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ビニール傘

傘の柄の部分のように曲がっている心。
その綺麗な湾曲具合はむしろ心地よさを感じさせてくれるぐらい。
素直になれない自分。

透明な色を纏って、世界を眺める。
無色透明は意外と万能な色。
誰からも染められない色。
何にでも染まれる色。

そのような鉄壁の守りを通して、私は世界を眺めている。
臆病になりながら、外の世界に憧れを見いだす。

私は人に恵まれている。
透明なビニール傘には、いつも恵みの雨が降り注がれる。
キラキラとした雨粒たち。
様々な音を届けてくれる雨粒たち。
ときに優しく、ときに激しく鼓舞してくれる雨粒たち。

でも、私はそれを薄い膜ではじいてしまう。

常に付き纏う枯渇感。
なんと都合がよいのだろう。

怖がらずに、雨の中で傘を閉じることのできる人になりたい。

自然なものを自然に受け取れる心を養いたい。

突然の雨を楽しみたい。

突然の雨に腹を立てたい。

雨に出会ったとき、傘をさす、ささないは自分で決めたい。

自分の心を潤すことができるのは自分自身。

根っこを育てろ。

花を咲かせろ。

水の中でも花は咲く。

必要以上に強がらず、流れる水のようにしなやかに。

肩の力を抜け。
少しだけ、甘えて。
頼って。
素直になっていいんだよ。

少しだけ信じて。
他人も自分も。

ビニール傘も案外素敵じゃないか。

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