京極夏彦先生の作品を
読んだことがある方におススメです。
百鬼夜行シリーズを数冊読み、
だんだん京極先生の
手の内が見えてきたぞ…
と思った矢先に現れた、
超変体変化球。
そう思っちゃうくらい、
これまでのシリーズと
印象がまるで違いました。
京極先生の手法と言えば、
同時多発的に複数の事件が起こり
その点を繋いでいくと…
思いもよらぬ
一枚の画が出来上がる。
そしてその画の裏には、一度では飲み込めないような理解不能なとんでもない話がスタンバイしている。
なんですよね。
一方、陰摩羅鬼の瑕は
実況中継小説と言いますか。
リアルタイムで登場人物を追いかける「疾走感」があります。
いつもと違う、思いもよらぬ展開の速さに「こんなにどんどん進んで大丈夫?」と読んでいるこちらが心配になるほど。
でも読むスピードは
どんどん速くなる。
次の展開が、
待ち受ける結末が、
気になって
たまらなくなるんです。
そして最後に待ち受ける事実がもう。
切ないったらないんですよ。
いつもの結末なら、読み手の「常識」というフィルターをハンマーでグシャグシャに潰される感覚なのですが。
今回は屈強な誰かが、わたしの心をぞうきん絞りするような感覚に襲われました。
苦しさや切なさが
自分の内側から滲み出る感じ。
さらに心臓がズンと重さを増す感じ。
この感覚になるのって、
不整脈かコレを読んだ後くらいなもんです。
少なくとも、本を読んで
こんな気持ちになったことはありません。
この切なさの理由は、
登場人物が良くも悪くも純粋だからでしょう。
涙を流すには猟奇的すぎる。
けれど非難するには悪者がいない。
作中で表現される通り
「悪人のいない凶悪犯罪」
なんですよね。
わたしなら
「苦虫を噛み潰す切なさ」
という意味不明な表現を使いたくなります。
最近苦虫噛み潰してない方、
切なさを忘れた方、
どうかお試しください。
あと、鳥が好きな方にも
陰摩羅鬼をお薦めします。
この本で言うところの陰摩羅鬼は黒い鶴のような怪鳥。
鳥の城と呼ばれる洋館が舞台で、
たーくさんの鳥が登場します。
《 鶴さん 》と同居している身なので、
そちらでも楽しめました。