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子供が出来たら結婚しようと言う彼が、大切な日には外出しするんです。

って相談を、36歳リアル独女が、リアル社会で誰にせいって言うねん。怒。

親、親戚一同に「子どもはまだか」と言われ続け、うん十年(は、言い過ぎか)。

一向にその気配が見えないと知れば、「もう若くないんやから」だの、「結婚はママ諦めるからとりあえずいいから子どもだけ作ってもらったら?」だの、「あなたに問題があるんじゃないの?」だの。

85近い祖父母はいよいよ言いましたとさ(色々あって私はほぼ祖父母に育てられた)。「ノディンちゃん、私ら、生きているうちにあんたの赤ちゃん見れるかなぁ……?」

おじいちゃん、おばあちゃん、ごめんなさいね。私だって子どもは欲しいのよ。世の中の家族が全員うややましくて仕方ないほど、不意に涙が出てくるぐらい、欲しいのよ。その気持ちをグッとこらえて、「私たちには私たちの考えがあるんよ」「今の時代は子どもを作らない選択もあるんよ」「ちゃんと考えてるから大丈夫、心配せんで」って言う、私のこの優しさ、健気で涙でるやろ?

*****

私と彼は仲が良い。

よく話す。

結婚 と 子どもをもつこと このふたつ以外は。

よく話し、よく笑い、私は彼の話をよーく聞く。我ながら「良い」彼女だ。

ハタチから付き合っていれば(途中ブランクはあるが)、彼がどんな女性が好きで、嫌いか、よく知っている。

だから私は、決して気の強い女性になったりしないし、彼の話を遮らない。「自慢の彼女」ではないかもしれないが、少なくとも「彼にぴったり」の彼女ではあるだろう。そんな私が私は好きだし、安心もする。博学で長身でヨーロッパ系3か国の血を引くオリエンタルな彼は昔っからやたらモテた。が、なぜかいつも別にこれと言ってパッとしない私といてくれて(別れていた数年はお互い違う人と付き合っていたが)、感謝している。

人をあまり信頼せず、社会と常に思想的対立をしている彼は、基本的に「この世界」というものが嫌いだ。例えば政治的な問題に本気になって怒り、怒りを止められないこともある。

慣れている私はそんなことはもう平気で、笑ってヘラヘラと聞く。怒りという気持ちが存在せず、心誰かを嫌うという気持ちすらよくわからない私だから、彼にとっても良いのかもしれない。

私は、怒りの気持ちは分からなく、つらさ、かなしさ、悲しみはそれをどう表現したらよいのかさっぱりわからない。それだけではなく、人の怒りやつらさや悲しみに本当に「共感」することができない。というか分からない。「同情」はできるけど。

つまり、Sympathize はできるがEmpathizeがとても難しい。

私はおかしいのかと思い続けてきたが、それが、愛着障害の回避型、についての本を読み、あ、私だと思ったのは最近のこと。

「幼少期に、誰かの完璧な子であり続けるために自分の気持ちをおし殺し続けてきた子どもは、そもそも本当の感情を出す経験をしてきてこなかったため、大人になってもその方法がわかりません」「自分の悲しみや怒りをなかったことにして蓋をしてきた結果、他人のそれらの気持ちを理解しずらいです」というようなことが、その本には確か書いてあった。

というのは余談で。でも私は、寂しさ、の気持ちはすごくよく分かるし、共感もできる。

*****

さておき。

歳が離れている彼は私にさまざまなことを教え、私は彼の目線を通じて世の中を学んだことがたくさんある。大学生の時の私はいつも、彼すごい!と目をキラキラさせていたし、祖父が病気になり関西と東京を行ったりきたりしながら世話をしていた私が、祖父が退院したとたんに鬱になった暗黒の数年を、彼といることで救われたりもした。当時の気持ちのくせは今も変わらず(いいのか悪いのかは別として)、私は彼に全幅の信頼を寄せている。心の構造がもう、そうなのだ。

って言うと信者みたいだけど。

人が悲しんでいるときは、そうか、背中をさすってあげるんだな。そんなことも彼から学んだ。

彼が「子どもは作らないと決めている」と私に話したのは、私がまだ20代前半で、彼も30歳になったばかりぐらいの時だったと記憶してござる。その時は、キラキラお目目の私は、「うへー、そんな斬新は考え方もあるのか、まあありかもね」「でも、子どもは欲しくない人なんていないだろう、彼は「今」そう思っているだけで、いつか欲しくなるものなんだろう。だってセックスしてるし」「いろんな考え方があってよし!」ぐらいに思っていた。

その彼の言葉が、本当は心のすっごい深い部分にぐっさりと引っかかっていて、その引っかかりは、その後10年を超えてそこに居座り続けることになるなんて、思ってもいなかったから。

アメリカ人だからか、彼は愛情表現を怠らず、自信のない私をいつも褒めてくれる。彼が私に腹を立てていない、つまり、一緒にいる時間の98%の時は。残り2%の彼は、話が通じない氷みたいになる。

そんな彼と私はよくセックスをする。

マンネリの、ではなく、ちゃんとしたやつ。

彼は、いつまでも愛情を保ちたいタイプで(そりゃ誰でもそうだ)、セックスレスの「ただの家族」にはなりたくないと言い放ったことがある。私は家族には色々な愛の形や幸せがあっていいと思うが、常に愛情を保ち続けようとする彼の姿勢を受け入れない理由は全くないし、そもそも私も彼を愛している故、別に不都合はない。子ども欲しいし。

新卒で入った会社を辞め、なんとなく人生を真剣に考え始めた30代を過ぎたころから、本格的に子どもが欲しい!と思い始めた私は、彼の10年以上前の「子どもは作らないと決めている」を、ずっとグチグチと心の中で温めながら、でも、少しづつ子どもが欲しい気持ちを小出しにし始めた。

そのたびに、彼の、「この社会に子どもを生むなんて考えられない」(絶望)とか、「でもノディンが欲しいなら考えよう」(希望!)とか、「ノディンとなら家族になろう」(希望!)「子どもができたらノディンは僕を好きでなくなる、子どもが一番になる。女性はそういうものだ」(そうか?)という、行ったり来たりの言葉の中の都合の良い部分だけを心の拠り所にして、なんとなく、小さな希望なのか小さな絶望なのかわからない気持ちの中をふわふわとごまかしながら数年を生きてきた。でも、本心の部分では、彼と私が、子どもをもつことへの考え方が逆を向いていることも理解していた。

「私、子どもが欲しいです」と、

それだけをはっきり、きちんと言えなかったし、今も言えない。

この言葉は、温め過ぎたせいでもはや神聖化し、繊細すぎるものになり、いざ、自分の口から言おうとすると、刺激されてしまうのだ。涙腺が。

あとは、36になり、いよいよはっきり「僕は欲しくない」と言われたら、という恐れも大きい。

*****

そんな宙ぶらりんな状態で、なんとなく、彼が、「子どもを作ろう」と言い出し、セックスが「子どもを作れる」セックスに変わったのはおおよそ1年前ぐらいでしょうかね?

この歳で、ただでさえ妊娠が難しいのは知っているし、彼も「いい歳」ですし、私は体質的に痩せっぽちですから、本当にできるかはわからないけれど。

だけど先生、最近気づいたんです。彼は、私が「その」タイミングの時には、どうやら外に出すんです。よりによって最近になって気づく私もアホだけど、これは私の気持ちを相当痛みつけた。

「どうして外にだすの?」って、言いかけたことがある。

でもやっぱりまた言えないのは、

だってがっついてるみたいじゃない?

今の幸せなセックスが、壊れそうじゃない?

いよいよあの恐怖の言葉が彼の口から出てくるかもしれないじゃない?

嫌われるかもしれないじゃない?

だって、子ども作ろうって言ってくれたもの。

先生、私はどうしたらいいですか。

最近はいよいよ、子どもがいる世の中の全女性が羨ましくて、涙が出ます。なんなら、自分は女性としてだめなんじゃないか、とさえ思ってしまいます。職場が外資系なものですから、私と同じ国際恋愛をしている人がたくさんいるのも心底つらいです。だって彼たち彼女たち、ちゃんと結婚して子どもがいるんです。そして、いよいよ職場で私、「子どもは作らない主義、これが私たちの選んだ道」的なふりをし始めました。今はコロナでないけど、彼らの家にお呼ばれするのも、全部全部本当は怖いです。

*****

で、

最近気づいたことと言えば、もう一つある。

母親の言う、「ママ、孫ちゃんたちがいるお友達がうらやましい」について。

今までは、嫌味かよって反発してたし、その言葉を聞くのが心底嫌だったけど、

もしかしたら母親も、私がママになっている全女性がうらやましくて仕方ないのと同じように、彼女も、嫌味ではなく、きっと心からうらやましいんだろうなってこと。

それを言葉にするかしないかだけが、私と違うだけで。

それに気がついたとき、ああ、ごめんなさい、と心から思った。私の母親、かわいそうだなって。申し訳ない。

ごめんねー。

一歩進んで二歩下がる、やわ。年齢だけ一丁前に進んで行きやがって。



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