政局床屋談義
10月に入ってから、躍進するれいわ新選組が「一丸の会」の馬淵澄夫氏らと「消費税減税研究会」を立ち上げたが、25日には鳩山由紀夫氏が新政党「共和党」結成を宣言し、国民民主党に合流した小沢一郎氏も、30日、立憲、国民、社民の国会統一会派結成を踏まえて、野党総結集による新政党結成を呼びかけた。
山本太郎氏が自由党で小沢氏と共同代表だったことは言うまでもなく、小沢氏と鳩山氏が旧知の仲であることもよく知られたことであり、これら一連の動きが繋がっていると推測するのは大きく外してはいないだろう。
またNewsweek日本版の「山本太郎現象」で斎藤まさし氏が、れいわ新選組の政策が、鳩山由紀夫氏が顧問を務め、植草一秀氏が運営委員である「オールジャパン平和と共生」の事務局で詰めたものであると語っている。これが事実であれば、山本太郎氏と鳩山一郎氏のあいだに繋がりがあることも確かだろう。
山本氏と旧知の仲である斎藤氏が、この局面で山本氏に不利になることを暴露するとは考えにくく、むしろ山本、鳩山、小沢を結ぶラインがあることを暗示することで、現時点でまだ野党共闘に積極的でない立憲、国民両党に対する誘い水となり、さらには野党共闘のリアリティを自民党内反アベ派に示唆することを目論んだものととらえるべきだろう。
では、どんな野党共闘が構想されているのか。れいわはすでに共産党と野党連合政権構想で協力することを明らかにしている。だとすれば、野党共闘にれいわが欠かせないとすれば、当然そこに共産党も含まれることになる。だが、共産党が小沢氏が言及したような野党新党に解党して参加することは考えられないし、れいわも立憲も解党には支持者の間で大きな抵抗があるだろう。
とすれば、ありうるのは二つ、かねてから小沢さんの持論であった「オリーブの木構想」と、共産党が提起してきた「野党連合政権構想」である。
「連合政権」は分かりやすい。各党が政策協定を結び、選挙で多数派になった場合には、おのおの党としての形を保持しながら連合政権を樹立するかたちである。他方「オリーブの木」は、事前の政策協定、候補者調整をおこなった上で、選挙で既存の政党とは別の新規の党を設立してそこから立候補するかたちである。この新党が選挙で多数派になれば、実質的には連合政権であるが、形式的には新党の単独政権になる。
実質的にみれば、両者とも各党の組織を残した上での共闘である点で共通しており、意見が分かれるとすれば、形式的にどちらが各党の合意を得やすいか、またどちらが民意を汲み上げやすいかだろう。従って、両者で本質的な違いはない。では、共闘を実現する上で最大の問題はなにか。
結局のところ、立憲、国民内部の反共派、緊縮派の扱いだろう。立憲の国会議員内で彼らは多数派ではないないだろうが、国民は「希望の党」出身議員が再結集した党であり、すでに細野、長島たちは自民に移籍したものの、なお大部分を占めている。彼らは共産党との共闘に抵抗し、自民による憲法改正のテーブルにはあれこれ口実をつけて参加しようとするだろう。つまり本質的に野党共闘の成立を阻もうとする勢力であり、新自由主義を自民と共有する自民別働隊と言って差し支えない。
だとすると、最大の問題は、これらの勢力を排除した野党共闘を組むのか、それとも含んだ野党共闘なのか、になる。そして、まさにこの問題にれいわが、共産党との共闘を前提に「消費税5%減税で一致しなければ野党共闘は断念し、単独で100名の候補者を立てて自公と闘う」と爆弾を投げたのである。投げた対象は、立憲、国民内の反共派と、緊縮派であり、彼らとの共闘はないと宣言したのである。
これに対し、「大野党」でないと自公に勝てないと考える小沢氏や、あるいは鳩山氏、馬淵氏らが「共産党は閣外協力で納得してもらうから、とりあえず消費税8%凍結で立憲、国民との合同を」とれいわにブレーキをかけるかも知れない。ここでれいわの山本氏は、妥協して野党共闘でいくか、単独で闘うかの厳しい選択を迫られることになるだろう。
10/30 2019