精神科受診録1

 大学のカウンセラーから散々行けと急かされたので行ってきた。

 強迫性障害。中度の抑うつ有。
 SSRI(ルボックス)を処方してもらった。早速飲んだが副作用なのか吐き気と頭痛が酷く、正直飲まないで不安に囲まれていた方がまだ楽なんじゃないかと思った。痛み止めを飲んでいいのか分からないので、ただひたすらに耐えるだけである。
 薬が効いているんだか、プラシーボ効果なのか知らないが、何となく頭の回転が悪い気もする。いつも止まらない考え事が一段階浅いところで止まっている。ぼーっとしている。眠い。文章がうまく浮かばないので文法が変かもしれない。

 強迫の症状が出始めたのはもう7,8年も前であり、長い付き合いであったのだが、半年前の進学を機に露骨に悪化した。典型的な不潔恐怖である。
 触りたくない、見たくない、感じたくない。この不快感を言葉で表すのは難しいのだが、胃や肺の中で小さな虫が無数に這いずっているような、吸う空気が汚泥になったようななんとも言えない気持ち悪さがある。
 治るんならそれに越したことはないが、きちんと自己ルールを守れさえすればなんとかならないこともない、という感じである。そのため、カウンセラーに進められても行くのを渋っていた。

 精神科医はカウンセラーと比べ淡白な傾向にあると聞いていた。淡々と症状を聞いて薬を処方するだけだと。
 自分からしたらそっちのほうが楽である。聞かれたことにだけ答えればいいのなら簡単だと思って行った。だが、どうにもうまくいかなかった。
 なによりも驚いたのが担当してくれた先生の腰がめちゃくちゃ低かった。家族にも話さず来たクソガキ相手に尊敬語を使うのである。40代前半だろうかという男性に頭を下げられてとんでもなくビビった。調子が狂った。
 結果、猫かぶりモードが自動的にオンになった。
 へらへらと笑いながら症状を話したところで説得力なんざないに決まっている。さも気楽に生きていますよ、とアピールするために染み付いた笑顔を精神科で使う羽目になるとは思っていなかった。真面目に向き合うつもりでいたのに。あーあ。

 うつ病の検査をした。「死んだ方が周りは幸せになると思いますか?」という質問に対していいえ、と答えた。希死念慮はあるが、死んだら周囲に多大な迷惑がかかるであろうことは理解している。
 その結果を見た先生は、多分こいつに希死念慮は無い、と判断したのだろう。無い前提で話が進んでいった。
 日常的に死にたい、なんて口に出しているわけがない。言い慣れていない言葉は口からそう簡単には出ない。やたら丁寧な言葉遣いで進む話の中で「私、実は死にたいんです」なんて言えるはずもなく、薬もそれを考慮せずに処方されたのだろう。
 文系の自分に精神医学の詳しいことは分からないが、非常にまずいと思う。絶対にまずいに違いない。次回行った時には絶対「私死にたい!」と言わねばならない。希死念慮、あるぜ!と。恐ろしい非日常である。

 なによりも負担であるのが、医療にかかる金である。自分の精神にどこまでお金をかけられるか、不快感と金銭を天秤にかけてギリギリ不快感に傾いたから仕方なく行ったのだが。貴重なバイト代が消えた。
 いつまで続けるか。当たり前のように次回の予約を取らされてしまったので、少なくとも来月は行かねばならない。
 でもきっと私のこれは元々脳みそに欠陥があるようなものなのだろう。昔から取り越し苦労ばかりだった。治るようなものではない。であればどこで妥協するか?一度始めてしまったものはなかなか辞められないというのに、私は一つ歩みを進めてしまった。
 ゴールは見えない。そもそもあるのかすら分からない。こんな不安も丸ごと薬で吹き飛んでくれるなら何よりであるが、それが本当に良い事なのか、私には判断がつかない。

 精神科の受診は慎重に。

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