世界中でここでしか乗れない『カットカー』に乗る
このたび、フンザで車を買った。
フンザの下町、アリアバードで売られている5台の中古車を試乗して、最終的に決めたのは、スズキのカルタスという車。ネットで調べると日本でも2002年ころまで売られていたらしい。いろいろボロボロな車だけど、セダンタイプとしては安い25万ルピー(13万円くらい)で購入することができた。安いのには理由がある。この車、世界中でおそらくここでしか流通していない、「カットカー」なのだ。
フンザのあるパキスタンのギルギット・バルティスタン地域で流通している通称「カットカー」は、アフガニスタンでエンジンやタイヤなどをすべて取り外し、ボディーは半分にちょん切ったうえで、ラクダに乗せて峠を越えてパキスタンに密輸入した車だそうだ。その目的は、正規に車を輸入する場合のパキスタンの高い自動車関税や、普通に密輸した場合に税関の役人へ支払わなければならない賄賂を免れることにある。カットカーは、国境を越えて密輸入されたのち、カイバルパフトゥンハー州のスワートで再度組み立てられ、その後、免税地域のギルギットバルティスタン州に持ち込まれて安く売られている。この地域で走っているトヨタヴィッツはほとんどがカットカーであると言われている。
カットカーといっても、見た目は普通。ボディはとてもきれいに溶接されているので、とても半分だったとは思えない。所々不具合はあるが、一応、きちんと動くので、今のところカットカーであるが故の不便はとくに感じない。むしろ、世界中でここでしか乗れない、という意味では、希少価値が高いともいえるわけで、日に日に車に対する愛着が湧いてきた。
カットカーの模様はこちらから!⇒
https://youtu.be/4MDS619FNac