一つの疑念

れいわ新選組をめぐる政局についてはすでにポストしたが、一つ疑念がある。これはかなり前から頭の片隅でくすぶっていたものだが、まだ消えずにくすぶり続けている。それは、れいわはなぜ党組織を作ろうとしないのかということである。これは、れいわが掲げているのが未だに「緊急政策」だけであり、「綱領と規約」を発表していないことと繋がっている。(これを書いた時点で公表されていたことを知らなかった)

これに対して、れいわが野党を含めた「旧体制」と異なる新しい運動をめざしていて、組織のあり方もこれまでの上意下達の党組織ではなく、ボランティア主体の「拘束と指令なき横断的組織」を作ろうとしているからだ(綱領と組織は不要)という説明がありうるだろう。山本氏が地方議員を組織しないのかという問いに対し、「地方議会に新たな派閥を作ることになるので、れいわの政策に賛同してくれる無所属議員の人たちに推薦を与えるだけにして拘束なしに自由に活動してもらったほうがいい」と答えていることもこの説を裏付けるように見えるし、れいわ候補者だった安冨氏が似たような主張をしていることもある。

しかしそれなら、(政治組織にとって重要なことである以上)4月の立ち上げ時にそのことを明確に宣言しているはずであり、すでに半年が経過し、各地にれいわ応援隊ができている現在でも宣言や説明がないのは不自然である。

また、「その用意はあるが、れいわの立ち上げが急であり、直後に参院選もあって綱領や組織を検討するための時間がないまま現在に至っているから」という弁解もあるかも知れない。しかし、いくら忙しいとはいえ、その用意があるなら、弁解はオフィシャルになされるべきであるが、今のところまだ出されていない。

以上を考えると、綱領や組織を明らかにしないのは、意図的なものと推定するのが合理的だろう。ではその意図とは何か。

いろいろ考えられるが、一番説得的なものは、「れいわはそもそものはじめから野党共闘を実現するための触媒政党として位置づけられているため、独自の組織を持つ政党になる必要がないし、持てばかえってこの目的には不都合である」というものではないか。

もしそうであるなら、山本氏が当初から、野党再編をめざす小沢一郎氏や鳩山一郎氏らと組んでいた可能性がより高くなる。この場合の戦略は、それぞれ別行動を取りながら、タイミングをはかって一挙に大合同するというシナリオになるだろう。このシナリオが事実だとすれば、この間の動きはつじつまが合う。

小沢氏はまず立憲、国民、社民で国会統一会派づくりを行い、その後、立憲と国民で新党を結成することをめざすべきだと声明し、立憲枝野氏と会談をおこなっている。鳩山氏は盟友である首藤信彦氏らの「新政治運動」をベースに共和党を結成したが、これにかねてから手を組んでいる植草氏らの「オールジャパン平和と共生」も糾合する予定だろう。れいわ山本氏はすでに共産党と野党連合政権樹立に向けた協力を宣言している。

この大合同劇では、小沢、鳩山というよくも悪くも旧民主党の垢が付いたままの人間がリードするのは悪手として避けられるであろうし、他方の主役であるべき共産党志位氏も表に出るのは厳しいだろう。だとすれば主役は、野党勢の中で破竹の進撃を続ける新選組隊長としての山本氏以外にない。

国民から共産党までウイングを広げるこのシナリオ自体、自公政権打倒に向けた一つの戦略でありうるし、リアリティーがないとは言えない。しかし、このシナリオにはアキレス腱が存在する。それは、れいわが単なる触媒政党であることが明らかになった時点で、れいわを「旧体制」と対決する唯一の政治運動として熱狂的に支持してきた人びとが「ダマされた」と一挙に離反する可能性が高いことである。結局のところ、れいわは組織政党ではなく山本氏の個人政党であり、しかも野党の数合わせの一つのコマに過ぎないと分かれば、支持者の落胆は大きいものになる。

そして山本氏の人気が凋落し、れいわに活力がなくなれば、野党大合同劇の勢いも落ちるだろう。そうなれば野党がより弱体化し、かえって自公政権の力が強化されるという本末転倒の結果になりかねない。

これを避けるには、(あくまであるとすればの話だが)シナリオを修正して、まずれいわが綱領と組織を明らかにして党としての体裁を整え、その上で、野党の一員としての立場から、合同劇に主体的に参加するしかないであろう。

11/5 2019

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