福という犬

朝4時に目がさめた。体がとても軽くすっきりしている。元気!
ベッドで少しぐだぐだした後、洗濯機を回し、昨晩の夕食のあとの食器を洗い、これを書き始めた。元気!

8日、9日は実家に帰った。

最近実家に帰る頻度がかなり上がっているのは、今年の7月末から福という犬が実家にやってきたからである。
福は1歳と少しの雄。虐待されていた環境から母が救い出した。おそらくミニピン(ミニチュアピンシャー)とイタグレ(イタリアングレーハウンド)のミックスだ。

劣悪な環境にいたから、小さい体を震わせていつも怯え、吠えまくっている。絶えず鳴き続ける散歩はかなりの重労働だし、朝忙しい時間に家族が家を出る寂しさでギャンギャン鳴く。ありとあらゆることが不安らしい。

でも、福は、少しずつだが確実に成長している。できることが増えていく福を近くで見ていられるこの時間が、何よりもいとしい。

ミニピンとイタグレのミックスだなんて、そんな洒落た犬をうちで飼うなんて、想像したことはなかった。
今まで飼ってきた犬は全部雑種だ。
雑種至上主義、雑種が一番可愛い、犬は雑種に限ると思ってきた私は、ミニチュアダックスとか、トイプードルとか、小型の洒落た犬の可愛さが分からなかった。
けれど福と一緒に過ごし始めて、犬は等しくみな愛らしいのだと知った。小型犬が膝で眠ることの温かさを知った。

もっとも福は、洒落た犬には程遠い。
顔はいつもなんだかすっとぼけているし、福のお気に入りは薄手の綿の服だ。
この綿の服、何が一番近いかと我が家で考えてみたところ、小さな子どもが履く下着のパンツに一番近いのだという結論に至った。
白地に水色のボーダーの布に、手書き風の青い星が描かれている。パンツのような素材だから伸縮性があり、福の体にぴったりとフィットしている。
福についているタグを見てみたら「crush dog!」と書かれていた。なんだこれ。
ちなみにこの服は母がイオンのペットショップで飼ってきた。

他のミニピンをインスタで見てみると、皆もこもこふわふわのカラフルなフリースの服を着ていたり、シックな色のダウンを着ていたり、theお金持ちの犬といった風格を漂わせている。
でも我が家の福はイオンのパンツがお気に入り。
澄ましていれば洒落た犬なのに、福はパンツを着て吠えまくっている。

福が来る前から実家には白い雑種の犬が2頭(健三と新。ユニット名は餅)いたので、現在実家には3頭の犬がいる。ちなみに、はなという白と黒の猫もいる。
人間は祖母、母、妹が3人なので、人間の数より動物の数が多い。

福が来てからもうすぐ5ヶ月だ。
現実的に考えて、母が犬3頭の世話をするのは体力的にも時間的にも難しいのではと考えるようになった。
ミニピンは長くて16年は生きるらしい。福が16歳のとき、母は71歳だ。
加えて実家には動物だけでなく、頑固で少々(いやかなり?)手のかかるトミ子もいる。

だから、来年の春から福と私と妹で、北鎌倉で暮らすことにした。
ちょうど福が来た7月、私は仕事を辞めようか迷っている時期だった。
妹は妹で、長年付き合っていた人と別れたあとだった。
全てのタイミングが、福と暮らすために準備されているかのようだった。

そして、実家の都合とかそういったことよりも、
あかるい光を放つこの犬と、自然の中で暮らしたらどんなに楽しいだろうと思ったのだった。

福に桜を見せてあげたいな。
実家に来るまで、暗い部屋に閉じ込められていた福はきっと、
桜のうつくしさを知らない。
桜の花びらが舞う道を歩いて、花の匂いを嗅いで、
この子がもつ全てのこわいもの、全部ぜんぶなくしてあげる。

この先の生活に不安がないと言ったら嘘になるけれど、
きっと私たちなら大丈夫だろう。

全部自分で決めた道だ。
愛しいものを抱えて、生きていく。

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