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36歳、彼に子どもが欲しいとほのめかしたら、怒られたって話。
「ねぇ、さっき僕たち30分電話で話をしていたでしょう? その時にその話をしなくて、どうして今かけなおして話すの? 体調が悪い彼氏に今する話?? 本当に女性の考え方は理解できない」
とさ。
えぇ、36にもなって本当に恐縮ですと思っていますよ。でもね、こちらも望むべくしてそうなったのではなく、考えるところがあって、でも、今持てる最大限の勇気を振り絞って、「よし!いまなら話せるかもしれない」と、それはもう心臓バクバクで、お酒まで入れて、携帯の発信ボタンを押したわけです。私にとっては、「今」しかない、数少ない「私、今なら私の本当の気持ちを話せるかも」と、思った瞬間が、今だったんです。深夜だったけど。
ごめんなさいね、そのタイミングが、あなたがくれた電話で「世間話」をした10分後で。ごめんなさいね、勇気を絞り切って電話をしたけれど、やっぱりうまく話せなくて。ごめんなさいね、「ポイントを絞って話して。内容が分からない」と言わせてしまって。何より、イライラさせてしまって。
「あのね、友達に3人目の子どもが産まれてね、それで……」
から先の肝心なことが言えず、黙り込んだ私。
私が自分の本当の気持ちを話すことが、「苦手」の域を超え、とても難しいということを、あなたは分かって「くれている」と思っていました。
私が自分の本当の気持ちを話すのが、どれだけ大変なことか、勇気がいることか、それができずにこれまでどれだけ悩み苦しみ続けてきたか、知っていると思ったんです。だって、たくさんそれについて話したじゃない。
何より、愛着障害について教えてくれたのはあんたやん。
ポイントは、私もやっぱり子どもが欲しい。世の中のママがうらやましくて仕方ないの、寝られないほどつらい。って、ただそれだけなんだけど。どうしてもどうしてもこの一言だけが言えなくて。もうちょっと優しく待ってくれたら、もしかしたら言えたもしれんけど。
昨夜は勇気がだせるかも、と思ったんだけどな。
「子どもはいらない」と、昔あなたがふと言った言葉を覚えてたから、
世の中を否定的に見るあなたに、何かにつけ「女性はバカだ」と言うあなたに、
どう切り出そうか、私は悩み続け、その勇気が出たのが昨夜だったんです。
仕方ないやん、あなたがくれた電話で話した「後」に、あ、今日は言えるかも、と思ったんやから。あなたが電話をくれた時には、そう思ってなかったんやから。
私が話しながら泣きそうになって詰まったの、気づいてでしょう? なんなん、「言いたいことは何?」「まとめは?」って。
大学のころに出会い、歳が9も離れたあなたは、日本でビジネスを成功させるという夢を持ち、事務所を立ち上げ、実際にそれを叶えました。
最近のあなたの国での政治問題にイライラし、そして一昨年にした生死を分けるほどの大術後の後遺症に苦しむあなたを、私は生涯支えたいと思ってきました。だからこそ、忙しい仕事をこなし、夜は術後の痛みに苦しむあなたを前に、私の希望を話すなんて、と、ずっと、私は、「いい彼女」を守り続け、それはそれで幸せだったのです。その先に、私にも「普通」の、私とあなたでつくる未来があると、信じて夢見ていたのです。楽しみやなぁ、って。
世の中にいくら怒ろうが私には常に優しく、「ノディンは他の女性とは違う」と言い、子どもだって、いつか欲しい、と話した私に、「ノディンが欲しいならちゃんと考えよう」「ノディンが欲しいなら、僕は考えを変えられるよ」って、あんた前に何度か言うてたやん。酔って。
私が子どもが欲しいことはあなたは知ってるよね。でも、私の気持ちは、アクセプトされてるのか、いつも曖昧なままでした。本当に私にも「いつか」が来るのか、それを知りたかったのに。
私たち、周りに「いつも仲良しね」と言われ、世界で一番愛し合っているようで、世界で一番幸せなようで、いつも何かを避けるように、大切な何かを話す時にはお酒を入れていたね。
あなたは、私にも友達にも素直な気持ちをぶつけます。うそをつかず、自分に100%の自信があり、何より「バカ」が嫌い。昨夜も私に言いましたよね? 「(大統領選の考えが違う友達に)はっきり言った。友達じゃなくなるかもしれないけど、僕は思ったことははっきり言う」「英語に、正直になるとよく寝れる、という言葉がある」と。
あなたはいつもあなたが全て正しい。
自分の気持ちを忖度なく表現する、それは、私にはなく、魅力でした。
だから私、じゃぁ、私の話も聞いてくれるかな、と思ったんです。
「ねぇ? 寝る前に私も私の気持ちを話してみてもいい?」
なあに?って優しく言ってくれるといいな、勇気だしたんだねって分かってくれるといいなって思ったけど。
「what’s wrong with you?」というあなたは、もうすでに少し苛立っていて、私は、私の振り絞った勇気が瞬時に萎んでいくのを感じたし、いつもの、というか人生の私の癖で、状態を瞬時に察して、「この状態では何を話すのが適切か」を考える私になっていた。
だから、いや、「寝る前にもう一度●●の声を聞きたくて」と言ってごまかそうかなと思ったけど。
いや、いかんいかん。今日は私の気持ちを話すのだ、と思い直して。
「私の大学の時の友達がね、3人目の子どもを産んだの。グループLINEで回ってきてね」
「仲良しだった友達たちがいるって話したやん?でね、ひとりはスペイン人と結婚してスペインにいて、で、ひとりは北海道にいてね、で、みんなで会おうってなってね」
そこまで話して、次がどうしても継げなくて、黙る私。電話越しにイライラする彼。
私「でね」
彼「and??」
tell me.でも、tryでもなく、and?
私「で、、、、」(泣きそう)
本当はね、グループLINEなんてうそ。友達関係を築けない私に友達なんていない。全部Facebookで知った情報。
「でね、、、。ちょっと待ってね。私の気持ちを話したくてね、今日はがんばって話したいから、でもちょっと待って」
無言の彼。
焦る私。
どうしよう。会話終わらす?
本当に話したかった話は以下。
私、私以外のみんなはもうママでね、私、本当にうらやましくて、うらやましくて、うらやましくて。うらやましくてね、?
仕事場もね、同年代の人はみんなママでね、
私、女性としてloser(敗者)な気がする。でもそれは望んでそうなんじゃなくてね、
私だって子どもが欲しいんよ。ママになりたい。あなたとの子どもが欲しい。
うらやましくて、うらやましくて、最近なんて、街で親子連れ見るのも本当に辛いんよ。
私も家族が欲しい。
あなたは、私といつか本当に子どもを作ってくれるの?期待していいの?
でも、彼がイライラしてるのがわかってしまって、うーん、と言いながら次が継げなかった。
彼「ポイントはなに? 分からない。今話すこと?」
で、次の言葉が冒頭のもの。
「ねぇ、私たちさっき30分電話していたでしょう? その時にその話をしなくて、なんで今かけなおして話すの? 体調が悪い彼氏に今する話?? 本当に女性の考え方は理解できない」
んなこと知ってるわ、あなたが本心では子どもに未来を見ないこと。あなたが世の中に絶望してること。あなたが、私が言おうとしていることが何なのか、分かってそう言ってことも知ってる。
でもね、あんた私の話を、「女性の考えは分からない」という、私が一番嫌っているワードで返しやがったな?
ふぅ。
私と彼は、かれこれ17年一緒にいる。
つまりは、大学に入って初めてできた彼で、初めてセックスした相手だ。
父はなく、厳しすぎる母と祖父母に育てられた私にとって、彼は初めての「おじいちゃんじゃない」大人の男の人で、何でも知っていて、優しく、彼であり父であり、文字通り私にとって全てになった。幸せの中ですぐに、私の使命は「母と祖父母に嫌われないこと」から、「彼に嫌われないこと」に変わった。
とはいえ、国際恋愛なこともあり、気持ちが伝わりそうで伝わらない、当時のあの葛藤も、幸せだった。
それがキツくなり、数年別れていたことがある。それはまた書こうと思うけど、その間に私は別の彼と付き合い、彼は同業の、私から見れば雲の上ぐらいのすごいキャリアの海外女性と付き合っていた。そして、彼女の浮気が発覚してこっぴどく別れた後、彼は完全に変わった。
それまでも世の中に否定的だったけど、それに輪をかけて急に女性蔑視をするようになり、バカな女性は価値がないと言うようになった。昔は、フェミニズムの運動までしてたくせに。
だから、というか、でも、私は彼の時に、どんな時も、激しすぎる話をいつもにこにこと聞くし、彼を絶対に否定しない。私にとって、彼の意見はいつも一番正しい。私はよく笑い、勉学を惜しまず、よくセックスをし、手縫いの服を作る。彼はそういう、意思が強く、頭がよく、家庭的な女性が好きだからね。私は、彼が、(というか相手が誰にしろ)求めているものに完璧になることができる。
あなたはよく言うね。
「ハニー」
「未来の奥さん」
「子どもが出来たら結婚しよう」
。
。
。
うん。
あんた、そう言いながら、危険日は必ず外に出すけどね。知ってんで。
「ポイントは何か」と迫る彼に私が言ったのは、
「ごめんなさい」。
「あなたが辛いときに、気持ちがまとまらない話をしてしまって本当にごめんなさい。自分の気持ちがまとまったときに、そしてあなたの体調が良い時に、きっと何十年後かしりませんが、ポイントを整理できてサマリーとして話せる時に、また話します。」
はあ。
いつか、頑張っていたら叶うと思っていたんだ。
私の、小さな時からの一番の夢。でも、ずーっと言えなかったこと。
「私ね、お父さんがいて、お母さんがいて、子どもがいる、家族が欲しいんよ。」
何やら、無理みたいだけどな。そう伝えられる日は来るのかな。
fuck