「反小池、反自民派内の予備選挙」を含む都知事選ー宇都宮・山本太郎両陣営の立ち位置

先月の25日、宇都宮健児氏が都知事選立候補宣言をおこない、その18日後の今月15日、山本太郎氏が立候補宣言をおこなった。4月頃から山本氏の出馬はうわさされていたもののなかなか態度表明はなく、山本支持者や宇都宮支持者の間では15日立候補宣言の直前まで出る、出ないの憶測が飛び交っていた。宇都宮氏の立候補宣言のあと、私自身も、山本太郎が出るべきかどうか思案していて、自分の意見など何の影響力もないものの、ツイッターなどで軽々しく憶測を流すのは避けていた。それでも木下ちがやに代表されるカルト的な立憲支持者たちの下品な山本人格攻撃を見かねて、考えがよくまとまらないまま13日に下記のような連続ツイートをポストした。

都知事選、もし野党がすべてまとまって宇都宮さんを押しても(国民は自由投票)、小池再選を止められないという読みがあるなら、そして宇都宮支持層と被る部分以外に、自民党離反の保守層と無党派層を惹きつけ、維新票を奪える可能性があるなら、山本太郎が出馬する意味もあるのではないか?(1)
しかしかりに出馬する場合でも、おそらく200万票前後を取る確率が高い小池に勝てる可能性は低いだろう。唯一の可能性は、どちらが残るにせよ、宇都宮さんと山本太郎で暗黙の合意が成立し、シナジー効果が起こり、接戦に持ち込めた場合だろう(2)
もう一つ山本太郎が出馬する意味は、繰り返せば、維新、桜井、立花、幸福実現党などのファシストたちから票を奪うことにある。れいわが左のポピュリズムであるとすれば、右への流れを引き寄せる課題を持ってるからだ(3)
最後の土壇場で、「やっぱり宇都宮さんを全力で支援することにしました」というトリッキーなパフォーマンスで都知事選を盛り上げ、投票率を上げ宇都宮勝利につなげる作戦もありえるだろうが、可能性は低いのではないか。いずれにせよ現段階では、山本太郎が出る、出ないはまだ分からない(4)

このツイートは、もしあえて山本太郎が立候補するとすればどこに意味があるのかと考えた結果だったが、手前味噌を承知で言えば、立候補宣言のあとの現在から考えれば当たらずとも遠からずというところか。

(1)で指摘したことについてはまだ分からない。しかし、(2)で触れた
シナジー効果については、当初、「票が割れる。山本太郎の出馬はケシカラン、許せない!」と憤っていた宇都宮支持派の人たちの間では、山本太郎が立候補宣言で実は立候補を決意する前に宇都宮氏と二度ほど会っており、宇都宮氏から「出るならお互いにがんばろう」という確認を取っていたことや、山本の出馬動機、政策が大部分宇都宮氏と重なることが(共感も含め)知れ渡った時点で、山本が「敵」であるかのような発言は明らかに減少していったのは事実だし、その後も日が経つにつれ、宇都宮、山本両支持者の間で「反小池票が割れる」といういわば強迫観念が少しづつ薄らぎ、逆に、「敵じゃないんだから、互いに政策を出して議論すればいいし、一緒に小池を追い詰めればいいじゃないか」という山本出馬の消極的肯定論が増えているのも確かである。

さらに最近では、ツイッター上でも積極的肯定論も出はじめている。ここnoteでも馬の眼氏が「都知事選二人出馬はゲームチェンジャーになりうるか(前編)」で以下のように書いている。

山本氏の戦術眼はまさに非凡としか言い様がないものです。結論を先取りすれば、これは日本の選挙戦における「ゲームチェンジャー」の端緒となる可能性が高い

ここで言及されているこれまでの選挙ゲームとは、勝つためには極力票割れを防ぎ、組織票を固め、握手と空疎な公約を振りまくだけの本質的に有権者を侮蔑した選挙スタイルのことであり、馬の眼氏は、このゲームは、もし似たような動機と政策を持ちながら、真剣に有権者に向き合う二人の有力な候補者が出た場合には変わるだろうと推測している。そして、これまでの選挙常識を覆すこの戦略を山本太郎が意識的に採用したとすれば、それは「非凡としか言い様がないもの」だと評価している。

後編を読まないと正確な理解にはならないにせよ、私もほぼ同様に考えるようになっているが、この馬の眼氏の「ゲームチェンジャー論」を読むうちに思い当たったのは、これはちょうどアメリカにおける大統領予備選挙に近い形ではないかということである。

皆さんもご存知のように、テレビやyoutubeで見ることの多いアメリカの予備選挙演説会は、観衆を前に壇上に候補者が並び、各候補者は自らの主張を述べると同時に他候補者に質問、批判を行い、それに相手方が反論、反批判するという形で進行する。候補者が多いと議論が入り乱れるし、批判も人格批判が混じるし、決してスマートでフェアに行われているとは言い難いが、それでも観衆(投票権者)は、どの候補者がどんな主張をしているか、その長所と弱点がどこにあるかを大まかに知ることができ、馬の眼氏がいう日本の「これまでの選挙ゲーム」と比べ*、大きな利点を持っている。しかも投票まで数回は実施される。

*かっては日本でも小学校や中学校を会場に与野党候補者の立会い演説会が開かれ、面白いものだったが、やがて公職選挙法で禁止されてしまった。

有力候補者が真剣にディベートすれば予備選が白熱し、有権者の注目を集め、結果として主催する民主党あるいは共和党の人気が上昇する。たとえば民主党でいえば、かってのサンダースとヒラリーの議論、共和党でいえばトランプとマケインの議論を思い出していただけば予備選の持つ効果を理解していただけるだろう。

だとすると今回の都知事選も、ほぼ近似した主張を掲げる宇都宮氏と山本太郎両候補が、都知事を大統領と見立てた擬似予備選として闘うことが、双方の潰し合いを避け、逆に小池陣営に対する最も効果的な攻撃に転化できることになる。

できれば、両者が司会者をはさんで議論する場をリアルで、それが困難であればZoomなどを使ってオンラインで設けてほしいと思う。現在だと、先日の検察庁法改正案反対運動で大きな力になった津田さん司会によるChoose Life Projectでのオンラインでの議論なんかがいいかも知れない。ツイッターと連動させれば大きな効果が期待できるだろう。

ポイントは、このような擬似予備選的な選挙方法を、小池陣営も、維新も取れないということだ。

まだ補うべきところがあると思うが、とりあえず本ポストはここまでとしておきたい。(2020/6/17)

◎昨日急いで書いたので舌足らずのところがあり、本日補足を加えた。論旨は変わらない。(2020/6/18)




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