れいわ新選組が抱える難題に対する暫定的な解答
前ポスト『れいわ組織論の難題ー陰謀論、立憲との対立への対処』で、れいわ新選組が現在とっている組織論では、さまざまな陰謀論者の流入と、他の野党、とりわけ立憲民主党との党派対立の激化をコントロールするのは困難だと提起した。しかしこのことを認めた上で、れいわの「中心なきカオス的組織論」は支持者が主体となる新しい試みであり、なお基本的に肯定すべきであり、したがって党と支持者が忍耐強く時間をかけて克服していくしかないと結論づけた。
しかし、我ながらいかにも中途半端な結論であるのは否めず、収まりが悪い。なにより抽象的すぎる。そこで再考し、上記の難題を解いていくための組織論を提案してみたい。
が、私が提案するまでもなく、たとえば「れいわ新選組黒幕連」に集う支持者の人たちが既に模索的にこの難題に取り組んでいる。そこで議論されているのは、各地で支持者が(勝手連など名称はどうであれ)党とは別の活動組織をその外に立ち上げ、さらに緩やかに横につながり(連合)、それを党への回路として作り上げていこうということである。この回路ができれば、陰謀論台頭に対する防波堤をれいわ内外で築き、立憲民主党をはじめとする他の野党との論争ルールを作りあげていくことが可能となるだろう。ここでは、地方や地域単位の支持者の活動組織をかりに「地方組織」、その連合体を「全国連合」と名付けておこう。
政治組織、政治運動では平凡な解答で、特段目新しいものではないとの批判もあるだろう。しかし、たとえばほぼ同様の目的をもって結成されたはずの「立憲サポーターズ」とは大きな違いがある。違いは、れいわの場合、立憲民主党のような党組織が存在しないために、(もし成立すれば)支持者の「全国連合」はそのまま党の意思決定に接続するかたちにならざるをえないの対し、立憲の場合は、党員とサポーターが組織上明確に区別され、サポーターに党員の権利は与えられていないので党への接続が間接的なかたちに限定される点にある。
もちろんれいわでは、「地方組織」の立ち上げもまだはじまったばかりであり、「全国連合」も模索中である。また党も支持者組織を支援はしているものの、党との組織関係がどうなるか明確に表明しておらず、「連合」組織をオーソライズするかどうかも定かではない。しかし、前ポストで紹介したような、山本太郎の組織に対する考え方から言えば、少数の党員とは別に、党の意思決定に直接関与する権限を「地方組織」や「全国連合」に与えていかざるをえないだろう。
だが、れいわ支持者の活動組織の最大の特徴は、党の外部にあることや権限問題ではない。むしろそれが(すでに「黒幕連」内部でも自覚的に議論されているが)単にれいわの選挙活動の支援にとどまらず、ローカルな問題から全国的な問題まで扱うさまざまな「社会運動をになう活動体」を目指しつつあるというところにある。れいわが他の野党と区別されるのもここに関わっている。つまり、少なくとも山本太郎と少数の党員、そして一部の支持者グループで共有されているのは(逆に言えば、まだ社会的認知まで至っていないが)、れいわは単に政党ではなく、「政治運動と社会運動を結合する組織」として形成していくべきだという自覚である。
これについては、すべての政党がそうであり、なにもれいわ独自のものではないという反論がありえる。しかしそこには大きな差異があると思われる。それは、まず二人の重度身体障害者の活動家を国会に送り込んだことが象徴しているように、党としてのれいわが、これまでの政党のように党が社会運動を集約し、そのパターナルな代弁者となるのではなく、あくまで社会運動の当事者が自己決定権を持った主体として活動し、そのサポート役にまわるというスタンスを取っていることである。
もちろんこれは原則的なスタンスであり、実際には、パターナルな活動を含むこともあるだろうし、活動の中で貫いていくには多くの困難が待ち受けているだろう。しかし、時間とともにパターナリズム的なスタンスとの差は大きく開いていくと思われる。