ダンス素人の見方② 『言と体音 -ことばとたいおん-』(出演:レンカ 、めみハーロ♡、コーラ)
2023年11月15日(水)
『言と体音 -ことばとたいおん-』
出演:レンカ 、めみハーロ♡、コーラ
会場「名曲喫茶ヴィオロン」(阿佐ヶ谷)
見た。これは即興セッション的なものではなく、ダンサーも言葉を発しながら動いたりして、意識的でコンセプチュアルなものでした。「言葉」という踊りにとっての異物をどう扱うか、という実験的な内容で、ワークショップの一コマのような雰囲気もあった。レンカの動きは鋭さを残したまま、いつもの険しさや衝動性よりは、やわらかさやしなやかさを多く表出させ、日常性との接点を求めたもの。言葉もダンサーからは日常性の方向で発せられたが、山田邦子のバスガイドの物まねのように言葉と自己を剥離させるコーラの存在により、次第に非常にナンセンスな方向へ傾く。
言葉は意味の枠組みにより動きを規制し、手慣れた動きやありがちな情動を避けて、自己反省を強いる作用がある。演劇的でもあり、記憶やイメージを喚起する能力と、それを動きへ「移す」際の方法論が試される。それにしてもレンカの踊りは傑出しており、鍛え上げられた見事さだけでなく、かつてとは違う包容力や一種の円熟味さえ感じさせる。そろそろソロで大きなことをやってくれるのではないかという期待大。
追記:
呼吸のようにダンスと触れ合うめみ・ハーロの持ち味が出にくいシチュエーションだったが、その声や思考の流れの一端に触れることができたのは良かったです。太極拳のようにやわらかく、作為を感じさせない自然体の資質はとても貴重。コーラは踊ったり?もするという超難関で、悪戦苦闘ぶりが伝わってきた。それこそが持ち味なんで当然だけど。ゆえに、三人の個性が一向に溶けあわず、きわめてぎこちないステージで、「ショー」としては成り立ってない分、あらかじめ予想できる「成功」を回避するという点で、「試み」としては有益だったと思う。こんな仕掛けを考えるレンカの探求心は衰えを知らない。彼女は芸術家だ。